episode140 風化した武器の完成品
それから一度ログアウトを挟んだ俺達は拠点に集まって話をしていた。
「さて、まずは【古代の刀】のことについて話すか」
「……うん」
「とりあえず、【火炎石】で作った【古代の刀】を見せてくれるか?」
【火炎石】で作った【古代の刀】が次の加工を行える段階になったらしいが、別れたままログアウトした都合上、俺はまだ見ていないからな。
ひとまず、実物を直接見せてもらうことにする。
「……これ」
「ふむ……確かに変わっているな」
受け取って確認してみると、刀は相変わらず錆びているが、刀身からほのかな光を放っていた。
「確か、耐久度を使い切るほど使ってこの状態になったんだよな?」
「……うん」
(やはり、作製にはかなり手間が掛かるな)
耐久度を使い切るほど攻撃して、ようやくこの状態になったらしいからな。風化した武器の作製にはかなりの手間が掛かりそうだった。
「とりあえず、手順通りに加工してみるか」
加工手順は分かっているからな。ひとまず、聞いていた通りに加工を進めてみることにした。
「まずは解体してと……」
俺は鍛冶スキルの『装備解体』を使って、この【古代の刀】を解体する。
「ふむ、できたな」
すると、還元アイテムとして【覚醒した刀】を入手することができた。
「情報通りだな。使う素材は……【火炎石】で良いか」
ここから再度素材を用いて鍛冶をすれば完成だが、素材には最初と同じく【火炎石】を使うことにした。
「では、仕上げといくか」
使う素材も決まったからな。後は完成させるだけなので、早速、作業に取り掛かることにした。
俺は【覚醒した刀】と【火炎石】を炉に入れて、赤熱するまで加熱する。
そして、取り出した【覚醒した刀】の刀身の上に【火炎石】を乗せて、鍛冶用のハンマーで叩いて一つに合成していった。
「……できたようだな」
鍛冶が終わったところで刀を確認してみると、錆びが完全になくなっていて、赤熱するような赤い刀身が輝きを放っていた。
完成したところで、早速その性能を確認してみる。
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【熱刀プロミネンス】
物攻:200
耐久:200
重量:4
空S:0
品質:45
効果:火の付与力、炎熱鉱物、再誕する炎
付与:溜め攻撃強化(微)、連撃強化(中)
Cost:1/15
説明:火炎石を用いて修理された前時代の刀。強力な火の力が宿っている。
【炎熱鉱物】
炎熱溢れる火の力を宿す鉱物。
攻撃に火属性を付与して、攻撃時に火属性の追加ダメージを与える。
【再誕する炎】
かつての輝きを取り戻した武器に宿るは緋色の炎。
攻撃に火属性を付与して、攻撃時に火属性の追加ダメージを与える。
また、火属性攻撃の威力が上昇する。
さらに、攻撃時にHPが回復する。
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「割と適当に作ったが、意外と性能は悪くないな」
素材に使った物が簡単に採れる【火炎石】だったので、性能はそこまで高くないと思っていたが、意外と性能は悪くなかった。
(まあ煉獄火山で採れる素材だし、風化した武器を加工する手間を考えるとこんなものか)
【火炎石】は簡単に採れる素材とは言え、煉獄火山で採れる素材だからな。
風化した武器を加工する手間があることも考慮すると、このぐらいの性能なのは割と妥当そうだった。
「火弱点相手なら使えそうだが、炎竜戦では使えないか」
効果が火属性攻撃に特化した構成になっているからな。
火弱点相手なら非常に有効だが、非常に高い火耐性を持っている炎竜相手には使えなさそうだった。
「それはそうと、『炎熱鉱物』か……」
「……それがどうかしたの?」
「いや、見たことのある効果だと思ってな」
『炎熱鉱物』という効果はどこかで見たことがあるからな。少し思い出してみることにする。
「……ああ、そうだ。【火炎石】を使った武器に付与されるのだったな」
思い出したが、『炎熱鉱物』は【火炎石】を使った武器に付与される効果で、この武器でなくとも付与される効果だ。
自分で作ったことはなかったが、他の店で見たことがあったので、この効果には見覚えがあった。
「となると、『再誕する炎』がこの武器の固有の効果だと思われる効果か」
フレーバーテキストにもそれらしきことが書かれているからな。
『再誕する炎』が風化した武器を使ったことによって発現した、この武器の固有の効果だと思われた。
「それと、少し攻撃力が高いな」
また、シンプルに【火炎石】で作った軽量武器は180ほどだったはずなので、少し攻撃力も高いようだった。
「これなら氷属性の物を作るのもありだが……炎竜戦のためだけに作るのもアレだし、攻撃力的にも微妙か?」
攻撃力が少し高くなる程度だと、今の武器よりも攻撃力が低くなる可能性もあるからな。
作製に手間も掛かるので、今作るのは止めておいた方が良さそうだった。
「まあその話は置いておいて、炎竜戦の話をするか」
「……うん」
風化した武器のことについては今の段階でこれ以上話す必要もなさそうだからな。
