episode70 スピリア遺跡
一度ログアウトを挟んで、本日二度目のログインをした俺達は、ストーンゴーレムがいるスピリア遺跡に向かっていた。
「……ここか」
道中では特に問題も起こらず、俺達は無事にスピリア遺跡に到着することができていた。
「できれば今回で済ませたいが、まあ大丈夫か」
スピリア遺跡はスピリア荒原の中心から山に突き当たるまで真っ直ぐと南に行った場所にあるので、闘都コロッセオスからもイストールからも遠く、来るのが少し面倒だからな。
できれば一回で用事は済ませてしまいたかった。
「リッカも準備は良いな?」
「……うん」
「では、行くぞ」
そして、準備が整っていることを確認したところで、俺達はスピリア遺跡に足を踏み入れた。
「さて、入ってみたは良いが……何と言うか、あまりダンジョンという気はしないな」
洞窟のような閉鎖空間とは違って、空も見えていて広々としているからな。
森のように
「ふむ……少し調べてみるか」
ここで俺は足を止めて、周囲の状態を確認して詳しく調べる。
「どうやら、ここは元々街だったようだな」
そのほとんどが崩れ去ってしまっているので、建造物の跡はほとんど残っていない。
だが、建物の基礎だったであろう部分や、水路だったと思われる堀は残っているので、この場所は元は街だったと思われた。
「……遺物もある?」
「可能性はあるな」
色々とありそうな遺跡だからな。【古代術式】のレベルアップの対象になる遺物がある可能性は高そうだった。
「とりあえず、目的のモンスターを探すか」
「……うん」
今回の目的は【ストーンゴーレムコア】の入手だからな。まずはその目的の達成のために動くことにした。
「……いたな」
探してみると、すぐに目的のモンスターは見付かった。
そこにいたのはストーンゴーレムという、体長が三メートル以上ある石でできた人型のモンスターだった。
「確か、胸にあるコアに攻撃しないと、まともにダメージが通らないのだったよな?」
「……うん」
ストーンゴーレムはコア以外の部位は耐性が非常に高く、ほとんどダメージが通らないらしいからな。
基本的にはコアのみを狙って攻撃することになる。
「攻撃力も高いらしいが……まああまり関係ないか」
また、攻撃が単調な代わりに攻撃力が高いらしいが、リッカはどうせ一撃だし、俺は後衛だからな。
そこは特に問題にならなさそうだった。
「いつも通りで良いな?」
「……うん。行く」
リッカはストーンゴーレムがこちらを見ていないタイミングで物陰から出て、ゆっくりと接近する。
「はっ……」
そして、間合いに入る直前に一気に距離を詰めて、先制攻撃を仕掛けた。
「『マテリアルソリッド』」
それに合わせて俺も攻撃を仕掛ける。
「ゴゴ……!」
ストーンゴーレムは振り返って腕を振り下ろすが、リッカはそれを横に跳んで躱した。
振り下ろされた腕は地面を強く叩き付けて、その衝撃によって割れた床の石片が飛び散る。
「――遅い」
そして、攻撃を躱したリッカはそのままコアを狙って攻撃した。
(この調子なら問題なさそうだな)
聞いていた通りに攻撃は単調なようで、リッカであれば避け続けることができるので、このまま攻撃し続ければ倒せそうだった。
「――終わり」
そして、そのまま着実にHPを削っていって、最後にリッカが抜刀攻撃でトドメを刺した。
「この調子なら大丈夫そうだな」
攻撃は避けやすいし、コア部分への攻撃も特に問題ないからな。
とりあえず、ストーンゴーレム狩りは問題なく行えそうだった。
「さて、肝心な【ストーンゴーレムコア】は……ドロップしていないな」
ドロップ品を確認するが、ドロップしていたのは【ゴーレムストーン】だけで、目的の【ストーンゴーレムコア】はドロップしていなかった。
「……コアはレアドロ」
「む、そうだったか」
どうやら、【ストーンゴーレムコア】はレアドロップだったらしく、残念ながら今回はドロップしなかったらしい。
「さて、めぼしい物はないし、狩りを続けるか」
この辺りには特に何もなさそうだからな。
とりあえず、このまま適当に探索しながらストーンゴーレム狩りを続けることにした。
◇ ◇ ◇
それから俺達は探索を続けながらストーンゴーレム狩りを続けていた。
「さて、【ストーンゴーレムコア】は集まったが、どうする? まだ探索するか?」
これまでの狩りで【ストーンゴーレムコア】は必要数集まったが、ダンジョンの攻略は終わっていないからな。
目的は既に達成しているのでこのまま帰っても良いのだが、どうするのかを聞いてみる。
「……続ける」
「分かった。このまま隙間なくマップを埋めていくということで良いな?」
「……うん」
ここまで入口から順番にマップを埋めていたからな。このまま同じように探索を続けることにした。
「……む? 何だあれは?」
と、ちょうどこのダンジョンの中心付近に来たところで、気になる物を発見した。
大きな建物だったと思われる跡があるが、気になったのはそれではない。
気になったのはそこにある両開きのハッチのような物だ。
「……見る」
「そうだな」
この距離ではよく分からないからな。近付いて詳しく見てみることにした。
「何と言うか、ここだけ不自然だな」
他の場所とは違って、このハッチだけが綺麗に残っているからな。
崩壊した遺跡と化している場所の中心にあるということもあって、異質な印象を受ける。
「この先の調査もしてみたいところだったが……取っ手がないな」
ハッチを調べてみるが、どこにも取っ手がないので開くことができなかった。
一応、力を込めて押してみるが、びくともしない。
「……術式?」
だが、取っ手がない代わりとは言っては何だが、ハッチの表面には魔法陣のようなものが刻まれていた。
「魔法で開けるのか?」
他にそれらしきものは見当たらないからな。
このハッチは何らかの魔法で開けるものだと思われた。
「解析は……できないか」
魔法陣を詳しく調べられないかとあれこれしてみるが、見ても何も分からないし、何をやってもダイアログが表示されないので、解析することはできなかった。
「壊したり、周りを掘って侵入したりは……」
「……システム的に無理」
「だよな」
ゲームシステムという名の絶対の理を越えることはできないからな。
現段階ではこの先に進むことはできないので、今回はきっぱりと諦めることにした。
「とりあえず、これで探索は半分終了だが、この様子だと他には何もなさそうだな」
ここまでずっと変わり映えのしない景色が続いているし、中心にこんな怪しい物もあるからな。
この様子だと他の場所には何もなさそうだった。
「……ダンジョンは完全攻略したい」
「まあそうだな」
できるだけダンジョンは完全攻略したいからな。攻略はこのまま続けることにした。
「さて、そろそろ探索を再開して……む?」
と、探索を再開しようとしたところで辺りを見回すと、南方向に敵だと思われる影を発見することができた。
(ストーンゴーレム……ではなさそうだな)
一見するとストーンゴーレムのように見えるが、よく見るとそれよりも少し大きく、普通のストーンゴーレムにはないような物が装備されていた。
この距離では詳しくは分からないが、何となく強そうな雰囲気を醸し出している。
(モンスター名ぐらいは分かるか?)
この距離でもデータは表示できそうだからな。
ひとまず、それができないか試してみることにした。
「エンシェントゴーレム――プロトタイプか……確か、ストーンゴーレムのレアモンスターだったな」
確認してみると、そのモンスターは「エンシェントゴーレム――プロトタイプ」というモンスターだった。
このモンスターはストーンゴーレムのレアモンスターで、ソールの話によると、このエリアの適正レベルではまず太刀打ちできないとのことだ。
「どうする?」
「……戦う」
「分かった。タイミングはそちらに任せる。俺はそれに合わせよう」
先に仕掛けるのはリッカだからな。
戦闘開始のタイミングは彼女に任せて、俺はそれに合わせることにする。
「……行く」
そして、タイミングを見計らってリッカが駆け出すと、エンシェントゴーレム――プロトタイプとの戦闘が始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます