episode87 スケルトンソーサラー戦とイベント
「……やはり、一回では無理だったか」
自分の拠点に戻った俺はそんなことを呟きながらギルド拠点に向かう。
「……お帰り」
ギルド拠点に向かうと、そこには外にいることが多いリッカが珍しく拠点にいた。
「……どうだった?」
「正直言って、倒せる気がしないな」
敵の手数がかなり多く、攻撃を凌ぎ切るのは難しいからな。
リッカと違って防具があるので、多少は攻撃を受けられるが、それでも厳しそうだった。
「……杖奪えば手数減る」
「それは分かっているが、そこに至るまでの過程が厳しいと言っているのだが?」
スケルトンソーサラーは杖がなくなると一部のスキルが使えなくなるようで、杖を失うと手数は減るが、そこに至るまでの過程が厳しい。
それに、杖は一度奪えば良いというわけではないからな。それもあって、何かと厳しいことに変わりはなかった。
「……頑張るしかない」
「まあそれはそうだが……やるしかないか」
今回はリッカは戦闘に介入できないからな。俺自身の手で何とかするしかないので、彼女の言うように頑張るしかなさそうだった。
「……方針は?」
「そうだな……とりあえず、もっと火力を上げた方が良いな」
火力が上がれば戦闘時間を減らすことができるからな。戦闘時間を減らせれば、それに伴って事故率も減るので、戦闘の安定化にも繋がる。
なので、現段階で持て得る限りの手段を使って、火力は上げておきたかった。
「……どうするの?」
「【光魔法】を習得して、【ライトボム】を作るというのはありだな」
スケルトン系のモンスターの弱点は光属性だからな。
【光魔法】を習得すれば【ライトボム】を作れるようになるはずなので、【光魔法】を習得するという選択肢はありだった。
「他は……魔法道具の開発もありだな」
強力な魔法道具を開発できれば、大きな武器になるだろうからな。魔法道具の開発を試みるのも中々良さそうだった。
「後は……料理の利用ぐらいか?」
料理というのは、数時間単位の長時間のバフ効果が付与されるアイテムで、使用すると料理ごとに異なったバフが付与されるというものだ。
そこまで効果は大きくないが、ないよりはマシだからな。大きくコストが掛かるわけでもないので、とりあえず、料理は利用した方が良さそうだった。
ちなみに、料理のバフ効果が適用されている間に料理を使うと、料理によるバフは上書きされるようになっているので、料理のバフを複数付与することはできないようになっている。
「まあそんなところだな。後は何度か挑戦して慣れるしかないな」
あれだけの手数の攻撃を捌くにはプレイヤースキルが必要で、戦術だけではどうにもならないからな。
俺はリッカのようにあれを捌けるほどのプレイヤースキルはないので、何度か挑戦して慣れるしかなかった。
「……そう。必要な物あれば、取ってくる」
「そうか。まあ必要であれば頼むことにしよう」
「……うん。……録画した?」
「ああ。しておいたぞ」
リッカに戦闘の様子を録画するように言われていたからな。先程の戦闘はちゃんと録画してある。
「……見せて」
「分かった」
俺はそのままメニュー画面を開いて、先程の戦闘の録画をリッカに見せる。
「……ここ」
と、録画を見せていると、リッカは気になることがあったのか、録画を一時停止して何かを指摘しようとしてきた。
「む、何だ?」
「……この雷魔法は対象を決定した時点で攻撃範囲が確定してる。モーションに入った時点で動いて。すぐに範囲外に行けば、攻撃できる。それと、初回の接近時はこの雷魔法確定。たぶん、使える状態で接近されると確定で使う。クールタイム中なら代わりに薙ぎ払い。薙ぎ払いは確定では使わない。確定ならハメれたけど、それを防ぐために……」
「待て、矢継ぎ早にそう言われても困る。順番に説明してくれ」
それだけ矢継ぎ早に言われると、頭に入って来ないからな。
一つずつ順番に説明してもらわないと困るので、一度話を止める。
「……めんどい」
「伝わらなければ意味はないぞ?」
「むぅ……」
だが、それを聞いたリッカは不満そうに頬を膨らませた。
