episode252 試練用の消費アイテムの調達
翌日、ログインした俺は『猫又商会』が経営する店に向かって、そこで売られている商品を確認していた。
もちろん、その目的は高性能な消費アイテムを探すことだ。普段はあまり変わらないので、性能はほとんど気にしていないのだが、試練の突破率をできるだけ上げたいからな。高性能な物を使いたいので、わざわざそれを探しに来たのだ。
「うーむ……性能が高いポーションは店頭には出していないのか?」
商品を見てみるが、ここには目立って性能の良い物はないようで、見たところ高性能な物は店頭には出していないようだった。
(ここはやはりネムカに聞くのが一番か)
リーダーであるネムカに聞けば分かることだからな。これ以上ここで商品を見ていても仕方がないので、彼女に連絡を取ることにした。
(メッセージを送ってと……これで良いな)
俺はその場でネムカにメッセージを送って、そのまま店を後にしようとする。
「……む、もう返って来たか」
だが、彼女はちょうど手が空いていたところだったようで、すぐに返信が届いていた。
(どうやら、拠点に行っても良いようだな)
確認してみると、メッセージの内容は拠点で話をするという旨のものだった。
(では、このまま移動するか)
なので、俺はそのまま『猫又商会』の拠点に移動したのだった。
◇ ◇ ◇
『猫又商会』の拠点に移動した俺はいつものように応接室に案内されていた。
「……さて、用件は消費アイテムについてですね?」
「ああ」
互いに席に着いたところで、すぐに話は始められた。
「結論から言いますと、店頭で販売していない商品も存在しています」
「やはり、そうだったか。上位勢向けか?」
「そうですね。受注生産という形になります」
思った通り、上位勢に向けた商品も裏で販売しているようで、依頼に応じて様々な物を作製しているようだった。
「作製対象は決まっているのか?」
「いえ、特には。作製可能な物であれば、何でも受け付けています」
「そうか」
どうやら、基本的にはどんな物でも受け付けているようで、ここで頼めば必要な物は全て揃えられそうだった。
「どんな物をご希望ですか?」
「まだ細かくは決めていないが、とりあえず、高性能なポーションとボス戦向きの料理は欲しいな」
「……つまり、難易度の高いボス戦向けに少しでも性能の良い物が欲しいと?」
「まあそんなところだな」
試練はボス戦になる可能性が高いからな。求めているのはその戦闘で役立つアイテムなので、端的にまとめるとそういうことになる。
「もう少し詳しく聞いてもよろしいでしょうか?」
「分かった。そろそろアドラ様からの試練を受けようと思っていてな。今回ばかりは妥協せずに行こうと思っているので、そこで使うための高性能な消費アイテムを探している」
試練のことに関しては話してしまっても問題ないし、ちゃんと話した方が話を進めやすいからな。俺は素直に高性能な物を求めている理由を話す。
「なるほど、そういうことでしたか。試練の内容は判明していますか?」
「強者の闘争平原で試練を行うとは言われているが、それ以上のことは分からないな」
試練を行う場所は決まっているが、内容は適当に決めると言っていたからな。残念ながら、これ以上の情報はない。
「だが、ホーリーホーンドラゴンを相手することを想定して準備は進めているな」
しかし、漠然と準備を進めていても、試練を始めるタイミングを判断しづらいからな。
とりあえず、試練の内容を予想して絞って、それに合わせて準備は進めている。
「そうですか。ホーリーホーンドラゴンが相手となりますと、欲しいのは光耐性でしょうか?」
「いや、リッカの紙装甲だと無駄だろうし、料理は基本的に火力系の物にするつもりだぞ」
俺は光耐性が上限値に達しているので意味がないし、リッカの耐久力だと光耐性を多少上げたところで焼け石に水でしかないからな。
実質的に無意味なので、光耐性を上げるような料理は選択肢にもない。
それに、そもそもの話をすると、相手がホーリーホーンドラゴンと確定しているわけでもないからな。
料理は誰が相手でも活用できる火力を上げられるような物をメインにするつもりでいる。
「……確かにそうですね」
「とりあえず、良い料理はないか?」
