episode150 炎竜戦を終えて
『マテリアルジャッジメント』による一撃が炸裂して、爆発と共にそこから強烈な冷気が放たれる。
放たれた冷気は一陣の風のように吹き抜けて、熱気溢れる煉獄火山に一時の癒しを
「グル……ォ……」
その一撃を受けた炎竜はHPがゼロになって、ゆっくりと前方に倒れ始める。
「……終わったな」
倒れた炎竜が消滅するのを見届けた俺は息を
「……ドロップアイテムの確認」
だが、そんな俺を尻目にリッカはすぐにドロップアイテムの確認に向かった。
「全く……相変わらずだな」
疲れたので少し休みたかったが、拠点に戻ってからゆっくりと休めば良いからな。
とりあえず、ドロップアイテムの確認をしてみることにした。
「さて、肝心な【炎竜の爪】は……あるな」
ドロップアイテムを確認すると、目的の【炎竜の爪】は無事にドロップしていた。
「む? 見たことのないアイテムもあるな」
だが、その中には通常のドロップアイテムに加えて、【炎竜の
ひとまず、【炎竜の爪】と一緒にそれらの情報も確認してみる。
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【炎竜の爪】
炎竜が持つ橙色に透き通った爪。獲物を切断するためではなく、叩き潰したり魔力を操るために使用するので、鋭さとは無縁になっている。
魔力の伝導率が非常に良く、魔力を扱う武器の素材として優秀。
【炎竜の
強力な火属性の魔力が込められた、表面から炎が上がっている炎竜の鱗。
炎竜が真の力を解放したことによってその魔力が宿っていて、通常の鱗よりも強い魔力が込められている。
【炎竜の真紅核】
強力な火属性の魔力が込められた炎竜の核。炎竜が真の力を解放したことによってその魔力が宿っていて、通常の核よりも遥かに強力な魔力が込められている。
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(どうやら、弱体化なしで倒したときにのみドロップするアイテムのようだな)
説明を見た感じだと、弱体化させずに倒すことが条件で間違いなさそうだからな。見たことがないのも当然と言えた。
(そう言えば、【炎竜の真紅核】はエルリーチェが口にしていたような気がするが……まあ良いか)
【炎竜の真紅核】に関しては研究所でエルリーチェと話をしているときに聞いたが、さして重要なことではないからな。
気にする必要もなさそうなので、そこはスルーしておくことにする。
「それで、分配はどうする?」
「俺はどうせ売るだけだし、余ったのだけで良いぞ」
「あたしもそれで良いよ」
「では、炉の強化に必要な【炎竜の鱗】一つと、【炎竜の爪】と【炎竜の
弱体化なしで倒さないと手に入らない素材は貴重だからな。それらは優先してこちらに回してもらうことにして、残りの通常のドロップアイテムを三人で分配してもらうことにした。
ちなみに、炎竜の通常のドロップアイテムは【炎竜の鱗】、【炎竜の皮】、【炎竜の牙】、【炎竜の肉】と、今回はドロップしなかったが、レアドロップの【炎竜の核】の計五つになっている。
「それで良いぞ」
「あたしも同じく」
「では、相談はそちらでしてくれ」
俺が口を出すことではないからな。とりあえず、その話は拠点に戻ってから三人で話し合ってもらうことにする。
「ああ」
「はーい」
「それで、この後はどうする? どこか違う場所に行くか?」
炎竜を倒したことで煉獄火山の中層に行くことができるようになったが、まだ攻略はできないからな。
これ以上ここですることもないので、どうするのかを聞いてみる。
「そうだなー……じゃあオブソル岩石砂漠に行くか?」
「分かった。では、拠点に戻って少し休んだら行くか」
オブソル岩石砂漠はユヅリハに呼ばれていて、その内向かう必要のある場所だからな。
優先的に攻略を進めておきたいエリアで、こちらとしては都合が良いので、ソールの提案通りにオブソル岩石砂漠に向かうことにした。
そして、その後は拠点に戻って準備を整えて、それが済んだ後は全員でオブソル岩石砂漠の探索を進めたのだった。
◇ ◇ ◇
それから時間になって三人と別れた俺達はアドラに会うために竜都ドラガリアに向かっていた。
