episode65 店の本格運用に向けて

「さて、やるか」


 拠点に戻った俺は店の本格運用に向けての準備に取り掛かっていた。


「……何するの?」

「まずはこれの作製だな」


 俺はそう言いながらリッカに一枚のカードを渡す。


「……引換券?」


 だが、それを見てもいまいちぴんと来なかったのか、リッカはそう言って首を傾げた。


「まあそれは今から説明する」


 これを見ただけでは分からないだろうからな。それは今から説明することにする。


「これはその名の通りに特別に用意されたアイテムと引き換えることができる引換券で、不要なアイテムをいくつか渡せば入手できるようにするつもりだ」


 引換券は不要なアイテムを渡すことで入手することができて、引換券専用に用意されたラインナップのアイテムと交換できるようにする予定だ。


「……【クラフトマテリアル】用?」

「まあそういうことだな」


 【クラフトマテリアル】の消費が思っていたよりも激しいからな。

 この調子だと【クラフトマテリアル】用の素材が足りなくなるので、それを集めるためにこのようなシステムを作ることにしたのだ。


「……ゲームシステム的にできるの?」

「問題はそこだな」


 だが、それに当たって一つ問題があった。


 そう、それはゲームシステム的に可能なのかどうかということだった。

 ゲームシステム的にできないのであれば、この計画は破綻するので、そのあたりについての検証が必要だった。


「まあ当てはあるので、それを今から試すところだ」


 もちろん、見込みもなく計画したわけではないからな。

 当てはあるので、まずはその方法を試してみることにする。


「……どうするの?」

「とりあえず、買い取り品の設定を使って交換品のリストを作成する」


 まず、交換品のリストは買い取り品の設定を利用して作成するつもりだ。

 やり方は簡単で、買い取り品に引換券を設定して、こちらが出す物をお金の代わりに交換品となるアイテムに設定するだけだ。


「……偽造されない?」

「そこは作製者の項目を使えば問題ない」


 このゲームでは作製したアイテムには任意で作製者名を表記するよう設定することができるからな。

 俺が作った引換券でのみ交換できるようにすることで、偽造された引換券では交換できないようにするつもりだ。


「……そう。交換品どうするの?」

「問題はそれだが……まあ大層な物は設定しないつもりだ」


 引換券自体は不要なアイテムを出すことで手に入る物だからな。あまり豪華にするつもりはない。


「……引換券のレートは?」

「五個か十個で一枚の予定だ」


 それはまだ決めていないが、少なすぎても多すぎても面倒なので、五個か十個につき一枚にするつもりだ。


「リッカはどう思う?」

「……交換レートを調整すれば良いし、どっちでも良い」

「まあそれもそうか」


 様子を見て景品との交換レートを調整すれば良いからな。そこまで深く考える必要はなさそうだった。


「ならば、十個にするか」


 その方が引換券の生産数を減らすことができるからな。

 不要なアイテムと引換券の交換レートは十個につき一枚に設定することにした。


「……今から引換券作るの?」

「いや、まだ他にもすることがあるからな。引換券は後で他のアイテムを生産するついでに作るつもりだ」


 まだ景品も決めていないからな。引換券については後でまとめて作る予定だ。


「……そう。他は?」

「ポイントカードを作ってみようと思う」


 他にも計画していることはある。

 それはポイントカードの作製だ。これがあれば客寄せができて、リピーターも増えるだろうからな。

 少し前からポイントカードを作ることを計画していたのだ。


「……どうするの?」

「一応カードは作ってみたが、システム的にどうするかが問題だな」


 だが、最大の問題はシステム的にどうするのかということだった。

 常に店にいれば手動でポイントを付けることも可能だが、そういうわけにはいかないからな。

 無人でも問題ないような方法を考える必要があった。


「……考えは?」

「システム的には購入履歴を確認して管理するのが良いのだろうが、手動になる上に面倒だからな……」


 購入された商品の詳細から購入者の情報を見ることもできるので、手動で管理することもできるが、量が多い上に面倒だからな。

 何とか自動でできるような方法を考えたい。


「……自動はシステム的に無理」

「まあそうだよな」


 色々と考えたが、自動化の方法は思い付かなかったからな。ポイントカード案は却下になりそうだった。


「……運営に要望出したら?」

