第9話
短剣を抜き、バックラーと合わせてナイフを逆手に持ち構える。もう少し、リーチの長い武器があればよかったが無い物は仕方ない。
正面に一体、後方に二体のワイバーンがゆっくり円を描く。短剣の先を正面の敵に突きつけながら、後ろの二体にバックラーと視線を絶えず向け続ける。いつでもどこでも動けるように、深く腰を落とすと、相手が仕掛けてくるのを待った。
突風が吹き、熱砂を空へ高く舞い上げる。目を少しだけ細めた瞬間に、ワイバーン達が一斉に飛び掛かる。
バックラーで叩き落として、短剣で突く。回転しながら身を屈め、回避と同時に外套で払う。
鱗は固く強靭で。一、二枚が欠けた程度であった。傾きかけた陽光を受け、剣先が紅く反射する。二度と背後を取らせぬように、距離を開けつつ動くのを待つ。
相手の方が俊敏で、機動力で不利ならば、仕掛けて隙を晒すより、しっかり構えて反撃を狙うべきだ。かつて戦い方を教わった時、レインが言っていた。彼女には散々痛めつけられたが、その甲斐あって今生きている。
長い跳躍を見せ尾を振るう。敢えて避けずに防具で受け止めて、柄で殴り、地面へ落とす。打ち身の傷を、すぐに回復させると、足で押さえて止めを刺した。
ナイフから赤い血が垂れ落ちる。首を切り落としたにも関わらず、尾は元気に動き回り、足は乾いた地面を掻く。
大きく下がり離れた敵が翼を広げて威嚇する。
ワイバーンから目を逸らさずに立ち上がり、刃に着いた血を払う。
風が止んだ、無風の中で砂が流れる音がする。ミツキは咄嗟に振り向いて、背後からの噛みつきを腕ごと受け止めた。
鋭い歯がバックラーを貫いて、腕に深く食い込んでいく。噛みついたまま頭を左右に大きく振って、ミツキの身体を振り回す。
歯を食いしばり抵抗をする。柄で何度も何度も殴りつけても、離す気配は微塵もない。ミツキはワイバーンの中でも柔らかい、下あごの裏に剣先を着けると、ひと思いに刺し貫いた。
あご裏から口内に、腕を貫き頭に至る。動かなくなったワイバーンを力任せに持ち上げると、死骸で最後の敵を殴り飛ばした。
短剣を死骸から引き抜き、手放す。ブーツで下あごを抑えながら、素手で無理やりこじ開ける。解放された片腕は血にまみれ、機能を果たせなくなったバックラーが辛うじてしがみ付く程度だった。
滑空し、飛び掛かる最後の一体を見て、ただちに腕を治療する。武器を拾う暇も無い。ミツキは正面から迫るワイバーンをしっかり見据えると、真っ向から素手で受け止めた。
勢いのままに倒れ込み、ブーツ裏を腹部に当てる。タイミングよく蹴り出すと、サボテンに向かって投げ飛ばした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます