episode273 島の調査イベントの情報集め
街に出た俺達はエルリーチェに話を聞くために研究所に向かっていた。
「さて、着いたな」
最短ルートで移動したので、移動にはそんなに時間は掛からなかった。
「少し良いか?」
到着したところで早速、許可をもらうために警備のNPCに話し掛ける。
「何だ?」
「エルリーチェはいるか?」
「所長は多忙で不在だ。副所長もな」
「む、そうか」
だが、今はエルリーチェもミルファもいないようで、話を聞くことはできなさそうだった。
「いつ戻って来るんだ?」
「島の調査が終わるまでは戻って来る予定はないぞ」
「分かった。では、俺達はもう行くとしよう」
話が聞けない以上はここにいる意味もないからな。さっさと他の場所に行くことにした。
「……どこ行くの?」
「とりあえず、食材を買いに市場に行くぞ」
アギオスの食料用の食材が必要だが、食材系のアイテムは基本的にすぐに売ってしまっていたからな。
倉庫にはほとんど残っていないので、ひとまず、食材の確保のために市場に向かうことにする。
「……分かった」
「では、このまま行くか」
リッカも特に異論はないようだからな。方針が決まったとっころで、そのまま俺達は市場に向かったのだった。
◇ ◇ ◇
市場に向かった俺はそこで出品されているアイテムを確認していた。
「とりあえず、安い肉をたくさん買っておくか」
消費量も考えると、とにかく量が欲しいからな。ここは値段の安い肉をたくさん買っておくことにした。
俺はリストに食材でフィルターを掛けた上で安い順にソートして、適当に購入していく。
「こんなものか」
そして、十分な量を購入したところで、市場の出品リストを閉じた。
「……この後は?」
「アルムとピルムを探して、アリカに話を聞こうと思う」
ここに来た目的はアギオス用の食材を買うためだけではない。アリカに話を聞くというのも目的の一つだ。
アルムとピルムに聞いても情報は得られなさそうだが、アリカであれば事情を知っていそうだからな。二人を探して、彼女に話を聞いてみるつもりだ。
「……そう」
「と言うことで、二人は……いたな」
探してみると、アルムとピルムはいつもの場所で商売をしていた。アリカも一緒で、この様子だと話も聞けそうだった。
「アリカ、少し良いか?」
「あ、誰かと思ったらシャムとリッカか。アドラ様からの試練は突破できたみたいだね」
「まあ何とかな」
彼女は試練には関わっていないので、俺達が試練を突破したことは知らないと思っていたのだが、意外にも知っていたらしい。
「それで、今日はどうしたの?」
「島の調査の件で話を聞きたくてな」
「何を聞きたいの?」
「とりあえず、調査に至るまでの詳しい経緯を聞かせてくれるか?」
「分かったよ。まず、とある島で遺物が見付かって、下調査をしてたことは知ってるよね?」
「ああ、もちろん知っているぞ」
だいぶ前にエルリーチェが言っていたからな。もちろん、そのことは知っている。
「で、その下調査の結果、想定以上に手間が掛かりそうなことが分かってね。協議の末に
「そうだったか」
どうやら、調査には大規模な人員編成が必要だったようで、調査員として
「と言うことは、やはり『セントラル運営評議会』からの依頼になるのか」
「そうだね。まあ主導するのは『クローフェル商会』と『サルフェリー商会』になるけどね」
「む、どういうことだ? これは
この依頼は『セントラル運営評議会』から
その二つの商会が関わる余地はないように思えるが、詳しく聞けば分かると思われるので、ひとまず、詳細を確認してみることにする。
「調査員として
「……つまり、『セントラル運営評議会』は
「そういうことだね」
『セントラル運営評議会』から
「何故、
「調査には準備が必要でしょ? 船とか物資とか」
「まあそうだな」
島に向かうためには船が必要だし、探索で消費する物資も必要になるからな。そこには特に疑問はない。
「で、それをどこに発注することになると思う?」
「それはまあ……ある程度の規模がある商会になるだろうな」
大規模な調査となると、物資もかなり必要になるだろうからな。それなりの規模がある商会でなければ用意するのは難しいので、発注先は必然的に大きな商会になる。
「それで、その依頼先が『クローフェル商会』だったと?」
「そうだね。で、そうなるともう『クローフェル商会』に主導してもらった方が何かと都合が良いとは思わない?」
「まあその方が楽なのは確かだな」
大量に物資を発注するとなると手間が掛かるし、過不足が発生するのも面倒だからな。
