episode73 金属糸
「……そろそろ再開するか」
もう十分休んだからな。そろそろリッカ用の防具の素材を考えていくことにした。
「やはり、最有力候補はこれか?」
そう言いつつ俺が取り出したのは【ハンターバードの羽】だった。
手元にある軽い素材の中で、一番性能が良いと思われるのがこれだからな。今のところはこれが最有力候補だ。
「ただ、いくら軽いとは言っても、重量を二以下に抑えられるかと言われるとな……」
手袋や帽子であれば問題ないだろうが、他の部位は面積が広かったり、他の素材も必要になったりするからな。
いくら軽い素材でも、重量を二以下に抑えるのは厳しそうだった。
「とりあえず、糸状に加工するか」
防具を作るにしても、金属糸を作るにしても、糸状に加工しないと話が進まないからな。
まずは【ハンターバードの羽】を糸状に加工することにした。
俺は複数枚の【ハンターバードの羽】を錬金板に乗せて、それらをバラしてから接合するイメージで糸状に加工していく。
「……できたな」
すると、あっさりと加工は終わって、無事に糸素材を得ることができた。
「どうせ使うことになるだろうし、まとめて作っておくか」
これだけでは足りないし、どうせ糸を経由して防具を作ることになるからな。
ここは先に全ての【ハンターバードの羽】を糸状に加工してしまうことにした。
俺は手元にある【ハンターバードの羽】を全て錬金板の上に乗せて、一気に加工していく。
「……これで良いな」
意外にも加工はすぐに終わって、アイテム数にして十個分の糸ができた。
「羽が五個につき一個か……。これだと足りないし、また集めに行くことになりそうだな」
どう考えてもこの個数では足りないからな。
これで作るとなると、追加で集めに行くことになりそうだった。
「とりあえず、金属糸の作製を試してみるか」
重量次第では金属糸も候補になるからな。早速、作製を試してみることにした。
「まずは【コーラルアインゴット】だな」
性能的にはクロライトが一番良いだろうが、失敗すると痛いからな。
まずは失敗しても損害の少ない【コーラルアインゴット】で試してみることにした。
「……と言いたいところだが、糸一個につきインゴット一個はどう考えても多いよな……」
分量的に考えて、糸一個につきインゴット一個だと、どう見ても過剰だからな。
ここはインゴットを分割してナゲットにして、そちらを使うことにした。
「錬金で分割できたはずだが……こうか?」
【コーラルアインゴット】を錬金板に乗せて錬金すると、分割されて十個の【コーラルアナゲット】になった。
「できたな。では、やるか」
早速【コーラルアナゲット】一個と先程作った糸一個分を錬金板に乗せて、合成を試みる。
「おわっ⁉」
だが、素材から黒煙が上ったかと思うと、ボンと小さな爆発が起こって、錬金に失敗してしまった。
「……素材の相性が良くなかったのか?」
合成を始めると、すぐに黒煙が上り始めていたからな。
何となくではあるが、素材の相性が良くなかったように感じる。
「それなら、他の素材を試すか」
素材の相性が悪かったのであれば、他の素材を試せば良いだけの話だからな。
今度は【デヴェストナゲット】を作って、そちらで試してみることにした。
「まずはナゲットを作ってと……これで良いな。後はここに糸を乗せて……」
俺は先程と同じ手順で作業を進めていく。
(今度は順調だな)
すぐに黒煙が上り始めた先程とは違って、今度は順調に合成作業が進んでいた。
「……できたな」
そして、そのまま合成は終わって、無事に目的の金属糸が完成していた。
「確認してみるか」
これで問題ないとは思うが、一応できているかどうかを確認してみる。
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【デヴェスト金属糸】
品質:30
効果:なし
付与:なし
説明:ハンターバードの羽製糸にデヴェスト金属を合成することで作られた金属糸。金属糸としては安価なので、一般的にも手軽な素材として広く使われている。
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「ふむ、問題ないな。この量から察するに、手袋を作るのに必要な数は二個といったところか」
とりあえず、この量であれば二つあれば手袋を作ることができそうだった。
