episode278 島の調査イベントの所属陣営の決定
ユヅリハ側に付くことが決まったところで、俺はメニュー画面を開いて、ユヅハと通信を繋ぐ。
「今良いか?」
「ええ、良いわよ。決まったのかしら?」
「ああ。色々と考えた結果、ユヅリハ様の方に付くことにしたぞ」
そして、島の調査イベントではユヅリハ側に付くことを伝えた。
「分かったわ」
「では、詳しく話を聞かせてもらっても良いか?」
「ええ、良いわよ。何を聞きたいのかしら?」
向こうで活動するに当たって聞きたいことは色々とあるからな。気になっていることを一つずつ聞いていくことにした。
「まず確認しておくが、島では遺物を回収して、それを渡せば良いんだよな?」
「ええ、そうよ」
「回収対象は全ての遺物か? それとも、何か指定はあったりするか?」
最初に俺が確認したのは回収対象の遺物についてのことだった。遺物と一言で言っても様々な物があるだろうし、中にはユヅリハにとって不要な物もあるかもしれないからな。後で要らないと言われても困るので、まずは回収対象について詳しく聞いておく。
「指定はあると言えばあるけど、あなた達には分からないでしょうから、全部持って来なさい」
どうやら、目的の物は決まっているらしいが、俺達では判別できないと思われるので、発見した遺物は全て持って来て欲しいとのことだった。
「一応、目的の遺物について聞いても良いか?」
だが、聞けば分かるかもしれないからな。ここはひとまず、目的の遺物について詳しく聞いてみることにする。
「それを話す必要はないわ」
しかし、その必要性を感じないと、断られてしまった。
「もしかしたら、手間が省けるかもしれないぞ?」
「それじゃあ聞くけど、あなたは組み込まれた術式機構を見て、どんな効用がある物なのかを判別できるのかしら?」
「それは……無理だな」
術式機構に関しては基礎的なものを組むことができる程度の最低限の知識しかなく、その程度の知識で解析などできるはずもないからな。
それに、そもそもシステム的に解析ができるのかどうかも分からないし、仮にできたとしても今の俺にはできないので、ユヅハの言うように見付けた遺物は全て持って行った方が良さそうだった。
「まあそうでしょうね」
「と言うか、どんな遺物があるのかは知っているのだな。調査したことがあるのか?」
遺物にも色々と種類があるが、ユヅハは島に魔法道具系の遺物があるという情報を掴んでいるようだからな。
そのあたりのことについて聞けば情報が得られそうなので、少し掘り下げてみることにする。
「いえ、ないわ」
「では、何故そのことを知っているんだ?」
「あの島ではかつて魔力駆動式の兵器の開発が行われていたからよ」
「む、そうなのか?」
街での調査ではそんな話は聞かなかったからな。イベントの攻略に役立つ情報もありそうなので、このまま詳しく聞いていくことにした。
「ええ。だから、あの島には兵器のパーツも眠っているはずよ」
「なるほどな。それで魔法道具系の遺物があることが分かっていたのか」
島の過去を知っていたというのであれば、どんな遺物が眠っているのかを知っていたことにも納得できるからな。これによって、疑問が一つ解決した。
「だが、それだと目的の物があるかどうか分からなくないか?」
しかし、これだと目的の物が存在している可能性があるというだけで、確実にあるとは言えないからな。そこのところはどうなのか、聞いてみることにする。
「そうね。だから、全部持って来るよう言ったのよ」
「そうだったか。不要な遺物はどうするんだ?」
話を聞いた感じだと、目的の物以外には興味がないようだからな。不要な遺物の扱いについて確認しておくことにする。
「アドラ様を通して、『セントラル運営評議会』にでも渡してもらうわ」
「結局、返すのか」
「屋敷に置いておいても邪魔になるだけじゃない。ガラクタを集める趣味はないわ」
「そうか」
処分するなどと言い出すようであれば、研究所への受け渡しなども考えたが、その必要はなさそうだからな。遺物の扱いに関してはこちらが気にするようなことではなさそうだった。
「ところで、魔力駆動式の兵器とは言うが、具体的にどんな物が開発されていたんだ?」
「そこまでは知らないわ。ただ、自律行動型の兵器が開発されていたことは確かみたいよ」
「自律行動型の兵器……ゴーレムのようなものか?」
「まあそんなところね」
直接調査したことはないようなので、詳しいことまでは分かっていないようだが、どうやら、ゴーレムのような魔力駆動式の兵器が開発されていたことは確からしい。
「……一つ聞いても良いか?」
それは分かったのだが、その話を聞いて俺の中で一つの懸念が生まれたからな。
それを解決しないわけにも行かないので、このままそのことについて聞いてみることにする。
「何かしら?」
「その兵器が完全な形で現存している可能性はあるのか?」
懸念というのは、その魔力駆動式の兵器に関してだった。
普通に考えれば、そんな昔の物が完全な形で現存している可能性は低いが、このゲームにはエンシェントゴーレム――プロトタイプというモンスターも存在しているからな。その可能性は捨て切れなかった。
なので、俺達よりも詳しいユヅハに見解を聞いてみることにする。
「流石に完全な形では残っていないでしょうけど、十分に動く程度の形で残っている可能性はそれなりにあると思うわ」
「……そうか」
ユヅハの見解は完璧な形では残っていないだろうが、十分に動く程度の形、つまり、戦闘可能な状態で残っている可能性は十分にあるというものだった。
(となると、そのタイプのボスが現れる可能性は十分にありそうだな)
これは根拠もないただの予想でしかないのだが、ゴーレム系のボスが現れる可能性は十分に考えられるからな。
役に立つかは分からないが、記憶の片隅に置いておいて損はなさそうだった。
「それで、遺物の受け渡しはどうすれば良いんだ?」
それはそうと、まだ肝心な遺物の受け渡し方法を聞いていないからな。そろそろそのあたりのことについて聞いてみることにする。
「最終日に私が回収するわ」
どうやら、遺物は最終日にユヅハが自ら回収に来てくれるようで、それまで待っておけば良いとのことらしい。
「それまで遺物はどう管理すれば良いんだ?」
だが、最終日まで待たなければならないとなると、それまで遺物を管理する必要があるからな。合流するまでどう管理すべきかを聞いてみることにする。
「それは自分で考えなさい」
しかし、そこまで面倒は見ないと、突き放されてしまった。
「……できれば協力して欲しいのだが?」
情報を持っていない俺達だと現地に行ってから考えることになって、出遅れることになるからな。
現地での細かい調整は必要になるだろうが、情報を持っているユヅハに現段階での策を考えてもらいたいところだった。
「……仕方がないわね。とりあえず、どこかに隠しておけば良いんじゃないかしら? 島はそこそこ広いし、隠せる場所はあるはずよ」
「ふむ……確かに、隠し持つことはできないか」
補給のために拠点に戻る必要があるが、遺物は拠点に戻った時点で自動的に回収されてしまうようだからな。
納品せずに隠し持っておくことはできないので、どこか見付からない場所に置いておく必要がありそうだった。
「まあ後で補助用の道具を送ってあげるから、それで何とかしなさい」
「分かった。では、その方向で調整を進めておくことにしよう」
他に策もなさそうだからな。遺物の管理はその方針で考えておくことにした。
「回収は直接会っての手渡しで良いのか?」
「それは状況を見て決めるわ。手渡しになるかもしれないし、指定した場所に置いておいてもらうことになるかもしれないわ」
「つまり、回収方法は当日になるまで分からないと」
「そうなるわね。どう転がっても対応できるように準備はしておきなさい」
「分かった」
事前に分かっていれば少しは楽になるのだが、こればかりは仕方がないからな。
ただ、基本的にはそのどちらかになりそうではあるので、その二つの展開を想定して備えておくことにした。
「他に聞きたいことはあるかしら?」
「いや、現段階では以上だな」
まだ聞くべき事柄自体はあるのだが、現段階では聞けないことになるからな。今聞くべきことはこれで以上になる。
「分かったわ。また何か聞きたいことがあったら、私に聞きなさい」
「ああ、そうさせてもらおう。では、またな」
そして、必要な話を聞き終えたところで、通信を切った。
「話は全部聞いていたな?」
「……うん」
「とりあえず、立ち回りはしっかりと考えておいた方が良さそうだな」
他の陣営に気付かれないように遺物を回収する必要があるからな。イベントでの立ち回りはちゃんと考えておく必要がありそうだった。
「こちらの陣営に付くことになるプレイヤーがどうなるのかが気になるが、少数になることは確実だからな……」
所属を決めている今の段階で聞いたところで、回答を得られないことは分かっていたので、そのことについては聞かなかったが、少数になることは分かり切っているからな。
イベントでの立ち回りが厳しいものになるのは目に見えていた。
「……暗躍するなら、少数精鋭でちょうど良い」
「だと良いがな」
少数であることによる利点もあるが、その逆も然りだからな。どう転がるかは予想が付かなかった。
「まあその話はここまでにするか。この後はアギオスの防具を作ってから外に行きたいと思うが、どこか行きたい場所はあるか?」
このまま予定通りに外に行きたいところだが、俺は特に行きたい場所はないからな。ここはリッカに行き先を決めてもらうことにする。
「……竜人専用エリア」
「分かった。では、少し待っていてくれ」
時間が掛かるのであれば別れて行動しても良いが、そんなに時間は掛からないだろうからな。リッカにはこのまま拠点で待っていてもらうことにした。
そして、その後は適当な素材でアギオスの防具を作ったところで、俺達は竜都ドラガリアに向かったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます