episode89 スケルトンソーサラー戦、決着
「少しは成長したみたいね」
最初の頃とは違って、シャムがまともに戦えている様子を見たユヅハはそんなことを呟く。
リッカと違って、シャムは最初の数戦はまともに戦えていなかったが、今回はかなり順調だった。
「今回で終わらせるつもりなのは本気みたいね」
また、今回はかなり戦術を練って来ているようで、それぞれの攻撃に対しての対処方法をきちんと用意していた。
「リッカと違ってセンスはないけど、まあ及第点ってところかしら?」
ここまで来ても戦いにならないようであれば切り捨てるところだったが、この数戦で成長は見られるので、ギリギリ及第点といったところだった。
「まあ今回は期待できそうだし、このまま最後まで見守ってあげましょうか」
そして、最後にそれだけ言うと、ユヅハは観戦に戻ったのだった。
◇ ◇ ◇
「――そこだな。『マテリアルソリッド』」
俺は隙を突いて、中距離から『マテリアルソリッド』で攻撃を叩き込む。
あれから順調に戦闘を進めていて、スケルトンソーサラーのHPは残り一割に到達しそうだった。
(【ライトフォースボム】はもう残っていないが、この調子なら問題ないな)
これまでの戦闘で【ライトフォースボム】は使い切ってしまったが、【ライトボム】はまだ残っているからな。
この調子で削っていけば、問題なく倒せそうだった。
「……時間だな」
ここで『護術・反呪』のバフ効果が切れていることを確認した俺は、素早く杖を投げ捨てる。
(次で終わりそうだな)
この残りHPなら次で削り切れそうだからな。行動パターンにもよるが、次で決着になりそうだった。
「カカッ!」
ここで杖を取り戻したスケルトンソーサラーは落雷攻撃をしようと杖を振り上げる。
(チャンスだな)
魔法陣を展開している間は隙だらけだからな。この隙を突いて攻撃を叩き込んで、決戦と行くことにした。
「『物質圧縮』プラス『マテリアルバスター』。はっ――」
俺は『物質圧縮』で威力を上げた『マテリアルバスター』をスケルトンソーサラーの右腕に叩き込んで、杖を叩き落とす。
「さて、決戦と行こうか? 『マテリアルチェイン』、『護術・反呪』」
そして、すかさずに『マテリアルチェイン』で杖を引き寄せて回収して、計測用のバフ効果を付与した。
(さて、どう来る?)
ここで俺は敵の動きを見極めるために一度動きを止めて、【ライトボム】で攻撃しながら様子を見る。
「カカッ!」
スケルトンソーサラーが放とうとしている攻撃は三属性の魔法弾を放つ攻撃だった。
(一番面倒なのが来たな)
最初と同じように跳んで避けたいところだが、HPが半分を切ったことで発狂モードになっていて、手数が増えているからな。
そのせいで跳んでも避け切れないので、他の方法で避ける必要があった。
(まあ普通にやるしかないか)
速度の違う魔法弾がランダムに飛んで来るので、避けるのはかなり難しいが、楽な方法はないからな。
ここは離れて普通に避けるしかなさそうだった。
(【ライトボム】は使わない方が良いか)
魔法弾は相殺が可能なので、【ライトボム】を使えば少しは楽に回避できるようになるが、個数に余裕がないからな。
【ライトボム】はダメージソースに使いたいので、ここは【クラフトマテリアル】を使った攻撃で相殺することにした。
「そろそろ動かないと――な!」
と、そんな話をしていたところで落雷が来たので、俺はすぐに移動を始めた。
「カカッ!」
「っ! 『マテリアルソリッド』」
狙って魔法弾を打ち消したいところだが、正確に当てて相殺することは難しいからな。
攻撃は当たって相殺できたらラッキーといった程度に適当に撃って、避けることに集中することにする。
(見るべきはこちらに来る魔法弾だけ、と……)
リッカは弾幕ゲームと同じで、こちらに来る弾だけを見ていれば良いと言っていたからな。
それに従って、落雷を避けるために後方に下がりながら、正面の魔法弾にのみ注意を向ける。
(慣れてきたし、これなら避けられそうだな)
これまでは避けようとしてもどうにもならなかったが、リッカのアドバイス通りにしていた結果、ある程度は見えるようになってきたからな。
これなら何とか避けることができそうだった。
「よっ……ふっ……」
俺は落雷を避けるために後退しながら、必要なタイミングで横に跳んで魔法弾を避ける。
「ここだな。『マテリアルソリッド』!」
そして、攻撃が止んだところで、遠距離攻撃で攻撃しながら接近した。
「カカッ!」
スケルトンソーサラーは再度弾幕を張ろうと、魔法陣を展開してくる。
(退くべきか――?)
下がった方が避けやすいからな。攻撃するのを諦めて、一旦退くというのも選択肢としてはありだった。
(いや、攻めるか)
もう攻撃用のアイテムが尽きかけているからな。守りに入っているとアイテムが尽きてしまう可能性があるので、ここはこのまま接近することにした。
「ここで一気に……」
俺は射程範囲に入ったところで、投げられるだけの【ライトボム】を投げ付けて、一気にHPを削っていく。
「カカッ!」
「――これでどうだ?」
ここで魔法陣が起動して魔法弾が飛んで来るが、俺はスケルトンソーサラーに密着するほどの距離にまで接近する。
三属性の魔法弾を放つ攻撃は毎回軌道はランダムだが、自身には当たらないように攻撃を放つようになっているからな。
このようにすぐ近くにまで接近してしまえば、魔法弾に当たることはない。
もちろん、近接攻撃を避けることは難しくなってしまうが、被弾しても耐えられるからな。
このままここで魔法弾をやり過ごしつつ、一気にHPを削っていくことにする。
「カカッ!」
「っ!」
俺は膝蹴りで弾き飛ばされてしまうが、この位置はまだ魔法弾が当たらない範囲なので問題はない。
体勢を立て直したところで、残りの【ライトボム】を一気に投げ付けてHPを削っていく。
(削り切れないか)
そのまま残っていた【ライトボム】を全て使って攻撃するが、それだけではHPを削り切ることはできず、僅かにHPが残ってしまっていた。
「クカッ!」
「っと……」
ここでスケルトンソーサラーは爪を振り下ろして攻撃してくるが、俺はそれをバックステップで躱す。
(『護術・反呪』のバフも切れたし、もう時間もないな)
それはそうと、このタイミングで『護術・反呪』のバフ効果がちょうど切れて、杖を手放さなければならない時間が迫っていた。
「ならば、これでどうだ!」
ここで俺はスケルトンソーサラーの杖を自身の後方に投げる。
「カカッ!」
すると、スケルトンソーサラーはその杖を取りに駆けて行った。
「優先するのは分かるが、それで隙を見せるのはどうかと思うぞ? 『物質圧縮』プラス『マテリアルバスター』!」
俺はその隙を突いて、『物質圧縮』で強化した『マテリアルバスター』で生成した大剣を構える。
「はぁっ!」
そして、杖を回収しようとしているスケルトンソーサラーの背中に大剣での一撃を叩き込んだ。
「カカッ……」
すると、その一撃でスケルトンソーサラーのHPがゼロになって、崩れ落ちるようにして倒れた。
「ふぅ……終わったな」
スケルトンソーサラーが倒れて、討伐が完了したことを確認したところで、足を伸ばして座って息を
「少しはやるみたいね」
と、ここで戦闘が終わったことを確認したユヅハがこちらに歩み寄って来た。
「……まあな」
俺はそれだけ言って、ゆっくりと立ち上がる。
「街までは自力で帰れるわね?」
「ああ」
【ライトボム】と【ライトフォースボム】は使い切ったが、【クラフトマテリアル】はまだ残っているからな。街まで戻るだけであれば特に問題はない。
「それじゃあ私はもう帰らせてもらうわ」
「そうか。では、またな」
「ええ。またいずれ会いましょう」
そして、ユヅハはそう言って足元に魔法陣を展開して光を
「……俺もリッカに連絡してから帰るか」
結果が気になっているだろうからな。ここはリッカに連絡を入れてから帰ることにした。
「……これで良いな。では、帰るか」
そして、リッカにスケルトンソーサラーの討伐が終わったことを伝えるメッセージを送ったところで、ダンジョンを出て街に戻ったのだった。
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