episode99 木材の採取
「……あったな」
それから順調に森の中を進んだ俺達は、木材を入手可能な木が生えている場所にまで辿り着いていた。
「思ってたよりも近かったね」
「そうだな」
難易度が高めに設定されているとのことなので、もっと奥の方に行く必要があるかと思っていたが、俺達は十分も掛からずに目的の場所に到着していた。
「近くに敵はいなさそうだし、早速、伐採してみるか」
「だね」
周囲を見渡してみるが、敵の気配はないからな。もたもたしていると敵が来るかもしれないので、さっさと伐採を済ませてしまうことにした。
「……警戒はして」
「分かっている」
今は大丈夫だが、伐採時の音で敵が集まって来る可能性があるからな。
襲撃されても対応できるように、心構えはしておくことにする。
「……さて、やるか」
そして、改めて敵の気配がないことを確認したところで、木の伐採を始めた。
「いやー……やっぱり、性能が良い物だと楽だね」
「まあ今回のためにわざわざ作ったからな。そうでなくては困る」
伐採用の斧はロッド部分も含めてクロライト製で、今回のイベントのために作って持ち込んだ物だ。
これまでは高性能な伐採用の斧を使う必要性はあまりなかったが、今回は伐採がメインになることは分かっていたからな。
現段階で一番性能が良いクロライト製の物を作っておいた。
それに、今後も使っていけることを考えると、高性能な物を作っておいて損はないからな。この機会に作ってしまうことにしたのだ。
「これで……せいっ!」
最初に作業が終わったのはクオンだった。
彼女がこれで最後と言わんばかりに大振りで斧を振ると、切った木が近くの木の枝をバキバキとへし折りながら倒れていく。
「早いな」
「まあ器用値は高いからね」
「そう言えば、そんな仕様もあったな」
このゲームでは器用値に応じて採集行動に補正が掛かるからな。
弓の威力を上げるために器用値を上げている彼女は、その影響で伐採が早く済んだらしい。
「……来る」
「……そのようだな」
と、ここで周囲に注意を向けてみると、多数の近付いて来る気配を感じた。
どうやら、木が倒れる音を聞いて、モンスターが集まって来ているらしい。
「リッカ、相手できるか?」
数が数だからな。リッカが相手できなければ退くしかないので、自信のほどを聞いてみる。
「……一旦退く」
「分かった。クオン、退くぞ」
「まだ木を倒しただけで、木材は手に入ってないけど良いの?」
「木材は敵がいなくなるのを見計らって回収すれば良い。急ぐぞ」
切った木をある程度の大きさに切らなければ木材は手に入らないが、そんなことをしている余裕はないからな。
木が消滅することはないと思われるので、ここは一旦退いて頃合いを見て戻って来ることにする。
「分かったよ」
「俺が
俺は遠距離攻撃タイプではあるが、近接攻撃タイプが相手でも『マテリアルウォール』などである程度は対応できるからな。
少なくとも、クオンよりかは対応力があるので、
「……うん」
「では、行くか」
そして、方針が決まったところで、すぐに行動に移った。俺達はリッカを先頭にして、来た道を戻って行く。
「キュッ!」
だが、その途中で俺達の前に三体のドリルラビットが飛び出して来た。
「――どうする?」
「……私が引き付ける。その隙に駆け抜けて」
「その後は?」
それだとリッカを置いて行くことになるからな。リッカ自身はどうするのかを聞いてみる。
「すぐに追い付く」
「分かった。クオン、聞いたな?」
「うん」
「では、行くぞ」
方針は決まったからな。このままその通りに動くことにした。
「――『抜刀剣閃』」
まずはリッカがドリルラビット達に攻撃を仕掛けて、注意を引き付ける。
「キュッ!」
すると、その攻撃を受けて、ドリルラビット達は一斉にリッカに注意を向けた。
「――ここだな。クオン、行くぞ」
「分かってるよ」
その隙を突いて、俺とクオンは素早くその横を通り抜ける。
(リッカは……大丈夫そうだな)
敵の一団を通り過ぎたところで、後ろを振り返ってリッカの様子を確認してみるが、彼女は問題なく敵の攻撃を捌いていた。
だいぶ余裕があるようだし、後は隙を見て離脱するだけなので、心配する必要もなさそうだった。
「――ここ」
と、そんなことを考えていたところで、リッカは隙を見て戦闘を離脱した。
「キュッ!」
だが、そう簡単に逃がしてくれるはずもなく、ドリルラビット達はすぐにリッカを追い掛けた。
(速いな……)
その速度はかなりのもので、敏捷に特化したリッカにも追い付けるほどの速度だった。
