第71話

 翌日、注文していた装備が届いた。

 ブーツにハードレザーの防具を付けて、両手には滑り止め付きのグローブを装着する。腰に付けた万能ベルトには、小さなポーチに水筒と、加えてカンテラを下げた。両手足にはそれぞれナイフを合計四つ固定し、利き手の腕にはバックラーを取り付ける。

 刃の欠けた短剣に、新たに買った短剣と片手剣、そして赤い片手剣と、合計四つの剣を腰から下げる。上から重たい外套で身体を覆うと、両手剣を外套の上から斜めに下げて三点ベルトで固定した。

 メイスの方もソードと同様に両手足に四つのナイフを装着し、腰に二つのメイスと短剣二本を下げる。背中にはソードの両手剣の代わりにフレイル一つを引っ提げて、腕にはバックラーではなく一回り大きなラウンドシールドを装備する。

 最後に新たなミツキはと言えば、クロスと名乗ることにしたようだ。武器屋でそろえた量産型の軍用片手クロスボウを二丁に、矢筒を二つ、剣の代わりに腰から下げる。あとは二人と同じように両手足にはそれぞれナイフを装着し、防具にポーチに外套を身に着けた。

「お前達、持っていけ。弁当だ」

 マスターから差し出された三つの包みを一人一つ受け取る。弁当は作りたてらしく、まだ暖かい。小さな声で礼を言うと、分かりにくいが竜人なりの笑顔を浮かべた。

「帝都なら馬を使えば一週間くらいだろう。道は、わかるな?」

 ソードが黙って頷く。朝日の差し込むギルドには、三人の他に客はいない。次の勇者が立ち寄るまでは、もしかすると客は来ないのかもしれない。

「この辺りは夏でも冷え込むから、風邪にだけは気を付けるんだぞ」

「大丈夫。ひいても魔法で治せばいい」

「自分を大切にしろ、って意味だ」

 鼻を鳴らすソードを見て、マスターは声を上げて笑い出した。

「ありがとう。マスター」

「気にすんな。いつでも来い。待っている」

 三人の為に扉を開ける。

 目の覚めるような冷たい風が流れ込み、ソードの髪をかき上げていく。薄くて白い霞が空に被さって、降りているかのようだった。着替えの詰まった背負い袋を担ぐと、光の中へと踏み出した。

 ミツキ達は人通りのない街の中を歩いていく。足音の他に音も無く。静寂こそが立ち込めていた。辺りを包むは命の気配だ。姿も音も何もないが、今日も今日とて生きる者の空気があった。

 街を抜け、勇者証を出し門を出た。畏まった調子の兵士に目もくれず、三人分の馬を借りる。鞍を取り付けさせてから勢いを付けて飛び乗った。

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