episode272 島の調査イベントの概要

 メニュー画面のトップから次回のイベント情報のページに飛んだところで、早速その内容を上から確認していく。


「ふむ……次のイベントは五日後から開始で、内容はとある島の調査か」


 次のイベントはある島の調査に協力するというもので、内容自体は貢献度ポイントを稼いで景品と交換するといういつもの内容だった。


「……『セントラル運営評議会』から?」

「ここには書かれていないが、十中八九そうだろうな」


 試練の前にアドラが『セントラル運営評議会』から顕現者リベレイター向けの発表が近々なされると言っていたからな。

 このページにはそのあたりの詳しいことは記載されていないが、『セントラル運営評議会』からの依頼と見て間違いなさそうだった。


「とある島というのはエルリーチェが言っていた遺物が見付かった島のことか?」

「……たぶん」

「となると、彼女にも話を聞いた方が良いか」

「……うん」


 エルリーチェに話を聞けば、ここには書かれていないような情報が得られるかもしれないからな。後で機を見て話を聞きに行った方が良さそうだった。


「まあそれはさておき、今回は所属する陣営を選んで、そこで活動することになるらしいな」


 今回のイベントは陣営に別れてそれぞれで調査を行うようで、言ってしまえば陣営同士の競争になるらしい。


「……PvP色強め?」

「その可能性はあるな」


 競争になる以上は衝突もあるだろうからな。あくまでも調査がメインなので、そこまで大規模な戦闘にはならないだろうが、わざわざ陣営に別れるぐらいなので、PvPの要素があるのは確かと言っても良さそうだった。


「それに、陣営によって報酬が違うのか……。となると、報酬を見て決めるのが良いか?」


 また、報酬は陣営によって異なるようなので、報酬の内容を見てどの陣営に所属するのかを決めるのが良さそうだった。


「と思ったが、ここには陣営に関しての情報が載っていないな……」


 だが、このページには陣営に関しての情報は記載されていないようだからな。この場で所属する陣営を決めることはできそうになかった。


「まあ所属する陣営は後で考えるとして、今回のイベントでは調査を進めたり、調査に協力すれば貢献度ポイントを稼げるようだな」


 肝心な貢献度ポイントの稼ぎ方についてだが、このページの説明によると、調査を進めたり、調査に協力するような行動を取れば、貢献度ポイントを獲得できるとのことだった。


「……相変わらず曖昧」

「それは同感だが、これまでのことから考えると、遺物の発見や消費アイテムの納品なんかが該当するのではないか?」


 貢献度ポイントの稼ぎ方は相変わらず曖昧な表現がなされているが、これまでのイベントでの経験から稼ぎ方は大体分かるからな。そこは大した問題ではなかった。


「まあわざわざ曖昧な書き方をしているということから察するに、何かがあるのだろうな……」


 だが、明記されていないことが意図的なものだとすると、ここには記されていない要素があることを示唆しているも同然だからな。

 これまでのイベントのことから鑑みると、NPCから情報が得られる可能性が高いので、この後は知り合いのNPCに話を聞いていくのが良さそうだった。


「ただ、調査の趣旨から考えるに、遺物の発見は高ポイントになりそうだな」

「……うん」


 調査の目的は遺物の調査だからな。詳細はまだ分かっていないが、遺物の発見がメインのポイント稼ぎの手段になる可能性は高かった。


「イベントが行われるのは専用エリアで、初回のイベントのときと同様に通常の倉庫にはアクセスできなくなる、か……」

「……島の調査だし、それも当然」

「まあそれはそうなのだが、アイテムに制限があるのは面倒だよな……」


 今回のイベントは遠方の島の調査なので、最初に持ち込んだアイテムや現地で調達したアイテムしか使えないことには納得できるのだが、面倒なことに違いはないからな。

 とりあえず、持ち込むアイテムの選定はさっさと済ませてしまいたいところだった。


「まあそれはさておき、サーバー分けはランダムだが、パーティを組んでおけば同じサーバーに行けるようだな」

「……うん。初回イベと同じ」


 また、今回もいくつかのサーバーに別れるようになっているが、初回のイベントのときと同様にパーティを組んでおけば同じサーバーに入れるので、リッカと行動を共にすることはできそうだった。