依頼自体を投げてしまえばその問題は解決できるので、依頼できるのであればそうした方が良いのは確かだった。
(どうやら、『クローフェル商会』はかなり信頼されているようだな)
だが、依頼の内容が内容なだけに、それなりに信頼できる相手でなければ頼めないからな。
これまでのことからある程度掴めていたことではあったが、『クローフェル商会』は『セントラル運営評議会』からもかなり信頼されているようだった。
「とりあえず、『クローフェル商会』に依頼することになった経緯は分かったが、『サルフェリー商会』はどう関わっているんだ?」
ここまでの話で『サルフェリー商会』がまだ出て来ていないからな。話を聞いた感じだと、介入する余地すらないように思えるし、これだと『サルフェリー商会』が関わることになった理由がさっぱり分からないので、今度はそちらを掘り下げていくことにする。
「『サルフェリー商会』は調査への参加に名乗りを上げたらしいよ」
「……それだけか?」
「ボクは『セントラル運営評議会』のメンバーじゃないし、詳しい事情は知らないよ」
しかし、返って来た答えは要領を得ないもので、これだと何も分からないも同然だった。
「でも、あの商会のことだから、何かしらの好条件を提示して、依頼をもぎ取ったんじゃない?」
「ふむ……確かにかなり大きな案件で相当な利益を見込めるし、そう簡単には逃さないか」
これほどの依頼は中々あるものではないからな。これを逃すという手はないので、依頼をもぎ取ろうとすることは理解できる。
「どちらかと言えば、欲しいのは利益よりも信頼だと思うよ?」
「と言うと?」
「『クローフェル商会』は『セントラル運営評議会』と提携契約を結んでて、依頼を独占してる状態だからね。『サルフェリー商会』はそこに立って代わろうと動いてるって噂だし、今回の介入はその一環だと思うよ」
「なるほどな」
その立場を乗っ取ることができれば、かなりの利益に繋がるからな。大きな依頼を成功させることで信用を上げて、提携契約の布石にしようと考えているらしい。
「その結果、『クローフェル商会』と『サルフェリー商会』が主導することになったということか」
「そうだね」
「……確認のために聞くのだが、今回の調査に関わっているのはその二つの商会だけなのか?」
ここである違和感を覚えた俺はアリカにそんな質問を投げ掛ける。
「そうだけど、それがどうかしたの?」
「いや、こちらの話だ。気にしないでくれ」
それに関しては完全にこちら側の話で、彼女には関係のないことだからな。話しても仕方がないので、そこは適当に流しておく。
(話を聞いた感じだと、陣営は『クローフェル商会』と『サルフェリー商会』の二つになるが、本当にそれだけか?)
違和感というのは陣営に関してのことだった。違和感を覚えたのはイベント情報のページの記述に関してで、詳しく言うと今回のイベントで重要な要素になるはずの陣営の情報が記載されていなかった点だ。
アリカの話の通りだとすると、陣営は『クローフェル商会』と『サルフェリー商会』の二つだけになるが、陣営が本当にこの二つだけなのであれば普通に明記すれば良いし、どう考えても伏せる理由はない。
つまり、イベント情報のページに陣営の情報が記載されていないことに説明が付かないのだ。
一応、運営が記載し忘れたという可能性もなくはないが、ここの運営がそんな簡単なミスをするとは思えないからな。
完全に否定できない以上はゼロではないが、可能性は限りなく低かった。
(やはり、陣営に関してまだ何かあると考えるべきか)
イベント情報のページに陣営に関しての情報が載っていないのは意図的なもので、
彼女の話自体は本当なのだろうが、まだ裏に何かがある可能性が高かった。
(だが、今ここで考えても仕方がないか)
この様子を見た感じだと、アリカはあまり詳しいことは知らないようで、これ以上の情報は持っていないようだからな。
これ以上の情報は得られないだろうし、情報が不足していて考察も進められないので、現段階で考えるのはここまでにしておくことにした。
「……随分と考えてるね」
「まあな」
「それはそうと、参加受付はそれぞれの店か中央広場付近の特設受付で行われてるよ」
「そうか。では、特設受付に行ってみることにするか」
特設受付に行けば情報が得られそうだからな。情報を集めるために、このまま行ってみることにした。
「話を聞けて助かった。では、またな」
「うん。またね」
そして、話を聞き終えてアリカ達と別れた俺達は、参加受付を行っているという特設受付に向かったのだった。
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