「リッカ、補助するぞ」
「――うん。構えて」
「分かった。『物質圧縮』」
ここで俺は『物質圧縮』を使って【クラフトマテリアル】を圧縮して、補助の準備をする。
「――展開して」
「分かった。『マテリアルウォール』!」
そして、リッカがすぐ近くにまで来たところで、『マテリアルウォール』で壁を展開した。
「キュッ⁉」
すると、ドリルラビット達は突然展開された壁を避けることができずに激突して、壁に角が突き刺さって動けなくなった。
「うまく行ったな」
「……うん」
「では、さっさと離れるか」
壁がいつまで持つかどうか分からないからな。他の敵もいないので、このまま離れることにした。
リッカと合流した俺はその場を素早く離れていく。
「とりあえず、ここまで離れれば大丈夫そうだな」
「だね」
十分に距離を取ったところで確認してみるが、敵はこちらのことを見失ったようで、追い掛けて来てはいなかった。
「シャムは【望遠鏡】を持ち込んだんだよね? 持って来てる?」
「もちろん、持って来ているぞ」
俺は【望遠鏡】という遠くを見ることができるアイテムを持ち込んでいて、それを持って来ているからな。
それを使って様子を見てみることにした。
「……どう?」
「とりあえず、先程のドリルラビット達はいなくなっているな」
【望遠鏡】を使って先程戦闘になった場所を見てみるが、そこにドリルラビットの姿はなかった。
「木材がある場所は?」
「ここからは見えないので、もう少し近付く必要があるな」
ここから確認できれば話は早かったが、この距離だと見えないからな。
木を伐採した場所を確認するにはもう少し近付く必要がありそうだった。
「そう。それじゃあ近付いてみる?」
「そうするか」
道に敵はいないようだからな。このまま先程の場所にまで戻ることにした。
俺達は辺りを警戒しながら、歩いて先程の場所まで戻って行く。
「そろそろ見える?」
「確認してみよう」
そして、ある程度移動したところで、【望遠鏡】を使って木を伐採した場所を確認した。
「……敵はいないな」
確認してみたが、そこには誰もいないので、敵は既に解散した後のようだった。
「それなら安心だね」
「いや、まだ近くに潜んでいる可能性はある。警戒はしておけ」
先程まであの場所にモンスターがいたはずからな。まだ近くにいる可能性は高いので、引き続き警戒はしておくことにする。
「それもそうだね。それじゃあ行こっか」
「ああ」
そして、引き続き周囲を警戒しながら、俺達は木を伐採した場所にまで戻った。
「敵は……いなさそうだな」
「だね。で、どうするの? あたしが切った木を木材にする? それとも、切りかけの木を先に切る?」
「先に木を木材にしよう」
どの程度の木材が手に入るかも分かっていないし、木を伐採するとまたモンスターが集まって来るだろうからな。
まずは木を木材にして、手に入る木材の量を確認してみることにした。
「分かったよ」
「リッカは周囲の警戒をしておいてくれ」
加工は二人で十分だろうからな。リッカには周囲を警戒しておいてもらうことにする。
「……分かった」
「では、やるか」
そして、担当が決まったところで、それぞれで作業に移った。
「とりあえず、三等分してみるか」
木の長さは三メートルほどだが、どの程度の大きさにすれば良いのかどうかが分かっていないからな。
とりあえず、一メートルほどの長さになるように切ってみることにした。
俺はクオンと協力しながら、伐採用の斧で三等分になるように切っていく。
「……できたな」
作業は滞りなく進んで、特に何事もなく切断作業は終わった。
「あ、木材として拾えるようになったみたいだよ」
「そのようだな」
確認してみると、切断したことでアイテムとしてリュックに収納することが可能な状態になっていた。
「これ一つで三枠分か……とりあえず、追加で三本切るか」
まだリュックの枠に余裕はあるからな。もう少し木を切って、木材を確保することにした。
「リッカ、クオン、このまま追加で木を切るが、タイミングを合わせてくれるか?」
タイミングを合わせて木を切れば、撤退が一回で済むからな。今度はタイミングを合わせて木を伐採することにした。
「……うん」
「分かったよ」
「では、やるか」
そして、その後はリュックの枠が一杯になるまで木材を集めて、木材を集め終わったところでウェスティアに戻ったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます