episode92 初イベントの概要
俺はメニュー画面を開いて、お知らせからイベントの情報が記載されているページを開く。
「イベントの概要は把握してる?」
「ああ。ざっくり言うと、五日間のイベント期間で東セントラル大橋の修理を手伝って、貢献度ポイントを稼げば良いのだろう?」
今回のイベントは物資を運んで、東セントラル大橋を修理するというものだ。
修理に貢献すると貢献度ポイントが手に入って、そのポイントを消費することで、報酬アイテムと交換することができるようになっている。
その貢献度ポイントの入手方法は、モンスターの討伐、物資の運搬、修理への協力の三つがメインになる。
まずモンスターの討伐に関してだが、イベントエリアのモンスターを討伐すると、モンスターごとに決められた一定の貢献度ポイントが手に入るようになっている。
それ以上の細かい記載はないが、強いモンスターほどポイントが高く設定されているものだと思われる。
次に物資の運搬に関してだが、これには二種類のポイントの稼ぎ方がある。
まず一つは始都セントラルで物資を受け取って、それをウェスティアまで運ぶというものだ。
こちらは始都セントラルとウェスティアを往復すれば良いだけなので、そんなに難しいことはない。
そして、もう一つはフィールドマップ内の指定の場所にある木を伐採して木材を入手して、それをウェスティアに届けるというものだ。
先程の単に物資を運ぶだけのものと比べると、移動と伐採の手間が掛かるが、その分ポイントが高めに設定されているとのことだ。
ただ、伐採に指定されている場所は他の場所よりも強い敵が出没するとのことなので、難易度も高くなっている。
最後に橋の修理への協力だが、こちらは生産系のスキルを使って修理を直接手伝うというもので、生産系のプレイヤーに向けたものになっている。
「シャムはどうするつもりなの?」
「物資の運搬で稼ぐつもりだ」
俺は生産系のアビリティを持っているので、直接修理を手伝うこともできるが、リッカとクオンも一緒だからな。
物資の運搬をしながらモンスターの討伐で稼ぐ方が効率が良さそうなので、そちらでポイントを稼ぐ予定だ。
「そう。持ち込むアイテムは決めてるの?」
「いや、まだだ」
イベントは専用のイベントエリアで行われるが、イベントエリアでは専用の倉庫が用意されて、通常の倉庫にはアクセスできないようになっている。
そのため、イベントエリアではイベントエリア内で集めたアイテムしか使うことができない。
だが、アイテムが何もない状態でスタートするのは厳しいからなのか、最初にイベントエリアに入る際に20スタック分までのアイテムを持ち込むことができるのだ。
ただ、この仕様だと弓などの攻撃にアイテムが必要になる武器だと不利になるからなのか、【矢】などの武器で攻撃するために必要になるアイテムは、例外的にいつでも持ち込むことができるようになっている。
そのため、【クラフトマテリアル】に関しては特に問題ない。
また、イベントエリアで集めたアイテムは、イベント終了後に自動的に通常の倉庫に送られるようになっている。
そのため、集めたアイテムが無駄になることはないので、そこは安心だ。
「まあ候補としては回復アイテムや攻撃アイテム、ピッケルもありか?」
初動の分の回復アイテムや攻撃アイテムは当然のこととして、【ウィンドフォースボム】や【ライトフォースボム】の作製に必要なクリスタル系アイテムは採掘で入手する必要があるからな。
ピッケルを持って行くのも選択肢としてはありだった。
「ただ、東セントラル平原でどの程度の素材が採れるのかが問題だな」
各素材がどの程度採れるのかによって各アイテムの重要度が変わるからな。
それによって持って行くべきアイテムが多少変わってくるので、東セントラル平原の情報が欲しいところだった。
「でも、情報のないエリアだし、それは分からないよね?」
「まあそれはそうだが……」
とは言え、東セントラル平原は未知のエリアで、情報がないからな。結局のところ、考えても意味はなさそうだった。
「……いや、東セントラル平原の情報を得る手段はあるぞ」
そう思ったが、ここで俺は東セントラル平原の情報を得る手段があることに気が付いた。
「え? あるの?」