「そうしてみるか」


 要望を出せば採用されるかもしれないからな。後で要望を送ってみることにした。


「後はこれだな」


 ポイントカードについてのことも済んだので、次の作業に取り掛かることにした。

 ここで俺は試しに作っておいたカードを取り出す。


「……それ何?」

「抽選券だ」

「……抽選券?」

「ああ。定期的に抽選会を開催しようと思っていてな。見ての通りに番号が振ってある」


 これは抽選券で、抽選会に参加するために必要になる物だ。

 もちろん、これも客引きのためのイベントで、定期的に開催する予定だ。


「こういう確率物は好きだろう?」

「……みんなガチャは好きでやってるわけじゃない」

「む、そうか? まあ良い。配布方法はまだ決めていないが、商品の購入者に配布するか、引換券での交換で入手できるようにするつもりだ」


 また、抽選券の配布方法に関してだが、商品の購入者に配布するか、引換券での交換のどちらかにする予定だ。


「……そう。景品は?」

「それは引換券の景品と一緒に作る予定だ」


 まだ細かくは決めていないからな。景品はもう少し考えてから作るつもりだ。


「……そう」

「まあ今は必要な物を作ることにするぞ」


 それはそうと、今は直近で必要な物があるからな。まずはそれを作ることにした。


「まずは【アイアンインゴット】を変形させてと……」


 俺は赤熱するまで熱した【アイアンインゴット】をハンマーで叩いて変形させて、目的の形に整えていく。


「これで良いな。次はガラスだが……錬金でやるか」


 ガラスは金属と同じ方法では加工できないからな。

 こちらは錬金で変形させて加工することにした。


 俺は錬金板にガラスを乗せて、目的の形に変形させていく。


「……できたな。後はこれをめてと……」


 そして、ガラスを先程作った物にめて、目的のアイテムを完成させた。

 早速その詳細を確認してみる。



━━━━━━━━━━


【カンテラ】

 燃料を使って火を灯す一般的なカンテラ。


━━━━━━━━━━



 そう、俺が作製したのはカンテラだ。

 南セントラル洞窟に向かうには明かりが必要だからな。この後向かう予定なので、作製することにしたのだ。


「……できたんだ」

「適当だったが、まあそこはゲームだしな。ゲーム側の補正が掛かったといったところだろうな」


 カンテラの構造を知らないので、適当に形だけ整えてみたが、それでもちゃんとカンテラとして完成していた。

 まあ細かくできていないと作れないと言われても困るからな。

 ちゃんとできていれば性能が上がるというのであればありだとは思うが、そのあたりの話は俺が言うようなことでもないので、これ以上は特に何も言わないことにする。


「……燃料は?」

「それなら当てがある」


 もちろん、これを使うには燃料が必要になるが、燃料に関しては当てがあるからな。

 まずはそれを試してみることにする。


「これだ」


 俺が取り出したのは【アブラ実】だった。

 これはセントラル地方にある木から採れる木の実で、大量の油が含まれている実だ。

 これであれば、適当に圧搾すれば油が採れるだろうからな。とりあえず、これで試してみることにした。


「これで良いか」


 俺は適当な布で【アブラ実】を包んで、それを容器の上で絞る。

 すると、【アブラ実】から大量の油が溢れ出てきた。


「これで良さそうだな」


 これ以上絞っても油は出てきそうにないからな。

 絞り終わったところで、油の状態を確認してみる。



━━━━━━━━━━


【アブラ実の油】

 アブラ実から搾った油。燃料として使用できる。


━━━━━━━━━━



 確認すると、ちゃんと燃料として使えるようだった。


「問題は燃焼時間だが……まあ多めに持って行けば問題ないか」


 セントラル遺構や南セントラル洞窟で採集する物は特にないからな。

 リュックの枠には余裕があるので、油を多めに持って行くことでその問題は解決することにした。


(そう言えば、リュックの新調をしていなかったな……)


 リュックの枠で思い出したが、リュックを新調するのをすっかり忘れていた。


(まあ後で良いか)


 だが、引換券の交換用のアイテムや抽選会用のアイテムと一緒に作っても遅くはないので、後で作ることにした。


「では、もう少し【アブラ実の油】を作ったら出発するか」

「……うん」


 そして、その後は【アブラ実の油】を多めに作ってからセントラル遺構に向かったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る