第4章 初イベント

episode91 リッカ用の防具

 少し休んでからログインした俺は早速、作業に取り掛かろうとしていた。


「『浮かび上がるようなふわふわ』付きの【コッコの羽】は用意してあるし、早速やるか」


 『浮かび上がるようなふわふわ』が付与されている【コッコの羽】は、素材が集まり次第作っていたからな。

 他の素材も必要数揃っているので、このまま作業を始めることにした。


「まずは【デヴェスト金属糸】製の物からやるか」


 別にどれからでも良いのだが、とりあえず、頭、腕装備以外の【デヴェスト金属糸】製の物から作ってみることにした。

 俺は『浮かび上がるようなふわふわ』が付与されている【コッコの羽】も織り交ぜながら、【裁縫】で目的の形に加工していく。


「……できたな」


 そして、しばらく作業を続けて、無事に目的の防具を完成させた。


「後は頭装備だな」


 腕装備はネムカに一任しているからな。後は頭装備を作れば、リッカの防具は完成になる。


「これを使うときが来たか」


 俺はそう言いながら【聖角竜のりん】を取り出す。

 リッカの頭装備に使う素材だが、結局【聖角竜のりん】を使うことにした。

 色々と調べてみたが、他に良さそうな素材がなかったからな。当初の予定通りに【聖角竜のりん】を使うことに決まった。


「慎重にやらないとな」


 今回は予備の素材がなく、加工に失敗する可能性もあるからな。いつも以上に慎重に作業を進めることにする。


(まずは形を整えてと……)


 俺は【聖角竜のりん】をのみで削って、慎重に形を整えていく。


(やはり、硬いな)


 【エクスシードスネークの鱗】などの他の鱗素材を使って練習はしたが、【聖角竜のりん】は練習で使った素材よりも硬く、加工が難しかった。


(だが、焦らず慎重に……)


 力を入れ過ぎて、割れてしまったら終わりだからな。時間はあるので、ミリ単位で少しずつ削って、慎重に作業を進めていく。


「……できたな」


 それからしばらく作業を続けて、無事に目的の形である樹枝六花の形に整えることに成功していた。


「後はこれにリボンを付けて……これで良いな」


 そして、最後に『浮かび上がるようなふわふわ』が付与されている【コッコの羽】を素材にしたリボンを付けて、装備品として完成させた。


「おー……流石はシャム、相変わらず器用だね」

「む、いたのか」


 そう言われて振り返ってみると、そこには腰を曲げてこちらを覗き込んでいるクオンがいた。

 集中していて気付かなかったが、どうやら、作業中に拠点に来ていたらしい。


「集中してたみたいだし、話し掛けない方が良いかなって」

「まあそれは間違いないな」


 あれだけ集中しているところでいきなり話し掛けられると、確実に驚いていただろうからな。

 驚いた勢いで割ってしまう可能性は十分にあったので、その気遣いは助かる。


「私もいますよ」

「む、ネムカも来ていたか」


 また、ネムカも拠点に来ていて、椅子に座って作業が終わるのを待っていた。


「手袋はできたのか?」

「はい。こちらになります」


 ネムカは完成した手袋を取り出すと、それをそのままテーブルの上にそっと置く。


「おー……何かキラキラしてるね」


 それを見たクオンは手袋を手に取ると、興味深そうにデザインを確認していく。

 【シルバーコッコの羽】をメインに使って作られた手袋は銀色に輝いていて、入れ口の部分には【メタルローズ】で作られたリングが取り付けられていた。


「まあシルバーコッコの素材をふんだんに使ったからな」

「みたいだね。シャムは見ないの?」

「確認はするが、その前に今作った装備品の強化を先にやらせてくれ」


 まだ先程作った装備品の強化が済んでいないからな。それが済んでから、まとめて確認することにする。


「分かったよ。それじゃあこのまま待っておくね」

「ああ。すぐに終わらせる」


 俺は適当な素材を使って、先程作った防具を強化する。

 そして、強化が済んだところで、それらの防具を持ってテーブルに向かった。


「できたみたいだね」

「ああ。とりあえず、確認してみるか」


 防具が揃ったところで、早速その性能を確認してみることにした。

 全体の性能を確認するために、既知の効果もまとめて確認しておく。



━━━━━━━━━━


【聖角竜のりんの髪飾り】

物防:16

魔防:20

耐久:150

重量:0

空S:1

品質:50

効果:聖なる輝き

付与:浮かび上がるようなふわふわ、疾風の加護

Cost:0/20

説明:ホーリーホーンドラゴンの古くなって抜け落ちた鱗で作られた髪飾り。樹枝六花の形に整えられていて、リボンで装飾されている。古くなって抜け落ちた鱗なので、本来の力は発揮できていないが、それでも十分な魔力が込められている。