「そうですね……。【炎竜の肉】や【シルバーコッコの鶏肉】を使った料理はどうでしょう? 前者は筋力上昇の効果が、後者はスタミナ消費量を減らす効果がありますよ」
「ふむ……リッカはそれで良いか」
他に良い物もなさそうだからな。リッカが使う料理の素材はその二つにすることにした。
「スタミナ消費量を減らす効果があるなら、俺も【シルバーコッコの鶏肉】を使った料理にするか」
ソロではスタミナの重要性が高いからな。スタミナ消費量の軽減効果は有用なので、俺も【シルバーコッコの鶏肉】を使った料理にするのが良さそうだった。
「分かりました。準備しておきましょう」
「では、次はポーションについて話していくか」
料理についての話はこれで良さそうだからな。次はポーションについての話をすることにした。
「とりあえず、どんな物があるか見せてもらっても良いか?」
「分かりました。どうぞ」
俺はネムカから渡されたポーションの効果を一つ一つ確認していく。
「ふむ……回復効果だけでなく、追加効果もあるのか」
効果を確認していくが、基本的にはどれも追加効果があるという形になっていた。
その効果は短時間のリジェネ効果や状態異常耐性など色々とあるので、相手によってある程度使い分けることができそうだった。
「お気に召す物はありましたか?」
「あると言えばあるのだが、一つ聞いても良いか?」
使えそうな物はあるのだが、俺が一番求めていたある物がここにはないからな。そのことについて聞いてみることにする。
「何でしょう?」
「【蘇生薬】はないのか?」
聞きたいことと言うのは【蘇生薬】のことについてだった。市場には出回っていないが、上位勢が使っているとの噂はあるからな。『猫又商会』で生産されていないかどうかを確認してみる。
「……今はありませんね」
「今はない、か……。注文すれば作ってくれるのか?」
「注文自体は受けていますが、すぐには用意できないと思います」
「具体的にはどのぐらい掛かるんだ?」
そんなに時間が掛からないのであれば、【蘇生薬】を入手してから試練に挑むという選択肢も取れるからな。どの程度の時間を要するのかを詳しく聞いてみることにする。
「申し訳ありませんが、それについては何とも」
「む、そうか……」
しかし、次回の入荷時期は未定のようで、これだと試練に間に合わせられるかどうかは分からなかった。
(となると、【蘇生薬】は手に入らない前提で動いた方が良いか)
なので、ここは基本的に【蘇生薬】はないものとして考えて、手に入ればラッキーといった程度に留めておくことにした。
「……提案しますが、『渡り鳥の集い』に聞いてみるというのはどうでしょう?」
だが、ここでネムカからそんな思いもよらない提案がなされる。
「と言うと?」
戦闘系ギルドの『渡り鳥の集い』では生産活動は行われていないし、当然【蘇生薬】も生産されていないはずだからな。
ひとまず、その提案の理由を詳しく聞いてみることにする。
「『渡り鳥の集い』には【劣化蘇生薬】をいくつかお売りしましたので、まだ持っている可能性があります」
どうやら、『渡り鳥の集い』には【劣化蘇生薬】を売ったことがあるようで、提案は残っている物を売ってもらえないか交渉してみてはどうかということだった。
「なるほど、それはありだな」
ソールかアッシュに聞けば、交渉はできるだろうからな。その案で行くのはありだった。
「では、【蘇生薬】に関しては『渡り鳥の集い』と交渉することにしよう。とりあえず、ポーションを注文して良いか?」
「もちろん、構いませんよ。どのような物をご希望ですか?」
「この三つを頼めるか?」
俺はHPとMPを回復できるポーション、HPの回復にリジェネ効果が付随しているポーション、MPの回復量が多いポーションの三種類のポーションを注文する。
「かしこまりました。準備ができ次第、お知らせします。注文は以上ですか?」
「ああ」
【蘇生薬】は『渡り鳥の集い』との交渉が済んでからでないと決められないからな。今の段階で注文しておく物は以上になる。
「では、俺はそろそろ行くことにしよう。またな」
そして、必要なポーションを注文し終えたところで、俺は『猫又商会』の拠点を後にしたのだった。
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