「後はイベントエリアではデスペナルティの時間が固定になることぐらいか。案外、情報が少ないな……」


 イベント情報のページを一通り見てみたが、情報としてはこのぐらいになるからな。不明な点も多いので、情報量は少ないと言わざるを得なかった。


「……NPCとの交流もこのゲームの重要な要素」

「……つまり、そこから情報を得ることもイベント攻略の一環ということか?」

「うん」

「……確かに運営もそういう趣旨でやっている感じはするな」


 今までのイベントもNPCと絡めて来ていたからな。その意見には納得できた。


「とりあえず、アギオスの防具の作製は後回しにして、街でイベントについての調査をした方が良さそうだな」

「……うん」


 アギオスの装備品の作製は後回しにしても特に問題がないし、イベントの情報を得てからの方が何かと都合が良いからな。

 ここは予定を変更して、まずは街に出てイベントの情報を探ってみることにした。


「アギオス、俺達は少し出掛けて来る。お前はしばらくここで待っていてくれるか?」

「グル、グルッ!」


 俺はアギオスに大人しく待っているよう言うが、それに何か不満があるようで、俺の腕を掴んで首をブンブンと横に振る。


「……一緒に来たいのか?」

「グルッ!」

「……分かった。では、一緒に行くか」


 どうやら、俺と一緒に行きたいようだからな。一緒でも特に問題はないので、ここは調査に連れて行ってやることにした。


「……できるだけ情報伏せたいし、止めておいた方が良い」


 だが、リッカはアギオスを連れ出すことに反対のようだった。


「確かに次回のイベントはPvPの要素がある可能性はあるが、どうせ外に行くときは連れ出すし、ここで伏せる意味もないと思うぞ?」


 隠そうとしたところで、アギオスの存在はすぐに露見するだろうからな。ここで隠してもあまり意味がないので、連れ出しても問題はないように思える。


「……別に連れ出す意味もない」

「グル、グルッ!」

「んひゃぁっ⁉」


 リッカは連れ出す意味もないと否定的な態度を見せるが、アギオスはそれが気に入らなかったのか、彼女の尻尾に軽い力で噛み付いた。


「おい、噛み付くのは止めろ!」


 俺は後ろからアギオスの首を掴んで、引っ張ることで何とかそこから引き離す。


「……あのな、気に入らないからと言って噛み付くのは止めてくれるか?」

「グルゥ……」


 リッカから引き離したところで、屈んでアギオスと目線を合わせてから叱るが、幼体はそれを受けて露骨に意気消沈してしまう。


「……そんな調子だと連れては行けないぞ?」

「グルゥ……」

「そんな目で見てもダメだ。道行く人に噛み付かれると困るし、置いて行くぞ?」


 あまり甘やかすわけには行かないからな。ねだられてもダメなものはダメだ。


「ちゃんと大人しくしてくれるか?」

「……グルッ!」


 だが、諭すように言うと、何とか同意を取り付けることができた。


「では、このまま行くか……と言いたいところだが、その前にエサを与えないとな」


 昨日はすぐにログアウトしてしまって、何も食べさせていなかったからな。アギオスの満腹度がだいぶ減っているので、忘れない内にエサを与えておくことにした。


「生肉で良いよな……?」


 肉であれば何でも良さそうだからな。ひとまず、適当な生肉を与えてみる。


「グルッ!」


 肉を与えると、アギオスはそれを手で掴んで、がぶがぶと食べ始める。

 そして、そのままあっという間に肉を食べ終わってしまった。


「思っていたほど満腹度が回復しないが、こんなものなのか……?」


 タイニーフェニックスは色々と特殊で、エサが必要なかったからな。そのこともあって基準が分からないので、何とも言えないところだった。


「まあそれは後で考えるとして、アギオスが満腹になったら出発するか」


 だが、それは今考えるようなことではないからな。ここは調査を進めるために、準備が整い次第、街に出ることにした。


 そして、その後はアギオスが満腹になるまで肉を与えて、それが済んだところで三人で街に繰り出したのだった。

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