【デヴェスト金属糸の衣装】

物防:26

魔防:28

耐久:150

重量:0

空S:0

品質:40

効果:荒廃した守り

付与:浮かび上がるようなふわふわ、万全防御(小)

Cost:0/15

説明:デヴェスト金属糸で作られた衣装。布地は少ないが、金属糸なのでそれなりの防御力がある。



【シルバーコッコの手袋】

物防:14

魔防:16

耐久:120

重量:0

空S:6

品質:100

効果:孤高のぎんけい、稀代の輝き、不朽の金属、究極の光沢

付与:浮かび上がるようなふわふわ、大地を駆ける鶏

Cost:0/20

説明:シルバーコッコの羽から作られた糸で作製された手袋。入れ口の部分にはメタルローズを使用していて、多くの宝珠をめることができるようになっている。



【デヴェスト金属糸のスカート】

物防:22

魔防:23

耐久:130

重量:0

空S:0

品質:35

効果:荒廃した守り

付与:浮かび上がるようなふわふわ、風の盾

Cost:0/15

説明:デヴェスト金属糸で作られたスカート。金属糸製ではあるが、十分に軽いので、ひらひらとしている。



【デヴェスト金属糸の靴】

物防:20

魔防:21

耐久:130

重量:0

空S:0

品質:35

効果:荒廃した守り

付与:浮かび上がるようなふわふわ、回避距離アップ(小)

Cost:0/15

説明:デヴェスト金属糸で作られた靴。靴底にはリザードマンの皮が使われている。



【聖なる輝き】

 ホーリーホーンドラゴンが持つ、聖なる輝き。

 攻撃時に光属性の追加ダメージを与える。

 さらに、光耐性が5%上昇する。


【浮かび上がるようなふわふわ】

 付与コスト:10

 重量が2下がる。


【疾風の加護】

 付与コスト:10

 ダッシュ速度が上昇する。

 さらに、戦闘時に敏捷が徐々に上昇する(上限は3%)。


【荒廃した守り】

 状態異常の効果を軽減する。


【万全防御(小)】

 付与コスト:5

 HPが100%以上のとき、受けるダメージが減少する。


【孤高のぎんけい

 輝きを放つぎんけいは孤高の域に達する。

 クリティカル攻撃成功時に一定時間、物理攻撃力と魔法攻撃力と敏捷が上昇する効果を自身に付与する。

 この効果はクリティカル攻撃に成功するたびに効果が上昇して、最大で十段階まで効果が上昇する。

 この効果は攻撃を受けると効果が一段階低下して、一段階目の状態で攻撃を受けると、効果時間に関係なく解除される。

 さらに、スタミナ消費量が減少して、ダッシュ時のスタミナ消費量が大きく減少する。

 『孤高のぎんけい』の効果は重複しない。


【稀代の輝き】

 稀少種が持つ稀有な輝き。

 戦闘時、全ステータスとクリティカル攻撃の威力が徐々に上昇する(上限はステータスは7%、クリティカル攻撃の威力は+15%)。

 この効果はダメージを受けるとリセットされる。

 さらに、戦闘開始時に一度だけ状態異常を無効にする効果を自身に付与する。

 『稀代の輝き』の効果は重複せず、自身の全ての装備品に付与されている『稀代の輝き』の数に応じて、以下の追加効果を得る。

 二つ以上:HPが100%以上のとき、全ステータスが上昇する。さらに、全状態異常耐性が上昇して、状態異常の効果を軽減する。

 三つ以上:戦闘時の全ステータスとクリティカル攻撃の威力上昇の上限値がステータスは10%、クリティカル攻撃の威力は+25%になる。さらに、戦闘時の全ステータスとクリティカル攻撃の威力の上昇効果がダメージを受けてもリセットされず、全ステータスは5%低下、クリティカル攻撃の威力は10%低下して、効果が継続されるようになる。

