episode248 聖角竜素材を使っての防具の新調
会合を終えた俺は注文していた装備品を受け取るために『猫又商会』のギルド拠点に向かっていた。
「む、リッカはもう来ていたか」
「……うん」
応接室に向かうと、そこでは先に到着していたらしいリッカが席に着いてシェーダと話をしていた。
「お、来たッスね。席はそこッスよ」
「ああ」
ネムカはまだいないが、すぐに来るだろうからな。俺はそのままリッカの隣に移動して、そこにあった席に座る。
「お待たせしました」
と、ちょうど俺が席に着いたところで、ネムカが奥の扉から現れた。
「それでは、始めましょうか」
「ああ」
そして、そのまま彼女も席に着いて、注文しておいた装備品についての話が始められた。
「まずはこちらが腕当てになります」
ネムカが最初に取り出したのは今回のメインとも言える腕当てだった。
「ふむ……設計通りだな」
腕当ての装甲は細長い盾のような形状をしていて、腕に合わせて湾曲して前腕を守る形になっていた。
素材となった【マディライトインゴット】の表面は【聖角竜の鱗】で綺麗に覆われていて、その表面には竜をイメージしたかのような紋様が刻まれている。
そして、それが【ハイクリアクリスタル】によって浮いているように見える設計になっていた。
「とりあえず、性能を確認してみるか」
見た目は完璧と言っても良い出来で、これ以上見るところもないからな。次はその性能を確認してみることにした。
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【聖角竜の装甲】
物防:52
魔防:52
耐久:250
重量:5
空S:4
品質:60
効果:混色のベール、聖角竜の守護、ホーリーオーラ
付与:
Cost:0/30
説明:マディライトインゴットと聖角竜の鱗を使って作られた装甲が貼り付けられた腕当て。ハイクリアクリスタルによって装甲が浮いているかのような見た目になっている。
【聖角竜の守護】
防具に宿るはホーリーホーンドラゴンの光の魔力による守護の力。
スタン、麻痺、虚弱耐性が上昇して、光耐性が7%上昇する。
また、戦闘開始時に自身に一度だけ状態異常及び弱体効果を無効にする効果を付与する。
さらに、戦闘開始時と戦闘中に六十秒が経過するごとに、自身に一度だけ受ける属性ダメージを減少させる効果を付与する。
【ホーリーオーラ】
聖なるオーラが装備者に力を与える。
光、闇耐性が5%上昇して、確率で受ける闇属性ダメージが減少する。
また、状態異常及び弱体効果が付与されていないとき、攻撃時に光属性の追加ダメージを与える。
さらに、光耐性が50%の場合、受ける闇属性ダメージが減少して、全ステータスが上昇する。
『ホーリーオーラ』の効果は重複せず、『ホーリーソウル』の効果が適用されている場合、この効果は適用されない。
【
付与コスト:30
始まりに訪れた彩りは鮮やかに咲き誇る。
戦闘時、自身の最も高いステータス値が上昇する。
この効果は最大段階である五段階目の状態から開始されて、一定時間が経過するごとに効果が一段階低下するが、一定時間ダメージを受けなければ効果が一段階上昇する。
さらに、自身の最も高いステータス値が上昇して、最も高い属性耐性値が10%上昇する。
『
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「ふむ……。耐性効果は無難にありがたいな」
耐性効果は意味のない相手に対しては無駄になるが、有効な場面では活躍するし、対応力は確実に上がるからな。
特に行動不能という致命的な状態異常であるスタンと麻痺は無効化できれば大きいので、保険としてはかなりありがたかった。
「それにしても、変わった効果が多いな」
「……うん」
特定の耐性値が最大値だと追加効果を付与したり、条件を満たしたステータス値が上昇するなど、これまでに見たことのないタイプの効果もあるからな。
調整を考えるような余地も生まれて、何かと目新しかった。
「それはそうと、一つ聞いても良いか?」
「何でしょう?」
「『
この効果の記述には同率一位だった場合の記載がないからな。そうなった場合はどうなるのかを聞いてみることにする。
「属性耐性値に関しては同率一位の全ての耐性値に補正が掛かります」
「つまり、全属性の耐性を上げることもできるということか」
どうやら、同率一位だった場合はそれらの全てに効果が適用されるようで、うまく調整すれば全属性耐性を上げることも可能なようだった。
「ステータスの方はどうなんだ?」
「そちらは未確認になります」
「む、そうか」
まあ属性耐性値とは違って、ステータスをぴったり合わせるのは難しいからな。残念ながら、ステータスの方がどうなるのかは分かっていないらしい。
「この効果を活かすのであれば、耐性値を調整した方が良いか?」
「……うん。でも、他の装備も見てから」
「それが良いか」
装備品全体の耐性を見てからでなければ、耐性の調整はできないからな。ひとまず、頼んでおいた他の装備品も見てみることにした。
「他の装備品も見せてくれるか?」
「分かりました。どうぞ」
他の物を見せるよう頼むと、ネムカは他に作った装備品を全て取り出して、それらをテーブルの上に並べる。
「どれどれ……」
