episode67 南セントラル平原の隠しエリア
サウシアの街を後にした俺達はエルリーチェに教えられていた隠しエリアがある場所に向かっていた。
「さて、この先が例のエリアらしいが……崖だな」
教えられていた場所に着いたは良いが、そこにあったのはそびえ立つ崖だった。
まあ高原地帯と言っていたし、何より隠されたエリアだからな。簡単には辿り着けないか。
「登ろうと思えば登れるだろうが……登れるようになっているよな?」
「……システムの壁はない」
それを聞いたリッカは崖を触って、そんな言葉を返してくる。
「そうか。落ちたら落下ダメージで即死だろうし、慎重に行くか」
「……うん」
そして、慎重にルートを探りながら崖登りを始めた。
「敵はいないようだし、慎重に行けば問題なさそうだな」
辺りを見回して確認してみるが、敵は見当たらないので、慎重に進めば何とかなりそうだった。
「リッカ、大丈夫か?」
「……うん」
ここでリッカの様子を確認してみるが、問題なく付いて来ていて、この調子なら崖を登り切るのに時間は掛からなそうだった。
そして、そのまま慎重に崖を登り続けて、何事もなく崖を登り切ることができた。
「ふぅ……何とか登り切れたな」
「……うん」
「さて、ここは……草原のようだな」
崖を登り切ったところで確認してみると、そこには数センチメートルの高さの草が生い茂った草原が広がっていた。
「……そこそこ広い」
隠しエリアなので狭いものだと思っていたが、ある程度の広さがあるようだった。
見たところ、五百メートル以上は奥に続いている。
「それはそうと、あれは何だ?」
左手側を見てみると、そこには一・五メートルほどの高さで浮く白い光球があった。
見たところ、ダンジョンの脱出ポイントと同じ物のようだが、ここはダンジョンではないはずだからな。
あれが何なのかがいまいち分からなかった。
「……調べる」
「まあそれが良いか」
調べれば一発で分かるはずだからな。考える必要もないので、近付いて調べてみることにした。
【地上に戻りますか?】
そして、近付いて調べてみると、そのようなメッセージが表示された。
どうやら、調べることで崖の下まで転移することができるらしい。
「帰りのことも考えていたが、その心配は無用だったか」
崖を降りるのはかなり手間だからな。
それを考慮して、下まで転移できるポイントを設置してくれているらしい。
「とりあえず、適当に狩ってみるか」
「……うん」
これ以上は特に気になる物もないので、早速狩りを始めることにした。
「コッコを優先して倒すということで良いな?」
「……うん」
俺達の目的は品質が100の【コッコの御守り】を作製することだからな。
基本的にはコッコのみを狙って狩りをすることにした。
「む、ちょうどあそこにコッコがいるな」
辺りを見回してみると、コッコはすぐに見付かった。
「……バフ掛かってる」
だが、そのコッコには全ステータス強化のバフが掛けられていた。
「そう言えば、通常よりも強いと言っていたな」
エルリーチェはここで出現するモンスターは普通よりも強いと言っていたが、どうやら、それはこういうことだったらしい。
「……私が行く」
「分かった。俺は後ろで構えておこう」
バフの効果量が分からないからな。
まあそんなに強くはないと思うが、念のために俺は警戒して構えておくことにする。
「――『居合斬り』」
リッカは気付かれないようにゆっくりと接近して、間合いに入った瞬間に居合斬りでコッコを斬り裂く。
「コケッ……」
すると、コッコのHPは一撃でゼロになって、ばたりと倒れた。
「特に問題なさそうだな」
強化されているとは言っても、最初のエリアのモンスターだからな。
案の定大したことはなかったので、狩りに関しては特に問題なさそうだった。
「では、別れて狩りをするか」
「……うん」
この様子なら俺一人でも問題なく狩りができるだろうからな。
その後は別れて各自で狩りを続けたのだった。
◇ ◇ ◇
それからしばらく狩りを続けて、リュックが一杯になったところでリッカと合流した。
「そちらはどうだ?」
「……もう終わってる」
「そうか。一応、見せてくれるか?」
ドロップがどんな感じだったのかを確認しておきたいからな。
リュックの中身をこの場で見せてもらうことにした。
「……うん」
許可を得たところで、早速その中身を確認していく。
「ふむ……やはり、高品質品のドロップは十五から二十回に一回といったところか」
基本的にここでのドロップ品の品質は50前後なのだが、たまに80前後でドロップすることがあった。
その確率は五パーセントから七パーセントといったところで、確率はそこそこ低めといったところだった。
「レアモンスターであるシルバーコッコの出現率も高かった気がするが……まあこの数では何とも言えないか」
たまたま偏っただけの可能性もあるからな。
この数では断言することができないので、レアモンスターの出現率についてはまだ結論を出さないでおく。
「……続ける?」
「いや、もう帰るぞ」
品質が低い物を捨てて続行するという選択肢もあるが、まだ必要量が分かっていないからな。
必要量を見積もってから集めた方が効率的なので、ここは一旦帰ることにする。
「……そう。また来るの?」
「いや、その予定はない。わざわざ俺達で集める必要もないからな」
別に自力で集める必要もないし、俺達は他のことをしていた方が効率が良いだろうからな。
ここで手に入る俺達に必要なアイテムは、他のプレイヤーに集めてもらうつもりだ。
「……ここのこと公開するの?」
「公開と言うか、情報を売るといったところだな」
もちろん、タダで教えるつもりはない。ここの情報は店の商品として販売するつもりだ。
「……勝手に広められる」
「別にそれは問題ない。むしろ、好都合だ」
情報料はおまけのようなものだからな。俺達から得た情報を広められて、情報料が取れなくなる分については問題ない。
重要なことは多くのプレイヤーに知ってもらうことと、俺達がその情報の発信源であることが知られることだ。
「……詳しく」
「俺達がこの情報を秘匿するメリットよりも、多くのプレイヤーにこの情報が渡ることによるメリットの方が大きいということだ。隠しエリアの存在が知られれば探すプレイヤーも現れるだろうしな」
「……独占しなくて良いの?」
「この情報を独占しても、他の隠しエリアを見付けられなければ意味がないからな。探してもらった方が良いとは思わないか?」
どこにあるのかも分からない隠しエリアを探すのは手間だからな。
それならば、隠しエリアの存在についての情報を広めてしまって、他のプレイヤーに見付けてもらった方が良い。
「……その情報が回って来るか分からない」
「それでも、見付けなくとも情報が手に入る可能性は出てくるだろう?」
確かに、新たに発見された隠しエリアの情報が俺達の元に回って来るかどうかは分からないが、情報が出回らなければその可能性すらなくなるからな。
自分達で見付ける気はあまりないので、この情報は公開してしまった方が俺達にとってのメリットは大きくなる。
「それに、情報の発信源となった俺達の店は話題になるだろうからな。メリットは大きいと思わないか?」
「……うん」
そこまで聞いて、リッカは納得してくれたようだ。
「では、このままセントラルに戻るということで良いな?」
「……うん」
そして、隠しエリアの調査と素材の収集を終えた俺達は、そのまま始都セントラルにある店に戻ったのだった。
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