episode64 術式機構と古代術式
研究所に向かうと、俺達はエルリーチェに案内されて研究室に向かっていた。
「それで、今日は【自然の結晶】を持って来たんだって?」
「ああ」
俺はそう言いながら先程ノーシュから受け取った【自然の結晶】を彼女に渡す。
「確かに受け取ったよ。それで、今日は何をしに来たんだい?」
「少し聞きたいことがあってな」
「何を聞きたいんだい?」
「高品質な【コッコの羽】の入手方法を知らないか?」
聞きたいことというのは、高品質な【コッコの羽】の入手方法だ。
何故そんなことを聞くのかと言うと、重量が下がる付与効果を入手するためには高品質な物が必要になるからだ。
同じアイテムを一つに合成して品質を上げる、『良質化合成』を使えば品質は関係ないように思えるが、そう簡単にはいかない。
と言うのも、ベースにするアイテムの品質が高くなるほど品質が上がりにくくなるからだ。
『良質化合成』による品質上昇は合成したアイテムの品質が高いほど上昇値は大きくなるが、逆に言うと合成するアイテムの品質が低いとあまり上がらない。
しかも、上昇値の最低保証もないので、ある程度品質を上げると、低い品質の物を合成しても品質が上がらなくなってしまうのだ。
なので、高品質な物を集めないと、品質を100まで上げることはできない。
まあ内部的に小数点以下の数値が記録されているという可能性もあるが、確認はしていないからな。
そのあたりのことは分からないので、その話は置いておくことにする。
まあそうでなかったとしても、理論上は品質を上げた物同士を合成することで品質を100まで上げることもできるはずだが、莫大な量の素材が必要になるからな。
それは現実的ではないので、実質的に高品質な物が必要になる。
なので、高品質な【コッコの羽】の入手方法を聞いたのだ。
「そうだね……一番良いのはコッコを飼うことだろうね」
「つまり、テイムするということか?」
「そうだよ。テイムしたモンスターから手に入る素材は好感度が上がるほど品質が上がっていくからね。この方法が一番簡単だと思うよ」
「そうか。……そろそろ【テイム】を習得した方が良いか?」
【テイム】は初期習得アビリティとして習得するアビリティとして候補に挙げていたぐらいだからな。
今ならスクロールを買うお金もあるので、この機会に【テイム】を習得してしまうのも良さそうだった。
「他の方法はないか?」
「後は南セントラル平原の高原地帯に行くぐらいかな」
「南セントラル平原の高原地帯?」
南セントラル平原はその名の通り平原だからな。高原地帯というのは聞いたことがない。
「おや、知らないのかい? まあ一般的には知られてないからね。それも仕方ないか。ほら、ここだよ」
そう言うと、エルリーチェは取り出した地図のある一点を指差す。
すると、俺の南セントラル平原のマップにそのエリアの情報が加えられた。
(この場所は知らないな)
一応、攻略サイトで南セントラル平原のマップは見たことがあるのだが、そこにこの場所の情報はなかった。
(もしかして、隠しエリアか?)
隠しエリアというものは聞いたことがないが、本リリースで解禁された要素もあるからな。これもその一つだと思われた。
「ここで出てくるモンスターがドロップするアイテムは品質が良いことがあるからね。ここで集めるのも手だと思うよ。まあここで出てくるモンスターは普通よりもちょっと強いけど、今のあんたらには関係ないか」
「品質が良いことがある、か……やはり、テイムの方が楽か?」
数を集めないといけない上に確率ドロップだからな。
その話を聞いた感じだと、テイムしてしまった方が楽なように思える。
だが、テイムだと好感度上げに時間が掛かるので、早く手に入れたいのであれば、狩り一択になりそうだった。
「ところで、何で高品質な【コッコの羽】を集めようとしているんだい?」
「重量を下げる付与効果が欲しくな」
「重量を下げる付与効果? ……ああ、『浮かび上がるようなふわふわ』のことだね。【コッコの御守り】を作るなら、【コッコの
「む、そうか」
攻略サイトの情報によると、コッコを飼うことで手に入るアイテムは【コッコの羽】と【コッコの卵】の二種類だけのようだからな。
目的の付与効果を得るためには狩りをするしかなさそうだった。
「……一つ聞いても良いか?」
「何だい?」
「【クラウドストーン】はどこで手に入るんだ?」
【クラウドストーン】には重量を下げる付与効果が付いていることがあるらしいからな。
手に入るのであればそちらの方が楽なので、その入手方法を聞いてみることにする。
「ハイスノウ山で手に入るよ」
「……ハイスノウ山?」
「北の方にある山だよ。まああんたらには当分縁のない場所だね」
「そうか」
近い内に入手できるのであればそれまで待っても良かったが、残念ながら手に入りそうにないからな。
ここは予定通りに高品質なコッコ素材を入手して、目的のアイテムを作ることにした。
「『浮かび上がるようなふわふわ』は重量が二しか下がらないから、それを考えて防具は作ると良いよ」
「分かった」
「他に聞きたいことはあるかい?」
「後は術式機構のことについてだな」
術式機構の知識があれば、炉や錬金板の改良ができるだろうからな。
次は術式機構のことについて教えてもらうことにする。
「術式機構ね……。あたしのは古代術式をベースにしたものになるけど、それでも良いかい?」
「普通のものと何か違うのか?」
「端的に言うと、普通のものより難解だね。まあ一般的な術式機構のことも教えられるから、それも一緒に教えようか?」
「では、それで頼んだ」
習得しておいて損はないからな。折角なので、両方教えてもらうことにした。
「分かったよ。それじゃあ教えるね」
「ああ」
そして、エルリーチェに教えてもらって、俺達は【術式機構】と【古代術式】のアビリティを習得した。
「【古代術式】のことについて詳しく説明しておくよ。【古代術式】は通常のアビリティとは違って、ただ活用するだけじゃ成長しないよ」
「と言うと?」
「各地にある遺物を調査して、知識を得ないと成長しないよ」
「つまり、遺物を探す必要があるということか」
「そういうことよ」
どうやら、【古代術式】のアビリティは少々特殊な仕様になっているらしい。
「とりあえず、セントラル遺構と南セントラル洞窟に行ってみると良いよ。そこに遺物があるはずだからね」
「分かった」
「分かっているとは思うけど、南セントラル洞窟には明かりがないから、ちゃんと明かりを用意するんだよ」
「ああ。今日は色々と助かった。リッカ、もう行くぞ」
「……うん」
そして、必要な話を聞き終わった俺達は研究所を後にして拠点に戻ったのだった。
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