「ああ。NPCに聞けば分かるはずだ」
プレイヤーは情報を持っていないが、NPCはそうではないはずだからな。NPCに聞けば情報が得られる可能性が高かった。
「……東セントラル平原は南セントラル平原や西セントラル平原とあまり変わらない環境だそうです」
と、ここまで黙って話を聞いていたネムカだったが、その話を聞いて遂に口を開いた。
「む、そうなのか?」
「はい。NPCから聞きましたので」
どうやら、俺と同じことを考えたらしく、NPCから聞いて情報を得たらしい。
「そうだったか。……良かったのか? それを話して」
「聞いたらすぐに答えてくれましたし、伏せておく意味もないと思いましたので」
「そうか」
まあその程度のことで得られる情報だと、情報料を取ることもできないだろうからな。
伏せておくことで得られるメリットもないと判断して、話してくれたらしい。
「他には何か言っていなかったのか?」
「橋を壊したのは黒いドラゴンだそうで、そのドラゴンが暴れていて危険なので、セントラルの東門は閉じられていたそうです。それが原因で橋の修繕も見送られていたそうですが、無事にそのドラゴンの討伐が完了して安全になったので、橋の修繕をすることになったそうです」
「なるほどな。そんな背景があったのか」
このタイミングでのイベントに特別意味があるものだとは思っていなかったが、どうやら、裏ではそんな設定があったらしい。
「となると、イベント終了後にセントラルの東門が解放される可能性が高そうだな」
「そうですね」
「それはそうと、イベントの報酬の中で目玉となるのは【ギルドハーツの宝珠】と【星界のアミュレット】か?」
イベント後の話はさておき、イベントの報酬のリストを確認した感じだと、この二つが目玉のようだった。
ちなみに、それぞれの性能は以下のようになっている。
━━━━━━━━━━
【ギルドハーツの宝珠】
HPの回復量が3%増加する。特殊宝珠。
【星界のアミュレット】
物防:10
魔防:10
耐久:100
重量:1
空S:3
品質:20
効果:星の力
付与:なし
Cost:20/20
説明:星の力が込められたアミュレット。その力は完全には発揮されていないが、それでも十分なほど効果がある。
【星の力】
星の力が装備者に力を与える。
戦闘時、靭力と理力が徐々に上昇する(上限は3%)。
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「【星界のアミュレット】は微妙じゃない?」
「確かにこのままだと微妙だが、気になるのはイベントの報酬で品質を上げられる点だな」
クオンが言うように、このままだと微妙な性能だと言わざるを得ないが、イベントの報酬の中にはこの装飾品の品質を20上げるというものがあった。
そのため、品質を上げることで効果が変化して、より強力な効果になるものだと思われた。
「でも、肝心な効果が分からないよね」
「それはそうだが……まあ貢献度ポイントの集まり次第か」
【星界のアミュレット】に加えて、品質を四回アップさせるためにはかなりの貢献度ポイントが必要になるだろうからな。
必要なポイント数はまだ公開されていないし、どの程度の効率で貢献度ポイントが集まるかも分からないので、貢献度ポイントの集まり具合を見て、行けそうであれば候補に入れるというので良さそうだった。
「他に確認しておくべき点は……イベントエリアではデスペナルティの時間が固定だということぐらいか」
また、通常デスペナルティの時間はその日の死亡回数に応じて増加するが、イベントエリアでは死亡回数に関係なく一時間固定とのことだった。
「……私はそろそろ帰りますが、何か聞きたいことはありますか?」
「いや、今のところは特にないぞ」
「分かりました。それでは、失礼します」
話が一区切りついたところを見計らって、ネムカは俺達の拠点を後にする。
「それじゃあそろそろあたしの武器作ってくれる?」
「分かった。すぐに取り掛かろう」
そして、イベントについての確認が終わったところで、俺はクオン用の弓の作製に取り掛かったのだった。
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