「ただ、できれば腕も覆う手袋にしたいし、少々悩みどころだな」
だが、それはあくまでも手だけを覆う手袋を作る場合の話だ。
こちらとしては腕も覆うタイプの手袋を作りたいので、必要量はそれよりも多くなる。
もちろん、理由もなく腕も覆うタイプの手袋にしようとしているわけではない。
そのようなタイプの物にしようとしている理由は二つある。
一つ目の理由は防具で覆われている部分で攻撃を受けた場合、ダメージが軽減されるという仕様があることだ。
そのため、できるだけ体を覆った方が有利になるので、腕も覆うタイプの手袋にしようと考えている。
そして、二つ目の理由は胴装備を軽量化を狙うことだ。
手袋で腕を覆うことで、胴装備に袖を付ける必要がなくなるからな。
一番重くなる胴装備の軽量化は課題の一つなので、何気に重要だ。
「まあ作ってから考えるか」
実際に作ってみないことにはどの程度の重量になるか分からないからな。
とりあえず、作ってみてからどうするのかを考えることにした。
「必要量は……六個といったところか? とりあえず、作るか」
二の腕まで覆うとなると、六個ほど必要になりそうだからな。
追加で五個の【デヴェスト金属糸】を作製していく。
そして、それができたところで、そのまま六個の【デヴェスト金属糸】を使って手袋を作製した。
完成したところで、早速その性能を確認してみる。
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【デヴェスト金属糸の手袋】
物防:20
魔防:18
耐久:150
重量:4
空S:0
品質:30
効果:なし
付与:なし
説明:デヴェスト金属糸で作られた手袋。二の腕まで覆う作りになっている。
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「重いな……」
思い通りに完成したは良いが、重量をオーバーしてしまっていた。
「肘までの長さにすれば行けるか?」
これで重量が四だと考えると、半分の面積にすれば二以下になるだろうからな。
肘ぐらいまでの長さにすれば何とかなりそうだった。
「一度解体して作り直してみるか」
解体して素材に還元すれば、肘までの長さで作り直せるぐらいの素材は戻って来るだろうからな。
ここは一度解体して、肘までの長さで作り直してみることにした。
「ふむ、四個戻って来たな」
解体してみると、四個の【デヴェスト金属糸】が還元された。
俺はその素材を使って、そのまま肘までの長さで手袋を作り直す。
「重量は……二か。これなら重量は問題ないな」
これであれば、『浮かび上がるようなふわふわ』を付与すれば重量がゼロになるからな。
とりあえず、手袋はこれで良さそうだった。
「となると、やはり問題は胴と腰だな」
胴装備と腰装備はどうしても面積が大きくなるからな。
この二部位をどうするのかが一番の問題だった。
「面積が少ないデザインにするしかないか……」
軽い素材を使おうと、重量を二以下にすることはできなさそうだからな。
ここは面積を減らしたデザインにするしかなさそうだった。
「素材も必要だが、とりあえず、リッカが合流するまでは防具のデザインと考案と他の金属糸の作製を試してみるか」
糸素材が不足しているが、近い内にリッカは合流するだろうからな。
ここは防具のデザインの考案と他の金属糸の作製で時間を潰して、リッカが合流してから素材を取りに行くことにした。
「……と言ったは良いが、俺はデザインなんてしたことがないからな……。……デザインを依頼した方が良いか?」
このまま防具のデザインに移りたいところだったが、俺はデザインをしたことがないからな。
適当でも良い気はするが、センスがないと文句を言われても面倒なので、デザインを依頼するというのも良さそうだった。
「『猫又商会』に依頼してみるか」
ネムカは考えられたデザインをされた服を着ていたからな。
『猫又商会』であればデザインの依頼ができそうなので、彼女達に依頼することにした。
「一言連絡は入れておくか」
連絡しておいた方がスムーズに事が運ぶだろうからな。
彼女達とは連絡が取れるので、ここは一言連絡を入れてから向かうことにした。
そして、その後はネムカにメールで連絡を送ってから、『猫又商会』の経営する店に向かったのだった。
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