そして、装備品が並べられたところで、早速それらの性能を確認した。
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【ティラノ皮のロングパンツ】
物防:41
魔防:41
耐久:200
重量:4
空S:0
品質:60
効果:狂暴の具現、古の継承
付与:
Cost:0/25
説明:ランページティラノの皮をベースにして、内側に真祖の獣皮を貼り付けて作られたロングパンツ。二種類の皮で作られたことで、高い耐性を誇っている。
【混合羽製糸の胸当て】
物防:36
魔防:33
耐久:100
重量:0
空S:0
品質:100
効果:ふわつく足取り、刈り取る一撃
付与:浮かび上がるようなふわふわ、万全の風
Cost:0/15
説明:コッコの羽製糸とハンターバードの羽製糸を混合した糸で作られた胸当て。ふわふわの肌触りで、装備者に心地良い安らぎを与える。
【混合羽製糸のスカート】
物防:31
魔防:28
耐久:100
重量:0
空S:0
品質:100
効果:ふわつく足取り、刈り取る一撃
付与:浮かび上がるようなふわふわ、
Cost:0/15
説明:コッコの羽製糸とハンターバードの羽製糸を混合した糸で作られたスカート。重さをほとんど感じさせないほど軽量で、軽い動きを実現させてくれる。
【狂暴の具現】
暴れ狂うという概念そのものを止めることなどできはしない。
氷結、スタン、麻痺、鈍重と敏捷低下の弱体効果への耐性が上昇する。
さらに、スタミナ消費量が減少する。
『狂暴の具現』の効果は重複せず、『狂暴の
【古の継承】
古の時代から変わることのないその形状は生きた化石そのもの。
毒、猛毒、
また、状態異常付与効果の発動時に確率で対象の耐性の一部を無視する。
さらに、戦闘時に『不変の
【不変の
自身に一定時間ステータスが変動しなくなる効果を付与する。
ただし、一部の効果に対しては効果がない。
クールタイム:180秒
【
付与コスト:20
妖しい術式が災禍の力を引き上げる。
効力が上昇して、状態異常付与効果と弱体効果付与効果の発動率が上昇する。
『
【刈り取る一撃】
探索時に敵に発見されにくくなる。
さらに、クリティカル攻撃の威力が10%上昇して、クリティカル攻撃時に確率で防御力の一部を無視する。
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「どうでしょうか?」
「流石の一言に尽きるな」
デザインの方も完璧で、非の打ち所がないからな。流石と言う他なかった。
「それにしても、【真祖の獣皮】に高品質な【ハンターバードの羽】か……。よくすぐに集められたな」
【真祖の獣皮】は古の獣というモンスターがドロップするアイテムなのだが、獣人専用エリアにしか出現しない上にレアモンスターで出現率が低いからな。
入手の難しいアイテムで滅多に出回らないので、注文してもすぐに入荷できるような物ではなかった。
「【真祖の獣皮】に関しては、探索してたらたまたま出会っただけッスよ?」
「む、そうだったか」
どうやら、シェーダが獣人専用エリアを探索した際に古の獣と遭遇したらしく、それで素材が手に入ったらしい。
「まあ本当は買い取りを掛ける予定だったんッスけどね」
「そうか。それはそうと、『不変の
『古の継承』の効果で使用できるようになる『不変の
実戦で使うときに分からないと困るので、ここで詳しい仕様を聞いておくことにする。
「構いませんよ。この効果はステータスを付与された時点のものに固定するというもので、この効果が付与されている限り、一部を除いてあらゆる効果でステータスが変動しなくなります」
「つまり、デバフを受けてもステータスは下がらないし、バフを掛けた状態で使えば、バフが切れてもステータスは下がらないということか」
「そうなりますね」
どうやら、ステータスがこの効果が付与された時点でのものに固定されるようで、この効果が付与された状態だと、ステータスが変動する効果を受けてもステータスが変わらなくなるらしい。
「一部を除いてとは言うが、それはどういうことなんだ?」
「一部この効果の対象にならない例外が存在しています。主に効果時間が短い代わりに倍率が高いバフ効果が対象ですね」
「ふむ、そうだったか」
まあ効果時間が短い代わりに高倍率になっているものを固定できると強すぎるからな。そこはちゃんと調整されているらしい。
「ところで、装飾品をどうするかはお決まりになりましたか?」
「それはもう少し考えさせてもらっても良いか?」
今回作ってもらった装備を見て、どう調整するかを考えたいからな。装飾品をどうするかはまだ考えさせてもらうことにする。
「分かりました。それでは、こちらが代金になります」
「む、思っていたよりもだいぶ高い……が、仕方ないか」
予定金額を大幅に超えてしまったが、良い物はできたからな。その価値はあったと言えるので、そんなに気にする必要はなさそうだった。
「では、代金はこれで良いな?」
「……確かに。それでは、また何かありましたら、いつでもどうぞ」
「ああ。では、またな」
そして、代金の支払いを終えたところで、俺達はそのまま拠点に戻ったのだった。
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