episode152 炎竜の素材を使っての装備の新調

 翌日、それぞれの作業を終えた俺とリッカは拠点に集まっていた。


「さて、アイテム集めはこのぐらいにして、そろそろ装備のことを考えるか」

「……うん」

「ピィッ!」


 俺とリッカが席に着くと、タイニーフェニックスがテーブルの上に飛んで来る。


「……今日テイムした?」

「まあな」


 【古代の刀】に魔力を込めるのに想定以上に時間が掛かっていたからな。

 付与効果の選定が先に済んで時間が余ったので、その時間でテイムに挑戦したところ、運良く成功したのだ。


「ちなみに、名前はフェニーだ」

「……ネーミングが安直」

「分かりやすいと言ってくれ。それで、【星界のアミュレット】に付与する効果は決まったか?」

「……うん。『浮かび上がるようなふわふわ』と『ぎんけいの輝き』と『軽快な風』にする」

「む? 良いのかそれで? 『ぎんけいの輝き』は重複しないぞ?」


 『ぎんけいの輝き』は【竜脈の指輪】に付与してあるが、重複しない効果だからな。

 付与しても意味がないので、本当にそれで良いのか確認を取る。


「……【竜脈の指輪】はその内変える」

「まあそれもそうか」


 まあ確かに性能的に考えて、その内変えることになるであろう装備だからな。

 それを見据えて、しばらく使うことになるであろうこちらに付与しておくことにしたらしい。


「では、早速始めるか」


 俺は『おおへびの進化』と『不滅の炎』の二つを付与することに決めているからな。

 早速、【星界のアミュレット】への付与効果の付与を始めることにした。


 ちなみに、今回付与する効果の詳細は以下のようになっている。



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【浮かび上がるようなふわふわ】

 付与コスト:10

 重量が2下がる。


ぎんけいの輝き】

 付与コスト:20

 希少種であるシルバーコッコの稀有な輝き。

 スタミナ消費量が減少して、敏捷が上昇する。

 『ぎんけいの輝き』の効果は重複しない。


【軽快な風】

 付与コスト:10

 ダッシュ速度と敏捷が上昇する。この効果は重量が低いほど効果が上昇するが、重量が一定値以上だと効果がなくなる。


おおへびの進化】

 付与コスト:10

 長い時間の中で進化した蛇の力。

 毒耐性が少し上昇する。

 さらに、戦闘開始時とクリティカル攻撃成功時に自身に一度だけ受けるダメージを軽減する効果を付与する。

 この効果は重複しない。


【不滅の炎】

 付与コスト:30

 ダメージを受けたときにHPが回復する。

 この効果はダメージを受けていなかった時間に応じて回復量が増加して、一度発動すると回復量がリセットされて、二十秒は発動しない。

 また、戦闘時に一定時間ごとにHPが回復する。

 さらに、戦闘時に『癒しの炎』が使用できるようになる。

 『不滅の炎』の効果は重複しない。


『癒しの炎』

 味方一人を中心とした一定範囲にいる味方全員のHPを回復する。

 クールタイム:60秒


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「交換ページは……これか」


 メニュー画面を開くと、「交換はこちらから!」と書かれたバナーがあったので、それをタップしてポイントの交換ページに移動する。

 そして、交換品のリストにある【星界のアミュレット】への付与効果の付与を選択した。


「後はアイテムを選択してと……」


 付与効果は任意のアイテムから移し替える形になるので、目的の付与効果が付与されたアイテムを選択して、そのまま移し替える付与効果を選択していく。

 そして、選択に間違いがないことを確認したところで、付与効果を【星界のアミュレット】に移し替えた。


「リッカ、そちらはどうだ?」

「……終わった」

「そうか。【古代の刀】はもう加工できる状態なんだな?」

「……うん。これ」


 俺が確認すると、リッカは取り出した【古代の刀】をそのまま渡して来る。


「では、俺はこのまま加工に入ろう。少し待っていてくれ」


 この武器に付与する付与効果をまとめておいた合金素材は既に用意しているからな。早速それを使って作ることにした。


(まずはこれを解体してと……)


 まずは【古代の刀】を解体して、【覚醒した刀】を入手する。

 そして、その【覚醒した刀】と用意しておいた合金素材を赤熱するまで炉で加熱して、ハンマーで叩いて合成して刀を完成させた。


「できたぞ」

「……見せて」


 完成したところで、リッカと一緒にその性能を確認してみる。



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シュウノ煉獄・リュウキリ

物攻:418

耐久:700

重量:3

空S:5

品質:80

効果:炎竜の覇気、煉獄の現れ、真炎の覚醒、ドラゴンソウル――パラガトリー・アームズ、オリジン・ドラグーン――パラガトリー

付与:熔け合う煉獄、純粋なる力

Cost:0/70

説明:炎竜の全ての力が込められたインゴットで修理された前時代の刀。覚醒した絶対的な炎竜の力を前に敵はただ焼き尽くされるのみ。



【ドラゴンソウル――パラガトリー・アームズ】

 炎竜の魂が武器に圧倒的な力を与える。

 火属性攻撃の威力が上昇して、火属性攻撃に確率で一定時間ごとに火属性のダメージを受けるようになる効果を付与する効果を付与する。

 また、『根源解放』に火属性攻撃の威力と火耐性が上昇する追加効果を与える。

 さらに、この武器のパラメーターと付与された効果が、自身の全ての装備品に付与されている名称の異なる「ドラゴンソウル」と名の付いた効果の数に応じて上昇する。

 『ドラゴンソウル――パラガトリー・アームズ』の効果は重複せず、自身の全ての装備品に付与されている名称の異なる「ドラゴンソウル」と名の付いた効果の数に応じて、以下の追加効果を得る。

