第4話 ゲーム配信の時間だよー!


「あの、呼ばれたから来たんですけど……」

「ん、おお。来てくれたか、陽太くん。ちゃっちゃと準備して、配信始めるから」

「俺、部活終わりで疲れてるんですけど……」

「悪いね、午後八時から配信だから。ご飯あるから食べて良いから。コンビニのだけど」

「いや、助かりますけど」

「ほら、言ったろ? また出てくれるって。てことでゲーム配信なんだけど……」


 突発的すぎないかな。

 確かに金出すからって言われて速攻でここまで来たの俺だけどさ。

 で、何やるんだろ。


「そう言えば、ホラーゲームとかやったことある?」

「え? ホラーなんですか?」

「あ、もしかして苦手だったりする?」

「いや、大丈夫だと思いますけど……」

「あ、良かった。いやー、実は俺ね。ホラゲー苦手なのよ」

「ん?」

「と言うわけで今回プレイしてもらうの大体、陽太くんだからさ……」


 俺、初めてだから勝手が分からないって言うか、多分で答えたんだけど。

 え、何。俺が全部やるの?


「あ、安心してくれ。シナリオ自体は一時間くらいで終わるようなシナリオだから」

「おい待て、待ってください」

「じゃあ始めるよ」


 カメラが俺の方へと向けられる。

 文句言わせないつもりか、この人。


「こんばんはー、山風阿南ですっ」


 キュルリンって音が聞こえてきそうだな。


「今日も妹が来てくれましたー!」


 ぱちぱちー。

 流石に俺もカメラを向けられたら覚悟決めるしかない。だってバレたくないし。金もかかってるし。


「はい、山風北乃です。よろしくお願いします」

「そんなに固くならなくていいのに……。というわけで、今回はサムネイルで分かっていると思いますが、ホラーゲームやっていきます、北乃ちゃんが」


 コメントも「え?」ってなってんだけど。絶対、みんな俺じゃなくて阿南がやるの期待してたよな。


「夏の風物詩、ホラーゲーム! この時期と言ったらプール、海、川、山、怪談!」


 水系多いな。


「てな訳で、ホラーゲームです!」

「やるの俺なんだけど……」

「私はホラーゲーム苦手なので!」


 いや、もう良いや。

 多分、大丈夫だろ。何とかなるさ。どうせゲームだし。


「はい、今日、北乃ちゃんがプレイするのは『Scream』!」


 おい、何かコメントが静まりかえってんだけど。なんか雰囲気的にヤバい感じがするんだけど。

 「山風妹、死んだな……」ってコメントが見えたんですけど。俺、そのゲームの名前初めて知ったけど、そんなヤバいゲームなの?


「阿南的に絶対プレイしたくないフリーホラーゲーム、トップ3に入るゲームだよ!」

「こ……」


 この野郎……!


 何つうゲーム持ってきやがる。いや、待て。たぶんアレだ。たぶん大丈夫だ。うん、ただ林さんがビビりなだけだ。


「はい、早速やっていきましょうか、北乃ちゃん」

「は、はーい」


 キーボードの前に座らされて、クリックって書かれてるから取り敢えず、左クリック。


『キャアアアアアアァアアアア────!』


 うおっ。


「…………」

「び、ビックリしたぁ……」


 何で林さんの方がびっくりしてるわけ?

 あれか、配信者根性か。俺はリアクションもっとした方が良いのか。


「ほ、ほら、北乃ちゃん始まったよ!」


 おい腰が引けてんぞ、クソイケメン。


「分かってるって……」


 誰だよこれ作ったの。

 ちょっと音する度に俺も心臓バクバクだし、メニュー開く時の音デカすぎて怖いんだけど。


「『深夜の学校で金切声をあげる首無しの人キリコさん。気に入った学生を学校に閉じ込めて逃がさない。そんな噂が私の通う学校に広まっていた。学校から逃げようとした生徒はどうなるのか。それは分からない。帰ってきた生徒は居なかったから』」


 取り敢えずテキストを読み上げる。

 設定は普通、なのか。


「『うぅん……』、あ、これ主人公かな」

「いいよ、北乃ちゃん。ちょっとわたくし、お手洗いに行ってきますわね……」

「あ、じゃあ進めないで待ってるね」

「いや、先に進めて良いよ?」

「進めないで待ってるね?」

「……アリガト」


 林さんの顔死んでたんだが。ゾンビみたいだったぞ。いや、ゾンビみたいってかゾンビだな、あれ。

 にしても何して待ってようか。


「えーと、お姉ちゃん戻ってくるまで何してたら良いんだろ……」


 「しゃべろ」ってコメントもあるしなんか話した方良いよな。


「喋るって言っても、何か聞きたいことありますか?」


 俺としてはそんなに話せることないと思うんだけど。

 あ、チャット来た。


「ん、『ホラーゲーム大丈夫なの?』ですか……。えと、何でかプレイしてる俺以上にお姉ちゃんがビビってるから、まだ大丈夫……」


 割と本気でこれはある。

 一人だったら絶対やってないし、金銭が発生しなければやんない自信あるからな。


「まあ、こっからも絶対に俺以上にお姉ちゃんビビると思うから、プレイ自体はできると思うよ」


 そうじゃなきゃ俺もリタイアしてる。

 つっても、まだ始まったばっかなんだよな。


「最後まで見てくれよ?」


 「絶対見る」って言ってくれてるし、大丈夫だよな。


「みんな……、ありがとうな」


 何か、みんな歓喜してるんだけど。

 いや、話す話題無くなったし。どうしよう、これ。

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