その話はここまでにして、炎竜戦についての話をすることにした。
「炎竜戦は爪を破壊して弱体化させて戦うのがセオリーらしいが、俺達はそういうわけにはいかないらしいな」
炎竜は爪を破壊すると一部のスキルが使えなくなり、弱体化するという特性がある。
そのため、まずは爪を狙って破壊するというのが炎竜攻略のセオリーとなっていた。
だが、俺達の目的は【炎竜の爪】の入手だからな。
今のところは【炎竜の爪】を入手したという報告はないし、ユヅハのセリフからも爪を破壊すると【炎竜の爪】が手に入らなくなるのはほぼ確実なので、弱体化なしで倒す必要があった。
「問題は弱体化なしだとどの程度の強さなのかだが……」
「……情報ない」
しかし、今のところは弱体化なしで倒したという報告はないし、それに挑戦したという報告すらないからな。
一応、爪の破壊に失敗して全滅したという報告はあったが、そこに有用な情報はなかったので、実質的に情報がないのも同然だった。
「やはり、一度挑戦してみるべきか?」
「……うん」
戦闘に慣れておいた方が良いことも考えると、実際に戦ってみるのが一番良さそうだからな。
炎竜がいる第五層までの道も分かっているので、ここは一度挑んでみることにした。
「では、準備が整ったら行くか。……と言いたいところだが、その前にネムカのところに行かないとな」
少し聞いておきたいことがあるからな。その前に『猫又商会』の経営する店に向かって、話を聞きに行くことにした。
「リッカはどうする?」
「……待ってる」
「分かった。では、準備でもしながら待っていてくれ」
話は俺一人で問題ないだろうからな。そのままリッカを拠点で待たせて、俺は一人で『猫又商会』の経営する店に向かったのだった。
◇ ◇ ◇
『猫又商会』の経営する店に向かった俺はいつものように彼女達の拠点に案内されていた。
「今日はどんな御用でしょうか?」
「単刀直入に言うと、情報を買いたい」
「何の情報が欲しいのですか?」
「欲しい情報はタイニーフェニックスの好物についてだ」
俺が欲しい情報はタイニーフェニックスをテイムするために必要となる好物だ。
自分で探ってみても良いのだが、聞いた方が早いだろうからな。彼女に聞いてみることにしたのだ。
「なるほど。その情報ですか」
「その情報は持っているか?」
「はい。持っていますよ」
確実に情報を持っているという保証はなかったので、知らなかったら話にならなかったが、それは杞憂に終わった。
「条件は?」
「そうですね……何か話を聞かせていただいてもよろしいでしょうか?」
「ふむ、情報の交換か。何が聞きたい?」
「そうですね……特に指定はしませんので、提供できる情報を話していただけますか?」
「そうだな……では、【炎竜の爪】についての話はどうだ?」
ちょうどこれから取りに行くことだしな。近い内に知られることになると思われるので、この情報について話すことにした。
「【炎竜の爪】ですか?」
「ああ。【炎竜の爪】は爪を破壊せずに炎竜を倒せば手に入ると思われる素材だ」
「……確認はしていないのですか?」
「直接はな。だが、NPCの発言から、それでほぼ間違いないと思うぞ」
入手方法は直接確認はできていないが、ユヅハの発言から条件はそれで間違いないと思われるからな。十分に信頼できる情報だと言える。
「そうですか。……【炎竜の爪】が存在していることは確実なのですか?」
「それは間違いないぞ。エルリーチェの研究所で実物も見たことがあるしな」
二日目にエルリーチェの研究所に行った際に実物を確認しているからな。
【炎竜の爪】が存在していることは確実なので、そこは保証できる。
「そうでしたか。それでは、こちらも情報を開示したいと思います」
「む? これだけで良いのか? 大した情報ではないが」
こちらが提供した情報は【炎竜の爪】が存在していることを保証しただけだからな。
大した情報ではないので、正直対価として見合っていないように思える。
「こちらも大した情報ではありませんので」
「そうか。では、頼んだ」
だが、それを決めるのは向こうだからな。彼女が良いと言っているので、これで交渉成立とすることにした。
「それでは情報になりますが、タイニーフェニックスの好物は火属性の魔法攻撃になります」
「火属性の魔法攻撃?」
「はい。火属性の魔法攻撃を吸い込んで吸収しますので、それで餌付け成功になります」
どうやら、火属性の魔法攻撃を吸収するらしく、それで餌付けができるらしい。
「む、そうだったか。随分と特殊だな」
「そうですね。まあ条件は比較的容易に発見できますが」
「……火属性の攻撃手段を持っていればな」
火属性の攻撃手段を持っていれば気付くこともできるだろうが、俺はそうではないからな。その情報は助かる。
「聞きたいことは以上ですか?」
「ああ。悪いな、いきなり押し掛けて」
「いえ、お気になさらず」
「では、またな」
そして、話を聞き終わった俺はリッカと合流して、そのまま煉獄火山に向かったのだった。
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