episode100 木材と貢献度ポイント
「ふぅ……何とか無事に戻って来られたな」
木材の伐採を終えた俺達は何とか無事にウェスティアに戻ることができていた。
「だね。全滅したパーティもいたみたいだし、やっぱり敵は結構強いよね」
東セントラル森林の敵はそれなりに強く、伐採中に会ったプレイヤーのパーティは普通に全滅していたからな。
警戒した立ち回りをしたのは正解だったと言える。
「とりあえず、納品しに行くか」
「だね」
その話はさておき、本題は木材の納品だからな。ちょうど受付からプレイヤーもいなくなったので、早速、納品しに行くことにした。
「少し良いか?」
「何でしょう?」
「木材を納品したいのだが、良いか?」
「一度納品していただいたことで、参加者としての確認は済んでいますので、以降の納品はそちらの箱に入れていただくだけで構いませんよ」
受付嬢はそう言ってこちらから見て左の方向を手で指し示す。
ここで彼女が示した方向を見てみると、そこには大きな箱が設置されていた。
どうやら、受付を通さなくとも、勝手に納品用の箱に入れて納品してしまって良いらしい。
「そうか。リッカ、クオン」
「……うん」
「分かってるよ」
その話を聞いた俺達はそれぞれで木材を箱に入れて納品する。
「貢献度ポイントは……物資と同じで一つ300ポイントか」
納品したところでポイントを確認してみると、木材は物資と同じで一つ300ポイントのようだった。
「あれ? ポイントは物資と同じなんだね」
「確かにそうだが、効率は違うぞ? 一度に運べる量も違うし、こちらは一時間半あれば往復できるからな」
物資も木材も一つ当たりのポイントは同じだが、物資は一つにつき五枠必要なのに対して、木材は三枠だからな。
木材の方が一度に運べる量が多いので、その分効率が良くなっている。
加えて、ウェスティアからだと、始都セントラルよりも東セントラル森林の方が近いからな。
伐採の手間が掛かるとは言え、時間的にもこちらの方が効率が良くなっている。
「それもそっか」
「それで、クオンはどうするんだ? ここで別れるか?」
動画用の撮影は一人ですると言っていたからな。撮影をするのであればここで別れることになるので、どうするのかを聞いてみる。
「うーん……シャムはこの後も東セントラル森林に行くんだよね?」
「ああ。そのつもりだぞ」
東セントラル森林で木材を入手する方が効率が良いことは分かったからな。俺とリッカはこのまま木材集めを続行するつもりだ。
「じゃあ東セントラル森林の撮影は同行してもらって良い?」
「一人で行かないのか?」
「物資の運搬は一人でも大丈夫そうだけど、森の方はそうじゃないからね」
「まあそれもそうか」
東セントラル森林は難易度が高めに設定されているからな。
あの様子を見た感じだと一人では厳しそうなので、俺達も同行した方が良さそうだった。
「まあ本当はリッカのことを調べようと思ったけど、先に撮影は済ませておきたいからね」
「そうか。……動画は上げていないのか?」
「……『Origins Tale Online』関連の動画はまだ上げてない。編集はしたけど」
「そうだったか」
スケルトンソーサラー戦の動画を上げるとは言っていたが、どうやら、その動画はまだ上げていなかったらしい。
「とりあえず、このまま東セントラル森林に向かおうと思うが、荷物はどうする? 減らした方が効率が上がるとは思うが」
持って行くアイテムを減らせば、その分木材を運ぶことができるようになるからな。
次はそのあたりのことについての話をすることにする。
「減らすアイテムってなると、【矢】とか? 回復アイテムを減らすわけにはいかないよね?」
「回復アイテムも減らせると思うぞ? HP回復用のアイテムはほとんど使わなかったしな」
基本的にはリッカがノーダメージで倒していて、HP回復用のアイテムはほとんど使わなかったからな。
このメンバーであれば、HP回復用のアイテムは一スタックあれば十分だと思われるので、それであれば減らすことができそうだった。
「それもそうだね」
「【矢】と【クラフトマテリアル】も一スタックまで減らして良さそうだな」
戦闘はリッカが中心になるからな。最悪、彼女一人でもどうにかなるので、【矢】と【クラフトマテリアル】も一スタック、即ち九十九個まで減らして良さそうだった。
「【矢筒】が実装されてれば良かったけど、アプデはイベント後だからねー」
「【矢筒】?」
「あれ? 知らないの? 【矢】がリュックの枠を圧迫するっていう声を受けて、次回のアプデで【矢筒】っていう、リュックの枠を使わずに矢を収納できるアイテムが実装される予定だよ」
「そうだったか」
どうやら、今回のイベント終了後に行われる予定のアップデートで、【矢】でリュックの枠を使わずに済むようになるアイテムが実装されるらしい。
まあ確かに俺も【クラフトマテリアル】でリュックの枠を圧迫していて、割と困っているからな。その意見も理解できる。
「【クラフトマテリアル】も同じようになれば良いが……まあ俺にできることはないし、期待して待つしかないか」
運営に要望を出すことぐらいはできるが、逆に言えばできることはそれだけだからな。
他に要望を出す者はいないだろうが、こちらは実装に期待して待つしかなさそうだった。
「まあその話は置いておいて、持って行くアイテムを考えるか」
「だね」
「まず、【矢】と【クラフトマテリアル】を一スタックと伐採用の斧三つは確定で良いな?」
「うん。良いと思うよ」
攻撃に必要な【矢】及び【クラフトマテリアル】と木材の入手に必要な伐採用の斧は必須だからな。このあたりのアイテムは確定で良さそうだった。
「後は回復アイテムだが……【HP回復ポーション】は一スタックで良いとして、問題は【MP回復ポーション】だな」
【HP回復ポーション】は一スタックで十分だが、【MP回復ポーション】の必要数は戦闘数で変化するからな。
必要数を予想しにくいので、持って行く数をどうするのかは悩みどころだった。
「うーん……リュックは二十三枠だから、木材は最大で二十一個、空きは六枠だよね?」
「そうなるな」
「やっぱり、六枠だと厳しいし、木材一個は諦めて、九枠分のアイテムを持って行ったら?」
「ふむ……確かにその方が良いか」
無理をして300ポイントを取りに行くよりも、300ポイントを切って枠に余裕を持たせた方が安定するだろうからな。
その300ポイントもパーティで分割されて一人当たり100ポイントにしかならないので、最大効率は諦めて良さそうだった。
「リッカはどう思う?」
戦闘でメインになるのはリッカだからな。ここは彼女にどうするのかを決めてもらうことにする。
「……それで良い」
「分かった。では、さっさとアイテムの選定を済ませて出発するか」
「だね」
そして、その後は時間の限り木材の運搬を続けて、イベントの一日目を終えたのだった。
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