episode279 竜骸荒原
竜都ドラガリアに向かった俺達はすぐに街を出て、ドラガリア荒野に繰り出していた。
「ここに来るのも久々だな……」
最初の頃には採集のために来ることも多かったが、より良い素材が手に入るようになってからは来ていなかったからな。ここに来るのも久々だった。
「それで、どこか行く予定の場所はあるのか?」
「……とりあえず、先に行く」
「荒野を抜けた先に行くということか?」
「……うん」
どうやら、このドラガリア荒野自体に用はないらしく、ここを抜けた先のエリアに向かうつもりらしい。
「まあそれが良いか」
今更このエリアに用はないからな。先のエリアに向かうというのには賛成だった。
「では、このまま行くか」
「……うん」
「グルッ!」
そして、方針が決まったところで、俺達は早足にドラガリア荒野を南に抜けて、次のエリアに向かったのだった。
◇ ◇ ◇
それから俺達は無事にドラガリア荒野を抜けて、次のエリアに到着していた。
「……着いたな」
「……うん」
「流石に今の俺達なら余裕だったか」
リザードマンはもはや敵ではないし、ストライクウルフとも遭遇しなかったからな。道中は特に苦戦することもなく、ここまで来ることができていた。
「まあそれはさておき、ここが
ドラガリア荒野を南に抜けた先にあるこのエリアは
「何と言うか、あまり変わっているように見えないな……」
だが、この辺りにはこのエリアの特徴である竜の
「……確実に新エリア」
「む、大丈夫だ。それは分かっている」
リッカはマップを表示して新エリアに入ったことを示して来るが、新エリアな気がしていないのは気分的な問題だからな。頭では理解しているので、そこは問題ない。
「それで、今日はこのエリアを探索するということで良いのか?」
「……うん」
「分かった。では、このまま行くか」
こんなところで立ち止まって話をしていても仕方がないからな。話は歩きながらでもできるので、そろそろ移動し始めることにした。
「探索の方針だが、出会った敵を倒しながら採集も行うという、いつものスタイルで良いな?」
「……うん」
歩き始めたところでリッカに探索の方針を確認するが、そこは普段と変わらないようで、特に注意する点などはなさそうだった。
(少しこのエリアのことについて復習しておくか)
初めて来るエリアではあるが、他のプレイヤーが上げた情報でこのエリアのことはある程度分かっているからな。
ここに来る予定はなかったので、あまり詳しくは見ていないが、そこで得られた情報をおさらいしておくことにした。
(まず、敵の強さはオブソル岩石砂漠と同程度。つまり、油断すると一瞬で倒されるということだな)
そこまで検証が進んでいるわけではないので、正確な情報とは言えないが、このエリアの敵はオブソル岩石砂漠に出現する敵と同程度の強さらしいからな。
耐久力が低い俺とリッカは攻撃を受けると一瞬で倒されるので、慎重な立ち回りが必要になりそうだった。
(だが、ここでしか入手できないと思われるアイテムもあるようだし、それは是非とも欲しいところだな)
種族専用エリア限定の素材は通常の素材よりも流通量が少なく、入手できる機会が中々ないからな。
そのような素材を入手するためにも、採集は積極的に行っていきたいところだった。
(ただ、採集ポイントが少なめなのがな……)
しかし、荒原だからなのかは知らないが、採集ポイントは少なめになっているらしいからな。
採集を行える機会は少ないので、採集ポイントは逃さず行きたいところだった。
「……む、何かあるな」
と、歩き始めてから数十秒ほどしたところで、俺は前方に何か巨大な物があるに気が付いた。
「……たぶん竜の骨」
「言われてみれば、そんな感じはするな」
この距離だとそれが何なのかを正確に判別することはできないが、輪郭からそんな感じはするからな。
「とりあえず、近付いてみてみるか」
「……うん」
近くに敵はいないようだからな。安全なのは確かなので、このまま近付いて確認してみることにした。
俺達はそのまま駆け足で移動して、そこに駆け寄って行く。
「ふむ、やはり骨だったか」
近寄って確認してみると、そこには思った通りに竜の骨があった。
見たところ、竜の体長は十メートル近くあったようだが、そこにかつての面影はなく、過去に残されたという哀愁だけが漂っている。
「……採掘できる」
「そのようだな。とりあえず、このまま採掘してみるか」
「……うん」
この骨は採掘ポイントになっているからな。スルーする理由もないので、このまま採掘してみることにした。
「よっと……。む、ダメか」
俺は取り出したピッケルを振り下ろして採掘するが、手に入ったのは【骨粉】だけで、目的の物は手に入らなかった。
「リッカはどうだ?」
「……何も」
リッカも結果は同じだったようで、手に入ったのは大して使い道のない【骨粉】だけだった。
「まあレア素材らしいし、仕方がないか……」
骨からは採掘で【古竜の
そう簡単には手に入らないので、あまり気にせずに先に進むことにした。
「では、このまま先に……む、何かいるな」
だが、進もうとした先に視線を移すと、そこに敵らしき影を発見した。
(とりあえず、望遠鏡で見てみるか)
しかし、この距離だとどのモンスターなのかが判別ができないからな。ここはいつものように【望遠鏡】を使って確認してみることにした。
俺はすぐに【望遠鏡】を取り出して、モンスターだと思われる影の正体を確認する。
「敵は……ホネミチバシリとレイスが各二体か。レイスは面倒だな……」
ホネミチバシリは特に問題はないが、レイスはゴーストの上位種に当たるモンスターで、物理攻撃がほとんど効かないからな。少々面倒な相手だった。
(夜の時間帯に来るのは止めておいた方が良かったか?)
レイスは夜の時間帯にしか出現しないモンスターだからな。他の時間帯に来れば戦わずに済むので、その方が良かったように思えた。
(まあ今更そんなことを言っても仕方がないし、どうするかを考えるか)
だが、そんなことを言っても後の祭りでしかないからな。相手する以外の選択肢はないので、どう動くかを考えることにした。
「とりあえず、レイスの相手はアギオスに任せようと思う」
レイスには魔法攻撃で対応したいところだが、状態異常が効きにくいレイス相手に妖術は有効とは言えないからな。
アギオスであれば光魔法を使えるし、耐久力もあって一人で相手できると思われるので、レイスの相手はアギオスに任せることにした。
「行けるか?」
「グルッ!」
アギオスに確認すると、任せろと言わんばかりに元気な声で返して来る。
「ホネミチバシリは俺とリッカで片付けて、それが済み次第アギオス側に合流。これで良いか?」
「……うん」
リッカにも確認を取るが、異論はないようだからな。このままこの作戦で行くことにした。
「では、先陣はリッカに任せるぞ」
「……分かってる」
リッカとアギオスのどちらを先に行かせるかだが、高い敏捷を持つリッカの方がうまく目的の相手だけを引き剥がすことができるだろうからな。先陣は彼女に任せることにする。
「じゃあ行く」
「ああ」
そして、戦闘における方針が決まったところで、俺達はリッカを先頭にして敵との距離を詰め始めたのだった。
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