episode94 複合弓の作製

 弓のことについて調べ終えてログインした俺は早速、弓の作製に取り掛かっていた。


「さて、まずは素材を決めないとな」


 まず最初にすべきことは素材の選定だった。

 弓は弾力を利用して矢を飛ばす仕組みだからな。弓の本体には弾力のある素材を使う必要があった。


「木材を使うのが無難だろうが、弾力さえあれば単一の金属素材でも行けるか?」


 普通は金属単体で弓は作らないだろうが、原理的には弾力さえあれば問題ないはずだからな。

 実際、現実にはグラスファイバーやカーボンファイバーなど、他の素材の弓も普通にあるようなので、木材に拘る必要はなさそうだった。


「……いや、カーボンファイバーは無理だろうが、グラスファイバーは作れるかもしれないので、試してみるか?」


 カーボンファイバーは工程が複雑なので作製は困難だが、ガラスを繊維状にした物であるグラスファイバーであれば作れる可能性があるからな。

 作れないかどうか試してみるのはありだった。


「……そう思ったが、プラスチック素材はないし、今回は止めておくか」


 時間に余裕があるわけではないからな。グラスファイバーを作るのであれば、プラスチック素材と混合した強度と靭性を高めた物にしたいので、今回は止めておくことにした。


「さて、改めて素材を考えていきたいが、性能も考えると複合弓が良いか」


 木材だと良さげな素材がないからな。現実にも動物の角や金属などの素材で作られた複合弓はあるので、今回はそれらの素材を使った複合弓を作ってみることにした。


「まずは適当な素材で試してみるか」


 まだ一度も複合弓を作ったことがないからな。いきなり本命の物を作って失敗するわけにはいかないので、まずは適当な素材で試してみることにした。


「まずは【オウクの木材】を弓の形に整えてと……」


 まずはベースとなる弓の本体を作るために、【オウクの木材】をナイフで削って弓の形に整えていく。


「……できたな。使う素材は……【ウルフの骨】で良いか」


 ベースとなる弓の本体が完成したところで、次は弓の内側に取り付ける素材を作ることにした。

 俺は【ウルフの骨】を割ってしまわないように注意しながら、のみを使って慎重に骨を削って、弓に合わせて形を整えていく。


「……こんなところか。では、早速接合してみるか」


 そして、パーツが完成したところで、素材を売っている店で買ったにかわを使っての接合を始めた。


「……できたな。とりあえず、これで完成で良いか」


 弓の外側には糸状にほぐした動物の腱を使ったりするらしいが、そんな素材は手元にないからな。

 とりあえず、この弓の本体部分はこれで完成としてしまうことにした。


「さて、次は弦だが……【コッコの羽】から作った糸で良いか」


 今回は試しに作っているだけだからな。弦は一番コストが低い【コッコの羽】から作った糸を使うことにした。


「まずは弦輪を作ってと……これで良いな。後はこれを張って……」


 俺はその糸を使って弓に弦を張っていく。


(やり方も調べておいて良かったな)


 前回は適当に作ったが、今回は弦輪の作り方から弦の張り方まで調べておいたからな。今回はかなり順調に作製が進んでいた。


「ふぅ……できたな。後は中仕掛けを作れば完成か」


 中仕掛けを作っておかないと、耐久度が下がってしまうようだからな。

 俺は矢を番える部分に【コッコの羽】から作った糸を巻き付けて、にかわを使って接着して中仕掛けを作る。


「……これで完成だな」


 そして、最後に中仕掛けを作って、弓を完成させた。

 完成したところで、早速その性能を確認してみる。



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【ウルフ素材の複合弓】

物攻:100

耐久:40

重量:5

空S:1

品質:20

効果:なし

付与:なし

Cost:10/10

説明:オウクの木材で作られた弓をウルフの骨を使って補強した複合弓。中仕掛けは作られているが、元々の糸の耐久度が低いので、あまり耐久度は上がっていない。


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 確認してみると、無事に複合弓として完成していた。


「できているな。では、本命の弓を作るか」


 とりあえず、複合弓として作ることができるのは分かったからな。次は本命の弓を作ってみることにした。


「ベースの弓は【れいぼくの木材】で、組み合わせる素材は【リザードマンの爪】と【クロライトインゴット】、弦は【デヴェスト金属糸】で作ってみるか」


 手元に数がある素材で作るとなると、このあたりが妥当そうだからな。とりあえず、素材の組み合わせはこれで行くことにした。


 ちなみに、【れいぼくの木材】はスピリア荒原に生えている枯れ木を伐採すると手に入る素材で、確認した限りだと【霊魂結晶】や【スケルトンの霊骨】のようにデメリット効果が付くことはない。


 また、【クロライトインゴット】についてだが、前回は弓全体をクロライト素材で作った結果、しなやかさがなくなって失敗してしまったが、薄くすれば大丈夫そうだからな。

 今回はクロライト素材も使ってみることにしたのだ。


「……本当に大丈夫か?」


 そう思ったが、元々しなやかさがない金属だと、薄くしてもうまくいかない可能性があるからな。

 一旦薄くしたクロライト金属を作って、確かめてみることにした。


「インゴットを使う必要はないし、ナゲットを使うか」


 俺は【クロライトナゲット】を炉で熱して、それをハンマーで叩いてシート状に加工していく。

 そして、加工が済んだ金属を水に入れて冷やしたところで、曲げられるかどうかを確かめてみた。


「……硬いな……」


 だが、薄く伸ばされたクロライト金属に力を込めても一切曲がる気配はなく、まるでクロライト金属はしなやかさという概念を知らないかのようだった。


「やはり、組み合わせる素材は【リザードマンの爪】だけにしておくか」


 クロライト金属は弓の素材には向いていなさそうだからな。【クロライトインゴット】を素材にするのは止めておくことにした。


「……さて、やるか」


 作り方は分かったからな。早速、同じ手順で本命の弓を作ってみることにした。

 俺は各種素材を手に取って、それぞれに必要な加工をする。


 そして、無事に本命の弓が完成したところで、その性能を確認した。



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【リザードマン素材の複合弓】

物攻:190

耐久:150

重量:4

空S:2

品質:40

効果:集団の力、秘められた霊威、火の付与力

付与:遠距離攻撃強化(小)、乾いた大地

Cost:0/20

説明:れいぼくの木材で作られた弓をリザードマンの爪を使って補強した複合弓。おおむね適切な加工がされているので、十分に複合弓としての機能を果たしている。



【秘められた霊威】

 攻撃時に無属性の追加の魔法ダメージを与える。


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「これなら十分だな」


 この性能であれば満足してくれるだろうからな。武器の強化を済ませたら、クオンに連絡して取りに来てもらうことにした。


「……さて、これでイベント前にすべきことは済ませたな」


 後はイベントエリアに持ち込むアイテムを用意するだけだからな。これでイベントまではのんびりできそうだった。


「とりあえず、クオンに連絡しておくか」


 そして、クオンに連絡して弓を取りに来てもらった後は、イベント当日までのんびりと過ごしたのだった。

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