「……これもコミュニケーション能力を上げるための訓練の一環だと思ってくれ」
「…………。……分かった」
それを聞いたリッカはしばらく黙り込んだ後、渋々それを了承する。
(今回は話は長そうだが、素直に聞いた方が良いか)
リッカであれば至らなかった点を指摘して、改善案を導き出してくれるだろうからな。
ここは二人で話し合って、戦術を考えていくことにした。
そして、その後は二人で話し合いながら、俺に最適な戦術を考えていったのだった。
◇ ◇ ◇
翌日、今日も俺はスケルトンソーサラー戦のことについて考えていた。
あれから何度か挑戦したが、まだ討伐には成功していなかった。
(とは言え、慣れて来てはいるし、何とかなりそうではあるな)
しかし、少しは慣れて戦えるようになったので、この調子で行けば何とか討伐はできそうだった。
(ただ、問題は間に合うかどうかだな)
だが、問題は期限に間に合うかどうかだった。
着実に進んではいるが、俺には期限があるからな。期限がなければいつか倒せるだろうが、そうではないので、それに間に合わなければならない。
「やっほー、シャム。どうしたの?」
と、そんなことを考えていたところで、俺は何者かに背中を強く叩かれた。
「……クオンか。どうした?」
振り返って確認してみると、そこにはクオンが立っていた。
どうやら、リッカがギルド拠点への許可を出して、俺達のギルド拠点に入って来ていたらしい。
何か用があるようなので、ひとまず、用件を尋ねてみる。
「イベントの話をしようと思ってね。シャムもイベントのこと考えてた?」
用件はイベントのことについてだった。ゲーム内のお知らせで、次のイベントの情報が出ていたからな。どうやら、そのことについて話しに来たらしい。
「いや、別件で急ぎの案件があってな。そちらのことを考えていた」
俺にはスケルトンソーサラーのソロ討伐という、やらなければならないことがあるからな。
イベントの情報は軽く確認しておいたが、準備に時間は掛からなさそうだったので、そちらのことは後回しにしていた。
「ふーん……そうなんだ。イベントの情報は確認した?」
「軽くな。それで、話は?」
「一緒にパーティを組んでイベントに参加しない? そしたら、一緒に参加できるでしょ?」
イベントは専用のイベントエリアで行われるが、混雑することを想定してか、いくつかのサーバーに別れるようになっている。
そのサーバーの決定方法についてだが、サーバーはイベントエリアに最初に行ったときにランダムに決定される。
だが、パーティを組んでイベントに参加すると、そのパーティのメンバーは全員が同じサーバーに送られるようになっているのだ。
なので、一緒のサーバーでイベントに参加するために、パーティを組むことを提案してきたらしい。
「それは別に構わないぞ」
こちらとしては特に問題はないからな。俺は二つ返事でそれを了承する。
「分かったよ。イベントは開始と同時に参加するの?」
「そのつもりだぞ」
「じゃあその時間に集まるってことで良い?」
「ああ。それで良いぞ」
「分かったよ。それはそうと、一つ頼みたいことがあるんだけど良い?」
イベントの話だけかと思っていたが、クオンは他にも何か用があったらしく、頼み事をしてきた。
「内容次第だが、基本的には良いぞ」
「弓を作ってくれない? できるだけ強いの」
依頼の内容は難しいものではなく、弓の作製だった。
「ふむ……あまり試行錯誤する時間は取れないが、それでも良いか?」
俺はスケルトンソーサラーのソロ討伐をしなければならないからな。
そちらを優先することになるので、それでも良いかどうか確認を取る。
「うん、良いよ。それじゃあお願いねー」
そして、話がまとまったところで、クオンは拠点を出て行った。
「……さて、俺はスケルトンソーサラー戦のことを考えるか」
デスペナルティの時間もそろそろ切れるからな。その後はスケルトンソーサラー戦に向けての準備を進めたのだった。
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