 四つ以上:HPが100%以上のときに全ステータスが上昇する効果が強化される。さらに、全状態異常耐性の上昇効果が強化されて、状態異常の効果を軽減する効果も強化される。

 五つ以上:戦闘時の全ステータスとクリティカル攻撃の威力上昇の上限値がステータスは15%、クリティカル攻撃の威力は+40%になる。さらに、戦闘中に六十秒が経過するごとに、一度だけ状態異常を無効にする効果を自身に付与する。


【不朽の金属

 完成された金属質のは不滅であり不朽。

 強化効果が付与されたときに、一度だけ強化効果を打ち消す効果を無効にする効果を自身に付与する。

 この効果は一度発動すると、六十秒は発動しない。

 また、確率で強化効果を打ち消す効果を無効にする(この効果は回数制の強化効果を打ち消す効果を無効にする効果に対しては発動しない)。

 さらに、確率で状態異常及び弱体効果を無効にする。

 加えて、状態異常を受けたときに、その状態異常への高い耐性を自身に付与する。

 『不朽の金属』の効果は重複しない。


【究極の光沢】

 極限まで純粋な状態になった、高純度の金属が放つ美麗なる光沢。

 戦闘開始時に一度だけ弱体効果を無効にする効果を自身に付与する。

 さらに、自身に付与された強化効果の効果量が上昇して、弱体効果の効果量が低下する。

 『究極の光沢』の効果は重複せず、自身の全ての装備品に付与されている『究極の光沢』の数に応じて、以下の追加効果を得る。

 二つ以上:戦闘開始時に加えて、戦闘中に六十秒が経過するごとに一回だけ弱体効果を無効にする効果が自身に付与されるようになる。この効果は二回分までストックされる。

 三つ以上:強化効果の効果量の上昇効果と弱体効果の効果量の低下効果の効果量が上昇する。

 四つ以上:HPが100%以上のとき、確率で状態異常及び弱体効果を無効にする。

 五つ以上:戦闘時に一定時間ごとにHPとMPが回復して、スタミナの回復速度が早くなる。


【大地を駆ける鶏】

 付与コスト:10

 ダッシュ時のスタミナ消費量が減少する。


【風の盾】

 付与コスト:5

 ダッシュ中に受けるダメージが減少する。


【回避距離アップ(小)】

 付与コスト:5

 回避時の最大移動距離が伸びる。


━━━━━━━━━━



「……【シルバーコッコの手袋】の性能がエグいことになってない?」


 その性能を見たクオンが思わずそんな言葉を漏らす。


「弱体効果と状態異常に対する耐性がとんでもないことになっているな」


 『稀代の輝き』による状態異常免疫に加えて、『荒廃した守り』も合わせた状態異常の効果軽減。

 『不朽の金属』による状態異常耐性付与に加えて、弱体効果及び状態異常の無効化と、耐性が豊富だからな。

 弱体効果と状態異常への耐性がかなりのものになっていた。


「もはや、やりすぎと言うかだな……まあ良いか」


 現段階で手にして良いような性能の装備品ではない気がするが、手に入ってしまったものは仕方がないからな。

 そこは気にせずに、ありがたく使わせてもらうことにする。


「『稀代の輝き』と『究極の光沢』には色々と追加効果もあるが……他の素材でも付与される可能性があるということか?」

「恐らく、そうだと思います」


 フレーバーテキストを見た感じだと、『孤高のぎんけい』と『不朽の金属』は専用の効果のようだが、『稀代の輝き』と『究極の光沢』はそうではないようだからな。

 この二つの効果は他の素材でも付与される効果だと思われた。


「とりあえず、装備したらどうだ?」

「……うん」


 性能を確認し終わったところで、リッカは防具を装備していく。


「ふむ、ネムカがデザインしただけあって、良い感じだな」

「ありがとうございます」

「これが代金の二十万ゼルだ。受け取ってくれ」


 ここで俺は依頼料である二十万ゼルをネムカに渡す。


「確かに受け取りました。ところで、イベントに向けての準備は整っていますか?」

「いや、準備は今からするつもりだ」


 イベントの概要を軽く確認しただけで、準備はまだだからな。イベントに向けての準備は今から整えるつもりだ。


「とりあえず、イベントの情報を改めて確認しておくか」


 情報を見ながらの方が準備を進めるには都合が良いだろうからな。ここで改めてイベントの情報を確認してみることにした。

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