「五人で遊んだのは初日以来だったか?」
「……うん」
ソールとアッシュは『渡り鳥の集い』のメンバーとして活動していることがほとんどで、二人と会うことはあまりなかったからな。
何だかんだで五人で遊ぶのは初日以来のこととなった。
「今後もこうして遊べれば良いが……まあソールとアッシュ次第か」
ソールとアッシュはギルド側の都合もあるからな。一緒に遊べる機会はそんなに多くはないので、機会があれば積極的に遊んで行きたいところだった。
「まあその話は良い。とりあえず着いたし、中に入るか」
と、そんな話をしながら歩いていると、俺達は目的地であるアドラの屋敷に到着していた。
なので、早速アドラに会うために門番に取り次ぎをお願いすることにする。
「門番さん、少し良いか?」
「何でしょう? ……ああ、あなた方ですか。【炎竜の爪】は手に入りましたか?」
「ああ、何とかな」
口だけでは何とでも言えるからな。俺は証明のために【炎竜の爪】を取り出して見せる。
「……そのようですね。それでは、すぐにお呼びします」
「その必要はないぞ?」
と、門番が呼びに行こうとしたそのとき、アドラが門を飛び越えて現れた。
彼女はそのまま俺達の後ろに着地して、腕を組みながらこちらに鋭い視線を向ける。
「【炎竜の爪】は手に入ったようじゃな」
「ああ」
俺は門番に見せていた【炎竜の爪】をそのままアドラに手渡す。
「ふむ……ちゃんと自力で入手したようじゃな」
「まあそれはな」
協力はありだが、自力で入手するよう言われていたからな。もちろん、ちゃんと自力で入手して来た。
「では、これは返そう」
そして、俺達が【炎竜の爪】を自力で入手したことを確認したアドラは、それをそのままこちらに返却して来た。
「む? 良いのか?」
「別に
「む、言われてみればそれもそうか」
【炎竜の爪】を入手するよう指示した目的は俺達の実力を確認することだからな。
彼女は【炎竜の爪】が欲しかったわけではないので、返却されるのも当然と言えば当然だった。
「それで、これで試練を受けさせてもらえるのか?」
「それでも良いのじゃが、
「ああ」
オブソル岩石砂漠の指定の場所に来るよう言われていたが、その話は忙しくて相手できないということでなしになったからな。
そのようなことは言われてはいたが、結局そこには行っていない。
「では、次はユヅリハの屋敷を目指すが
「む、まだ試験はあるのか……」
「これだけで終わりとは言っておらんぞ?」
「まあそれはそうだが……分かった。ユヅリハ様に一言入れておいた方が良いか?」
文句を言っても仕方がないからな。ここは素直に従っておくことにした。
「ユヅリハには
「分かった。それはそうと、一つ聞きたいことがあるのだが良いか?」
その話はさておき、別件で聞きたいことがあるので、少しそのことについて聞いてみることにする。
「なんじゃ?」
「アドラ様はユヅリハ様と竜王様のどちらに付いているんだ?」
ユヅリハと竜王は敵対関係のようだが、アドラはどちらとも関係があるようだからな。
彼女の立場がいまいち分からないので、そのあたりのことについて聞いてみる。
「……
その質問に対して、アドラは少し考えてからそう答えた。
「……そうか」
「他に聞きたいことはあるかの?」
「いや、特にないぞ」
「では、
「ああ。悪いな、足止めさせて」
「構わん。では、さらばじゃ」
そして、話が済んだところで、アドラは翼を広げて飛び去って行った。
「……いまいち関係性が分からないが……もう少し情報が集まってから考えるか」
彼女達の関係性がいまいち分からないが、今考えても分からなさそうだからな。
気になるところではあるが、今はまだ深くは考えないことにした。
「さて、後はネムカに連絡してから戻るか」
「……うん」
ネムカには【炎竜の爪】を売ることを約束しているからな。
とりあえず、彼女に連絡を入れて、話し合いのために店に向かうことにした。
そして、その後は始都セントラルに戻って、ネムカとの話し合いを終えたところで、その日のゲームプレイを終えたのだった。
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