episode249 装飾品の素材の検討

 拠点に戻った俺達は新調した装備を見ながら、どうするかを考えていた。


「さて、装備を新調したわけだが、どうだ? 装飾品に求める性能は決まりそうか?」

「……少しは」

「そうか。聞いても良いか?」


 ある程度の方針は定まっているようだからな。このまま話を聞いてみることにした。


「……うん。とりあえず、付与枠に『軽快な風』と『ぎんけいの輝き』は確定」

「まあそれは俺も同意見だな」


 『軽快な風』は重量が低いほどダッシュ速度と敏捷が上がる付与効果だが、今のリッカの合計重量は『ふわつく足取り』の効果でゼロまで下がっているからな。

 その効果を最大限に発揮できるので、これは確実に欲しいところだった。


 そして、『ぎんけいの輝き』はスタミナ消費量を軽減する効果がシンプルに強力だからな。

 今は【星界のアミュレット】に付与しているが、装備を変えるのであれば付け直す必要があるので、付与コストのことも考えて装備を決める必要がありそうだった。


「ただ、付与コストの確保を考えると、【星界のアミュレット】よりも良い物を見付けるのは難しいか……?」


 『軽快な風』と『ぎんけいの輝き』を付与するには付与コストが三十も必要だからな。

 そう考えると、【星界のアミュレット】よりも良い物は簡単には見付かりそうになかった。


「とりあえず、俺の装飾品の枠から考えるか」

「……うん」


 リッカの方は選択肢が多く、決めるのに時間が掛かりそうだからな。ここは俺の装飾品の枠から考えることにした。


「まず考えるべきは、『さいれいめい』の効果をどの程度活かすかか」


 『さいれいめい』には最も高い属性耐性値を上げる効果があるからな。

 それを活かすためには耐性値を揃える必要があるので、まずは属性耐性をどうするかを考えていくことにした。


「……今の耐性値は?」

「装備だけの補正だとこんな感じだな」


 ここで俺はリッカにパラメーターを開示して、今の俺の属性耐性値を確認させる。

 ちなみに、今の俺の属性耐性値は火耐性は32%、氷耐性は42%、風耐性は22%、雷耐性は10%、光耐性は27%、闇耐性は20%になっている。


「とりあえず、肝心な光耐性に効果を適用するには、ここから15%の補正が必要か」


 『ホーリーオーラ』の効果を考えると、光耐性に補正を掛けたいが、そのためには15%の補正を掛ける必要があるからな。

 一応空きスロットは13枠あるので、【マーチャルブライトの宝珠】も使って補正を掛ければ達成できるが、枠をほぼ全て使ってしまうので、どうすべきかは少々悩みどころだった。


「……装飾品で調整?」

「まあそれが一番良いのだろうが、問題はその性能だよな」


 『星界の理』はステータスの上昇がかなり遅く、恩恵は少ないのだが、何だかんだで火力に補正を掛けられる貴重な効果だからな。

 耐性だけを考えて装飾品を選んでも良いが、ある程度は性能も考えて選びたいところだった。


「……空きスロも考えたい」

「そうだな」


 【星界のアミュレット】は空きスロットが三つある点も優秀なポイントだからな。それを超える物は簡単には見付かりそうになかった。


「できれば、氷以外のマーチャルシリーズの宝珠に【ギルドハーツの宝珠】と【ギルドストライフの宝珠】も付けたいし、それも考える必要があるか」


 【氷炎爆弾】の威力を高めるために【マーチャルフロストの宝珠】も着けたいところだが、そうすると耐性値を揃えるのが難しくなるからな。

 そこは諦めるにしても、他の宝珠は優秀なので、できれば着けたいところだった。


「……何ならその二つもいらない」

「ふむ……それもありか」


 【ギルドハーツの宝珠】はHPの回復量を上げる宝珠、【ギルドストライフの宝珠】はステータスを上げる宝珠だが、被弾を抑えるのであればあまり必要のない物だからな。

 それも切って、耐性の調整に充てるというのも選択肢としてはありだった。


「まあそれは装備が決まってから考えるか」


 装備の耐性を見てからでないと、決めるのは難しいからな。それは装備を絞る段階になってから考えた方が良さそうだった。


「とりあえず、俺の装備の素材の候補は【シロライトインゴット】、【グリストダイヤ】のあたりか?」


 光耐性を付与するのであれば、その二つが良さそうだからな。これらは最有力候補だった。


「……【聖角竜の鱗】もあり」

「ふむ……まだ在庫もあるようだし、それもありだな」


 値段は張るが、効果は高いだろうからな。それも中々良さそうだった。


「ひとまず、俺の方はそれで良いか」

「……うん」

「次はリッカの方だが、火力か敏捷に補正を掛けられて、かつ付与コストを確保できる物で良いか?」

「……できれば火力の方が良い」

「そうか。とりあえず、素材の候補としては【炎竜の核】、【ブラストファルコンの爪】、【テオグリフォンのそう】のあたりか?」


 ボスモンスターの素材やレア素材は付与コストの上限が高いことが多いからな。今の段階で手に入れられる素材の中で考えると、そのあたりの物が候補になりそうだった。


「……【ひずみの欠片かけら】は?」

「ふむ……。それもありか」


 【ひずみの欠片かけら】は既に防具で使っているが、装飾品にすればまた別の効果が発現するからな。

 リッカであればHPの回復量が減少するデメリットも問題ないので、それも有力な候補になりそうだった。


「……じゃあ【ひずみの欠片かけら】と【テオグリフォンのそう】で」

「それでも良いとは思うが、問題は費用か……」


 装備としてはそれで良いとは思うが、【テオグリフォンのそう】は高価だからな。

 今回の装備品の作製が想定以上の出費になったので、ノータイムで決定することはできなかった。


「……マテリアルクラフターの件で稼げた」

「いや、スクロールは五つ買ったし、一つ売れ残っている以上は稼げたとは言えないぞ?」


 百万ゼルで仕入れた物を百二十万ゼルで売ったので、『栄華の影』に渡した手数料を差し引いてもかなり儲けは出ているが、まだ一つ売れ残っているからな。

 これが売れないとプラスにはならないので、まだ稼げたとは言えなかった。


「……ここで整えれば、しばらくは装備変えない」

「まあそれはそうなのだが、悩むな……」


 リッカの言うように、ここでしっかりと装備を整えれば、しばらくは装備を変えないことになると思われるので、多少痛い出費でも何とかなりそうではある。

 だが、大きな出費であることに変わりないからな。そう易々と決めることはできなかった。


「まあ他にも検討して、【テオグリフォンのそう】が一番良いという結論になったらそうすることにしよう」

「……分かった」


 なので、ここはしっかりと熟考して、それが一番良いと結論が出てから作ることにした。


「さて、話し合いはここまでにするとして、リッカはどうする?」


 俺はマーチャルシリーズの宝珠の注文や店の商品の補充、マテリアルクラフターの作製依頼など、色々とすることがあるからな。

 すぐには終わらないので、リッカはどうするつもりなのかを聞いてみる。


「……一人で動く」

「では、今日はもう各自で活動するということで良いな?」

「……うん」


 今日はもう合流せずに、各自で動いたので良さそうだからな。ここは別れて行動することにした。


「……それじゃあ」

「ああ」


 そして、そこで別れた俺達はそれぞれで活動して、それが済んだところで各自でログアウトして、その日のゲームプレイを終えたのだった。

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