 二つ以上:火属性ダメージを与えたときに確率で炎上を付与する効果が付与される。

 三つ以上:火属性攻撃に確率で火耐性を低下させる効果を付与する。

 四つ以上:火属性ダメージを与えたときに確率で火傷を付与する効果が付与される。

 五つ以上:火属性攻撃時、対象へ与えるダメージが火耐性を-10%して算出されるようになる。さらに、攻撃時に確率で敵を怯ませる。


【オリジン・ドラグーン――パラガトリー】

 古代の技術が覚醒した炎竜の力をより高みへと至らせる。

 火属性攻撃の威力が上昇して、攻撃時に火属性の追加ダメージを三回与える。

 また、火属性攻撃時、対象へ与えるダメージが火耐性を-10%して算出されるようになる。

 さらに、火属性ダメージを与えたときに確率で火耐性低下、物理防御力低下、魔法防御力低下の効果を付与する(確率判定はそれぞれで独立)。

 この効果は三段階まで重複して、段階が上がると効果が上昇する。


け合うれんごく

 付与コスト:40

 れんごくの底で混じり合った炎はしゃくねつとなって全てを焼き尽くす。

 火属性攻撃の威力が上昇して、攻撃時に火属性の追加ダメージを与える。

 また、火属性攻撃時に確率で強化効果を打ち消す。

 さらに、火属性ダメージを与えたときに確率で火傷、物理攻撃力低下、物理防御力低下、魔法攻撃力低下、魔法防御力低下の効果を付与する(確率判定はそれぞれで独立)。


【純粋なる力】

 付与コスト:30

 筋力と物理攻撃力が上昇して、物理攻撃時に確率で防御力の一部を無視する。


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「ふむ……何と言うか、別格だな」


 【炎竜の杖】ほど攻撃力は高くないが、あちらは両手武器なのに対して、こちらは片手武器だからな。

 これまで使っていた【リザルライトの刀】が強化後で攻撃力230なことも考えると、この攻撃力は圧倒的と言う他なかった。


 ちなみに、この武器の素の物理攻撃力の値は380だが、『ドラゴンソウル――パラガトリー・アームズ』の効果で10%上昇して418まで上がっている。


(思った通りに火属性特化の性能になったし、付与効果に『熔け合う煉獄』を選んだのは正解だったか)


 火属性特化の性能になることは容易に予想できたからな。

 実際【炎竜の杖】と同じ『炎竜の覇気』、『煉獄の現れ』、『真炎の覚醒』の三つの効果が発現しているので、付与効果に『熔け合う煉獄』を選んだのは正解だった。


 ちなみに『純粋なる力』はシンプルな効果な割に付与コストが高いが、その分補正値が高いらしいので採用した。


「と言うか、重複している効果も多いが、大丈夫なのか?」

「……たぶん重複するし、大丈夫」

「そうだと良いがな。とりあえず、強化もしたいところだが……どうする? 強化素材も妥協しないでおくか?」


 大きな差にはならないので強化素材は適当でも良いのだが、これだけ高性能なのであれば長く使っていくことになるだろうからな。

 少しでも性能を上げるために強化素材も妥協せずに作るのもありなので、リッカにどうするのかを聞いてみる。


「……うん」

「分かった。素材はどうする?」

「……【炎竜の鱗】、【炎竜の牙】、【フレムナゲット】あたり」

「ふむ……まあそのあたりが妥当なところか」


 流石にレア素材を使うわけにはいかないからな。使う素材はそのあたりが妥当なところだった。


「【フレムナゲット】であれば楽だが、問題は補正値か」


 【フレム鉱石】五つを製錬してできる【フレムインゴット】を十個に分割した【フレムナゲット】であれば、素材は簡単に用意できるからな。

 こちらを使うのであれば、強化はすぐに済みそうだった。


 だが、その場合だと【炎竜の鱗】や【炎竜の牙】よりも補正値が低くなる可能性が高いからな。どうするのかは悩みどころだった。


「……じゃあ牙で」

「分かった。では、少し待っていてくれ」


 必要になりそうな素材は既にネムカから受け取ってあるからな。その中には【炎竜の牙】もあるので、それを使って強化することにした。


 俺は【コウル石】を投入して火力を上げた炉で【シュウノ煉獄・リュウキリ】と【炎竜の牙】を赤熱するまで加熱して、それらをハンマーで叩いて合成していく。

 そして、十回強化を終えたところで確認してみると、物理攻撃力の値が495になっていた。


(一回につきプラス7か。ボスの素材とだけあって、上昇率が高いな)


