第5話 ゲーム配信Part2
「ただいまー、戻ってきました……」
「あ、じゃあ進めて行きますね」
林さんよ。
アンタだけ逃げられるとは思わない事だ。俺だってね、怖いもんは怖いんだよ。
「脱出ゲーム、ですよね?」
「そうだよ……」
取り敢えず、玄関に向かえってなってるからそっち行った方いいよな。
「…………」
「何で無言になってんの?」
「いや、あの、その……」
『キャアアアアアア────ッ!』
「うわっ!」
「…………」
めっちゃびっくりした!
すごい急かすような、不安を煽るようなBGMが流れてんだけど。こういうBGM苦手なんだよ。
「いやっ、ちょっ、え、逃げるんだよね……?」
「…………」
「おい、お姉ちゃん!?」
待って、初心者には難しいんだけど。ていうか、割と本気でキリコさんのクオリティ高けーな、おい。
「キリコさん、ずっと叫んでるんですけど!」
誰だ、こんなゲーム作ったの。本当に死ぬ。心臓が痛いんだけど。
「はっ、はっ。あれ、大丈夫?」
『キィイイイイイイイイイイ────ッ!』
「ヒッ……! な、何で二段構えなんだよ!」
恐怖の二段構えとか要らないんだよ!
逃げ切ったって油断したところに戻ってくるとか本気で信じられないんだけど。
「ねぇ、北乃ちゃん……」
「な、何?」
「お姉ちゃん、寝てもいいかな?」
チャットで「無責任姉w」って言われてんぞ。ああ、俺もそう思うよ。
「お前ぇ! それはダメだろ!」
「いや、私はもう充分頑張ったよ。あとは任せた、よ……」
「一人にしないで! 俺を一人にしないで!」
ホラーゲームを一人でできるほど気持ち強くないんだよ。「俺たちがいるよ」じゃなくてさ、誰かの声を聞いてなきゃ安心できないんだよ。
「うん。じゃあ私見てるから、応援してるから」
「お前もやれよぉ!」
「え? 北乃ちゃん、私死んじゃうよ?」
どういう脅しだよ。
どうせ死なないから。大丈夫だから。
林さんもこの恐怖を味わって。
「うん、まず教室に戻ったらセーフゾーン?」
その言葉信じるぞ。
「本当だよな? 俺、落ち着きたいんだよ!」
教室に戻って、扉の前まで来た。
「『開かない……』。え、は……?」
え、ちょっと待って。嘘でしょ開かないんですけど。
「だ、誰だよ! 手、離せよぉ! トイレに閉じ込めるみたいな悪質な悪戯か!? 命懸かってんだよ、こっちはよぉ!」
クリック、クリック。ひたすらクリック。もうだって、キリコさんすぐ近くにいるしこれくらいしかできないんだけど!
「あ、あれ? 入れた?」
「あ、それ。五回くらいクリックしたら入れるんだよ」
「先言えよ!」
「初心者じゃわからないよね」、ってみんな知ってたんかい。知ってたなら教えてくれよ。教えてくれても、たぶんチャットとか必死すぎて見てなかったと思うけどさ。
「で、どうすりゃ良いのこれ」
「もう一回、玄関行って……」
「あ、お姉ちゃんお願い。なんかさっきセーブされてたから死んでも大丈夫だと思うから」
「え……?」
「お願い」
そもそも林さんの枠でしょうが。ちょっとくらいやってもバチあたんないって。いや、そもそもアンタがやるのが普通なんだよ。
俺だけにやらせんのが罰当たりなんだよ。
「いやいや、私苦手って……」
「みんな見たいって言ってるんで……」
「ちょ、待てよ」
「あ、という事で交代でーす」
「……まあ、別にそこまで怖くないところだし?」
俺は、林さんにキーボードの前を譲る。
「別に、ビビんないし。北乃ちゃんより上手くできるし?」
何に張り合ってんだ、この人。さっきまでプレイしてないくせにビビり散らしてたのに。
「あの、お姉ちゃん……」
「いや、みんなが期待してる感じにはならないし? てか、させないし?」
「早く教室から出ようか?」
「苦手って言っても、別に? ちょっと苦手なだけだし?」
何で言い訳ばっかしてんだか。
「ねえ、北乃ちゃん。別に交代してくれなくても良かったんだよ?」
それ最初の予定、俺だけにやらせるつもりだったからだろうに。
「具体的にはエンディングまでいったら、お姉ちゃんをキーボードの前に座らせるとかでもね?」
「元々、みんなお姉ちゃんがやるっていうから見に来てるんだよ?」
たぶん。
「それに、俺もお姉ちゃんのちょっと良いところ見てみたいんだ」
「……すぐ交代だからね?」
まあ、うん。
大体は俺がやるって事らしいし、それはもう仕方ないけど。
さっき以上に、ていうかめちゃくちゃ手震えてるんだけど、このイケメン。
大丈夫なんか、林さん。
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