episode266 大狼戦、開始!
「……来たか」
それからしばらく待っていると、結界を維持していた尖った骨のような物が消滅して、それと同時に結界が解除された。
「とりあえず、このまま待つぞ」
「グルッ!」
結界が解けると同時に向こうから近付いて来ているからな。こちらから動く必要もないので、この場で待ち構えることにした。
(
ここで敵の様子を確認してみるが、情報では
(HPが減ると数が増えると見て間違いなさそうだな)
これまでにも
最初は五体だが、HPが減ると数が増えると見て良さそうだった。
「ふむ……ストライクウルフよりも一回り大きいな」
「では、俺から行こう。お前は後から来てくれ」
「グルッ!」
向こうは
「……来い!」
俺は短剣を鞘から抜いて構えると、自分にターゲットを向けさせるために【氷炎爆弾】を投擲して攻撃する。
「ガルッ!」
「アウッ!」
すると、それを受けて
(ダメージは与えられていないが、関係ないか)
【氷炎爆弾】での攻撃は敵の集団の手前に着弾したので、ダメージは与えられなかったが、こちらに引き付けることが目的だからな。
そもそもの話をすると、倒しても無限に湧き続ける
「今だ! 『ライトニングフラッシュ』を使ってくれ!」
「グルッ!」
そして、敵を十分に引き付けたところで、ホーリーホーンドラゴンの幼体に『ライトニングフラッシュ』を使うよう指示すると、その角から強烈な光が放たれた。
「アオン⁉」
「アウッ⁉」
その光を受けた
(やはり、このスキルは付与率が高いな)
『ライトニングフラッシュ』は固有のスキルだと思われるので、その正確な特性はまだ分かっていないが、道中での使用で付与率が高いことと、距離が近いほど成功率が高まると思われることは分かっていたからな。
しっかりと引き付けて使用したことで、狙い通りに全員に暗闇を付与することができていた。
「では、行くぞ!」
「グルッ!」
邪魔な
俺はホーリーホーンドラゴンの幼体と共に駆け出して、
「俺から行こう。『マテリアルブレード』!」
今はそちらにターゲットを取らせる必要もないし、時間も惜しいので、ここは先に接近した俺が先制攻撃を仕掛けることにした。
俺はある程度距離を詰めたところで、『マテリアルブレード』で刃を飛ばして
「……グル!」
しかし、その攻撃は素早く横に移動することで躱されてしまっていた。
「……行け!」
「グルッ!」
だが、その攻撃は本命の攻撃ではないし、最初から当たるとも思っていなかったので、避けられたところで何の問題もなかった。
その直後にホーリーホーンドラゴンの幼体が角に集めた光を上空に向けて放つと、その光が
「アオン⁉」
光は
(やはり、ホーリーホーンドラゴンの特徴的なスキルとだけあって強いな)
このスキルは『ホーリージャッジメント』というスキルで、ホーリーホーンドラゴンがいつも開幕で使って来るあのスキルだ。
クールタイムは少し長めなものの、相変わらず必中な上に威力も高いので、敵が使って来るとなると厄介な攻撃だが、こちらが使えるとなると強力で頼もしいスキルだった。
「では、俺も行くとしよう。『マテリアルバスター』」
距離も詰められた上に相手は『ホーリージャッジメント』が直撃したことで怯んでいるからな。このまま俺も仕掛けることにした。
『物質圧縮』を使うほどの時間はないので、『マテリアルバスター』を単体で使って大剣を生成して、そのまま大剣を一気に振り抜く。
「ガルッ!」
しかし、その一撃はわずかに間に合わず、怯み状態から復帰した
「アオオォォーーーン!」
さらに、後方に下がった
「ガルッ!」
「アウッ!」
すると、
(集合を掛けたか。面倒だな)
暗闇を付与して視程を狭めることで
暗闇の効果時間はまだあるが、それも集合を掛けられては無意味だった。
(ダメージは稼いでおきたいが、どうする?)
せめて『バレッジブレード』は叩き込みたいところだが、そうすると
ここからどう動くべきなのかを少し考える必要がありそうだった。
だが、悠長に考えている時間はない。二、三秒が経過するだけでも戦況は変わってしまうので、刹那の内に判断を下す必要があった。
「――お前は
俺が取った手段はホーリーホーンドラゴンの幼体に
安全に行くというのも手だったが、時間を掛けるほど事故率が上がるからな。『バレッジブレード』を叩き込む程度の短時間であれば何とかなるはずなので、ここは幼体に取り巻きを足止めさせて、その間に俺が
「グルッ!」
指示を受けた幼体は
「さて、やるか」
そして、
「…………」
それに対して
「はっ――」
そのまま接近した俺は大剣を後方に引いて構えて、一気に振り抜いて攻撃しようとする。
「――グル」
「っ⁉」
しかし、
「がはっ⁉」
想定を遥かに超える速度で放たれた一撃は回避行動を取る間もなく腹にクリーンヒットして、それを受けた俺は吹き飛ばされてしまう。
「まだ――」
「グル――」
「っ!」
吹き飛ばされた俺は空中で体勢を立て直そうとするが、気付くと
(速い――)
俺はその攻撃を何とか腕当てで受けようとするが、既に放たれている攻撃を防ぐことなどできるはずもなかった。
そのままその攻撃に直撃した俺はHPがゼロになって、あっさりと倒されてしまう。
「グル――」
しかも、
(届かなかった――?)
しかし、
(……油断したな)
一瞬の隙を突いた連続攻撃。それによって瞬殺されてしまって、戦況は一気に傾いてしまっていた。
(やはり、焦って仕掛けたのは――いや、それは後で良い)
失敗に対する分析は重要なことではあるが、今はそんなことを考えている場合ではないからな。
今すべきことはホーリーホーンドラゴンの幼体への攻撃を阻止することなので、そこで思考を切り上げて、すぐに動くことにした。
「まだ――終わっていないぞ!」
そして、【劣化蘇生薬】で自己蘇生した俺は
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