 素の値は380から450に上がっていて、そこに『ドラゴンソウル――パラガトリー・アームズ』の10%の補正が掛かって495になっているからな。

 上昇量は一回につきプラス7と、上昇率はかなり高かった。


「とりあえず、リッカの武器はこれで良いな」

「……うん」

「では、次は俺の防具を作るか」


 リッカの武器は無事に完成したからな。次は俺の防具を作ることにした。


「三人に素材を返してもらったは良いが……問題はどれを使うかだな」


 ソール達からは対価を渡すことを約束して炎竜の素材は返してもらったが、まだどの素材を使って何を作るかは決めていないからな。

 このままリッカと一緒にどうするのかを考えていくことにした。


「……品質100ので作る?」

「まあそれが良いか」


 【炎竜の鱗】、【炎竜の皮】、【炎竜のねんりん】の三つは品質を100にした物を用意してあるからな。

 折角作ったので、それらを使って防具を作ってみることにした。


「皮と鱗で腕当ては作れそうだが……一つでは足りないか」


 品質を100にできたのは各一個ずつだからな。二個あれば腕当てを作れたが、一個ではどうしようもなさそうだった。


「……皮でフード、鱗で髪飾りぐらい?」

「まあそれぐらいしかないか……」


 せめて二つあればブーツや腕当てなどの選択肢も生まれたが、一つしかない以上はどうしようもないからな。

 今手元にある物だけで作れる物を考えていくことにした。


「やはり、鱗は他にも使えそうだし、ここは皮でフードを作るのが良いか」

「……うん」


 鱗は首飾りなど、他にも用途が多そうだからな。ここは【炎竜の皮】を使ってフードを作ってみることにした。


「こうして形を整えてと……これで良いな」


 そして、【裁縫】と【錬金】のアビリティを駆使して、ぱぱっとフードを完成させた。

 ひとまず、完成品の状態の確認してみる。



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【炎竜のフード】

物防:30

魔防:32

耐久:300

重量:3

空S:0

品質:100

効果:炎竜の超免疫、フレアオーラ

付与:炎威の盾、まとえん、万全防御(小)

Cost:0/35

説明:炎竜の皮で作られたフード。高品質な素材で作られていて、強力な耐性が付与されている。



【炎竜の超免疫】

 炎竜が持つ竜種故の強力な免疫力。

 炎上、火傷耐性が大きく上昇して、火耐性が15%上昇する。

 さらに、戦闘時に一定時間ごとにHPとMPが回復する。

 『炎竜の超免疫』の効果は重複しない。


【フレアオーラ】

 強烈な炎のオーラは寒さを弾き飛ばす。

 戦闘開始時と戦闘中に三十秒が経過するごとに、自身に一度だけ受ける氷属性ダメージを減少させる効果を付与する。

 この効果は重複しない。

 さらに、耐寒レベルが0.5上昇して、氷耐性が15%上昇する。

 『フレアオーラ』の効果は重複しない。


【炎威の盾】

 付与コスト:10

 確率で受ける属性ダメージを減少させて、この効果の発動時に自身の周囲に火属性ダメージを与える炎を発生させる。

 この効果は一度発動すると、三十秒は発動しない。


まとえん

 付与コスト:20

 耐寒レベルが0.3上昇する。

 さらに、氷耐性が5%上昇する。


【万全防御(小)】

 付与コスト:5

 HPが100%以上のとき、受けるダメージが減少する。


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「ふむ……中々の性能だな」


 品質を100にする都合上、【炎竜の皮】に付与されている付与効果をそのまま付与するしかなかったので、付与効果の選定はできなかったが、ちょうど良さそうな付与効果が付与されていたからな。

 炎上、火傷への耐性や高めの火、氷耐性、付与効果も含めた高い耐寒レベルと、有効に使える場面はありそうなので、長く使っていくことになりそうだった。


「……強化したら?」

「それもそうだな」


 まだ強化が終わっていないからな。そちらもさっさと済ませてしまうことにした。


「素材には【フレイムヘッジホッグの皮】を使ってと……これで良いな」


 そして、【フレイムヘッジホッグの皮】を使って四回強化すると、物理防御力と魔法防御力が合計で12上がった。


「ふぅ……とりあえず、作りたい物は作れたな」

「……うん」

「ネムカは……ログインしていないか」


 ここで俺はフレンドリストからネムカがログインしていないかどうかを確認してみるが、彼女は今はログインしていないようだった。


「……外行く?」

「そうするか」


 他の防具を作っても良いが、作業続きで少し疲れたからな。ここは武器の性能の確認も兼ねて、リフレッシュしに外に向かうことにした。


 そして、そのまま拠点を出た俺達はオブソル岩石砂漠に向かうために闘都コロッセオスに転移したのだった。

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