episode56 ストライクウルフの討伐へ!

「……帰った」

「おーい。来たぞー」


 それから適当に待っていると、リッカがソールを連れて帰って来た。


「来たか」

「……うん。できた?」

「ああ」


 俺は作製した【リザルライトの刀】をリッカに渡す。


「どうだ?」

「……うん」


 どうやら、その出来に満足してくれたらしい。


「うおっ⁉ 何だこれ⁉ もうこんなのを作ったのか⁉」


 だが、それを見たソールはこの段階でこのレベルの性能の武器を作っていると思っていなかったのか、かなり驚いた様子だった。


「まあな」

「もしかして、俺を呼んだのはこの件か?」

「珍しく察しが良いな」

「珍しくは余計だ」

「俺が聞きたいのはどの程度の販売価格が適正かということだ」


 そう、ソールを呼んだのは今回新たに作製した装備品のことについてだ。

 今の段階ではこのレベルの性能の装備品はどこにも売っていないからな。

 俺には適正価格が分からないので、ベータテスターであるソールに聞いてみることにしたのだ。


「とりあえず、見せてくれるか?」

「分かった」


 見せないことには査定できないからな。まずは作った装備品を見せることにした。


「どれもコスタル平野とスピリア荒原の素材か……」

「まあドラガリア荒野で手に入った素材は自分用に使ったからな」


 ドラガリア荒野で手に入った素材は自分用に使ってしまったからな。

 販売用に作った装備品はコスタル平野とスピリア荒原で手に入った素材で作った物になる。


「それで、どうだ?」

「性能に問題はないし、コスタル平野の素材で作った物は五千前後、スピリア荒原の素材で作った物は二万前後だな」

「そうか」

「でも、もう少し高くても良いと思うぞ? まだ他で売られてないしな」

「ふむ……それもそうか」


 コスタル平野の素材で作った物はともかくとして、スピリア荒原の素材で作った物はまだ出回っていないからな。

 それも考慮して価格を設定するのが良さそうだった。


「なあ、聞くが素材は余ってるのか?」

「少しは余っているぞ。ただ、【クロライトインゴット】はもう残っていないな」


 【クロライトインゴット】は【クロライト鉱石】をあまり確保できなかったこともあって、俺達の装備品とピッケルと鍛冶用のハンマーで使い切ってしまったからな。

 【クロライトインゴット】だけはもう残っていない。


「そうか。……なあ、いくつか俺の分の装備を作ってくれねーか?」


 それを聞いたソールは装備品の作製を依頼してくる。


「別にそれは構わないぞ。素材は【デヴェストインゴット】か【スケルトンの骨】から選んでくれ。まあ【霊魂結晶】か【スケルトンの霊骨】でも良いが」


 【霊魂結晶】や【スケルトンの霊骨】で作ると、強烈なデメリット効果が付くからな。

 望むのであればそれでも良いが、どうするのかを聞いてみる。


「【デヴェストインゴット】で一式作れるか?」

「それは無理だな。素材が足りない」


 流石に一式作れるほどは残っていないからな。それはできない。


「じゃあ【デヴェストインゴット】で鎧とグリーヴを、【スケルトンの骨】で盾と他の防具を作ってくれねーか?」

「分かった。では、二人とも少し待っていてくれ」


 俺はいつものようにインゴットを赤熱するまで加熱して、ハンマーで叩いて形を整えて、鎧を作製する。

 そして、完成したところで、早速その性能を確認した。



━━━━━━━━━━


【デヴェスト製の鎧】

物防:34

魔防:36

耐久:350

重量:15

空S:2

品質:35

効果:荒廃した守り

付与:乾いた守り

説明:デヴェスト製の鎧。かなり重量があるが、防御力もそれなりにある。



【荒廃した守り】

 状態異常の効果を軽減する。


━━━━━━━━━━



「できたぞ。これでどうだ?」

「問題ないぞ。このまま他のも作ってくれるか?」

「分かった」


 俺はそのまま依頼通りに他の防具も作製していく。


「できたぞ」


 そして、無事に依頼された装備品の作製が全て終わった。


「武器はいいのか?」

「俺はタンクだしな。優先順位は低いし、今はいいぞ」

「そうか」


 まあタンクなら武器の優先度は低いからな。

 俺がもう一段階上の装備品を作れることも考えると、今武器を作る必要もないか。


「【デヴェストインゴット】の在庫はもうないのか?」

「後二個だけだな」

「じゃあ剣も二本作ってくれねーか?」

「それは構わないが、そんなに必要なのか?」


 先程武器は不要だと言ったばかりだし、二本も必要だとは思えないからな。

 そのあたりについて少し聞いてみることにする。


「それは俺の分じゃなくて、ギルメンの分だな」

「む、そうか。柄はコーラルア製で良いか?」


 完全にデヴェスト製にすると、一本しか作れないからな。

 柄は他の物で作るが、それでも良いか確認する。


「別に良いぞ」

「分かった。では、少し待っていてくれ」


 俺は今回もいつもの手順で剣を作製する。

 そして、完成したところで、それをそのままソールに手渡した。


「これで良いか?」

「おう、問題ないぞ。代金は即金で要るか? 必要ないなら、借金から引くってことでも良いぞ」

「そうだな……では、借金から直接引くということにしてくれるか?」


 今すぐにお金が必要なわけではないし、今回売る分でお金も入ってくる予定だからな。

 ここは最初に店の開業資金として借りた分から直接引いてもらうことにした。


「分かった。値段はどうするんだ?」

「それは今回の売れ行きを見て決めるということで良いか?」


 妥当な金額を出すには、売れ行きを見て決めるというのが一番良いだろうからな。

 今回の売れ行きを見てから値段を決めることを提案してみる。


「それで良いぞ。ところで、この後はどうするんだ?」

「特に決めていないが……リッカはどうだ?」


 俺は特に予定はないからな。基本的にリッカに合わせるつもりなので、彼女の予定を聞いてみる。


「……ストライクウルフの討伐」

「……行けるのか?」

「……たぶん」


 どうやら、装備が一新されたことで、行けると踏んでいるらしい。


「……と言うことで、俺達はストライクウルフの討伐に向かうつもりだ」

「もうストライクウルフを倒しに行くのか?」

「そのつもりらしい」

「そうか」

「そちらはどうなんだ?」


 大方予想は付くが、ソールの予定も聞いてみる。


「ギルメンと一緒にコスタル平野を攻略する予定だぞ」

「そうか」

「じゃあ俺はそろそろ行くぞ」

「ああ。またな」


 そして、話が済んだところで、ソールは俺達の拠点を出て行った。


「……準備はできたか?」

「……うん」


 リッカは俺が装備品を作っている間に準備を整えたらしく、もういつでも出発できる状態だった。


「では、ドラガリアに向かうか」

「……うん」


 そして、俺達はそのまま拠点を出て、竜都ドラガリアに向かったのだった。

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