episode54 武器の欠片の使い道

「ふぅ……こんなところか」


 それからインゴットを作製する作業を続けて、何とか製錬する作業が終わった。


「……先にポーションの開発をした方が良いか?」


 作製にはそれなりにMPを消費するからな。

 できれば、高性能な【MP回復ポーション】が欲しいので、先に【調合】でポーションの開発をしても良さそうだった。


「……いや、止めておくか」


 目的のポーションを開発できるかどうかも分からないからな。

 ここは最優先事項である、装備品の作製を進めることにした。


「インゴット以外で使えそうな素材は……こんなところか?」


 ここで俺はインゴット以外の使えそうな素材を取り出す。

 俺が取り出したのは【リザードマンの爪】、【スケルトンの骨】、【霊魂結晶】、【武器の欠片かけら】、【大蟹の甲殻】の五つだ。


 他にも【原初の石】や【竜脈鉱】なんかもあるが、レア素材は使いどころを考えたいからな。

 そちらにはまだ手を付けないでおくことにする。


 【霊魂結晶】はゴーストがドロップしたアイテムで、三センチメートルほどの大きさの紫色の結晶だ。

 ゴーストは物理攻撃に対して非常に強い耐性があるが、今の俺には【ウィンドボム】があるからな。

 素材を集めにスピリア荒原に行った際に軽く狩っておいたのだ。


 また、【武器の欠片かけら】はスケルトンやリザードマンがドロップしたアイテムで、その名の通りに彼らが持っていた武器の欠片かけらだ。

 いくつか集めて合成すれば武器が作れそうだが、まだそれは試していない。


「まずは鍛冶用のハンマーを作るか」


 初期のハンマーでは加工に時間が掛かるからな。まずは鍛冶用のハンマーを作ることにした。


「クロライトで作るか」


 素材の開発をして、より優秀な素材で作るという手もあるが、鍛冶用のハンマーはある程度の性能があればそれで良いからな。

 ここは【クロライトインゴット】を加工して作ることにした。


 まずは【クロライトインゴット】を炉で赤熱するまで加熱して、ハンマーで叩いて変形させていく。


「柄の部分までクロライトで作る必要はないか」


 ヘッドの部分の性能さえ良ければ問題なさそうだからな。

 柄の部分は【アイアンインゴット】で作ることにした。


「……これで良いな」


 そして、アイアン製のロッドをぱぱっと作って、それをクロライトで作ったヘッドと合わせて鍛冶用のハンマーを作製した。


「これで大丈夫だとは思うが、どうだ?」


 完成したところで、早速その詳細を確認してみる。



━━━━━━━━━━


【クロライトヘッドの鍛冶用ハンマー】

耐久:100

品質:35

付与:火の力

説明:ヘッドがクロライトで作られた鍛冶用ハンマー。ヘッドはクロライト製なので性能は良いが、ロッドの部分はアイアン製なので耐久度は低い。



【火の力】

 火の力が武具に力を与える。

 武器に付与された場合は攻撃に微弱な火属性を付与する。

 防具に付与された場合は火耐性が2%上昇する。


━━━━━━━━━━



 確認すると、高性能な鍛冶用ハンマーは作れていたが、耐久度がかなり低めだった。


(説明から察するに、ヘッドの部分で性能が、ロッドの部分で耐久度が決まるようだな)


 だが、その原因は説明を見ればすぐに分かった。

 どうやら、鍛冶用ハンマーはヘッドの素材で性能が、ロッドの素材で耐久度が決定されるらしい。


「……まあ一度耐久度がゼロになるまでは使うか」


 解体して作り直しても良いが、それも勿体ないからな。

 ここはこれをこのまま使って、耐久度がなくなって破損してから解体することにした。


「それはそうと、『火の力』が無効状態になっていないのが気になるな」


 付与効果は効果を発揮するカテゴリが決められていて、そのカテゴリのアイテムに付与されていないと、無効状態になって効果を発揮しなくなる。

 例えば、『万全防御(小)』は防具専用の付与効果なので、武器や装飾品に付与した場合は無効状態になって効果を発揮しない。


 だが、このハンマーに付与された『火の力』は、武器か防具の専用の付与効果のはずなのに、何故か無効状態になっていなかった。


「……まあ分からない以上は気にしても仕方がないか」


 考えても答えは出そうにないからな。今は気にしないでおくことにした。


「さて、まずは【武器の欠片かけら】の合成を試してみるか」


 色々と試してみたいことはあるが、まずは【武器の欠片かけら】の合成を試してみることにした。


「五個あれば剣は作れそうだな」


 大きさ的に五個あれば剣の刀身部分を作れそうなので、まずはこのまま剣を作ってみることにした。

 俺は【武器の欠片かけら】を炉で熱して、それをハンマーで叩いて形を整えていく。


(今までよりも遥かに簡単に加工できるな)


 クロライト製のハンマーにしたおかげで、今までとは比べ物にならないぐらいに加工がしやすかった。


「柄はアイアン製で良いか」


 今回は試しに作っているだけだからな。柄はアイアン製にすることにした。


「……これで良いな」


 そして、刀身と柄を合成して、無事に剣が完成した。

 無事に完成したので、早速その詳細を確認してみる。



━━━━━━━━━━


【粗金属の剣】

物攻:120

耐久:120

重量:4

空S:0

品質:30

効果:火の付与力

付与:なし

説明:モンスターが持っていた武器の素材で作られた剣。粗雑な素材で作られているので、あまり性能は良くない。



【火の付与力】

 火の力がエンチャントされた武器。

 攻撃に微弱な火属性を付与する。


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 確認してみると、案の定その性能は低く、今更使うような武器ではなかった。

 だが、一つ気になる点があった。


「『火の付与力』……?」


 そう、それは『火の付与力』という効果だ。

 説明を見た感じだと、これは武器の素材の固有の効果ではなく、エンチャントされた効果のようだった。


「【クロライトヘッドの鍛冶用ハンマー】に付与された『火の力』のおかげか?」


 思い当たることはそれぐらいしかないからな。

 仮にそうだとすると、『火の力』が無効状態になっていないことにも納得できるので、その可能性は濃厚だった。


「『火の力』は【アイアンインゴット】の方に付いていたが……まあ大丈夫か」


 『火の力』が付与されていたのは【アイアンインゴット】の方だが、アイテムの解体の際には解体後の素材に好きに付与効果を付与できるはずだからな。

 その点も特に問題はないと思われた。


「それはそうと、このレベルの性能だと需要もなさそうだし、【武器の欠片かけら】は【クラフトマテリアル】に換えてしまって良さそうだな」


 【クラフトマテリアル】は【スラグ】や【石ころ】のような、いわゆるゴミアイテムでも作れるが、そのようなアイテムからだと生成個数が少ないからな。

 それだけだと足りないと思っていたところなので、【武器の欠片かけら】は【クラフトマテリアル】に換えてしまうのが良さそうだった。


「さて、次はこれを使ってみるか」


 そして、【武器の欠片かけら】の扱いを決めたところで、次の素材に手を付けたのだった。

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