episode49 初めての錬金

 拠点に錬金板を設置した俺は早速、作業に取り掛かっていた。


「さて、まずは【クラフトマテリアル】を作ってみるか」


 最初に作るのはマテリアルクラフターでの攻撃に必要になる【クラフトマテリアル】だ。

 店には売っていなかったし、これがないとマテリアルクラフターでの戦闘を試せないからな。

 まずは【クラフトマテリアル】を作ることにする。


「基本的に素材は何でも良いらしいが……とりあえず、【スラグ】で作ってみるか」


 【スラグ】は製錬の際に手に入る副産物で、特に使い道のないアイテムだ。

 現実世界ではセメントの材料に使われたりするが、このゲームでの使い道は特に見付かっていない。

 なので、まずは【スラグ】を使って作ってみることにした。


「この上に乗せれば良いのか?」


 詳しいやり方は分からないが、今のところ他に方法はなさそうだからな。

 とりあえず、素材を錬金板に乗せてみることにした。


「起動は……こうか?」


 手をかざすと錬金板が起動して、錬金板に刻まれた魔法陣が光り始める。

 そして、そのまま念じるようにしてみると、素材が変形していって、目的の【クラフトマテリアル】が完成した。


「五個か……消費MPは少ないが、大量に用意する必要があるし、運用は大変そうだな」


 見たところ、【矢】よりも消費が激しそうだからな。

 店で売っていない上に数が必要なことを考えると、思っていたように運用コストは高そうだった。


「次は【ウィンドボム】を作ってみるか」


 ひとまず、【クラフトマテリアル】は作れたので、次は【ウィンドボム】という攻撃アイテムを作ってみることにした。


「まずはガラスを作らないとな」


 だが、作製にはガラスが必要なので、まずはそれを作ることにする。


「今のところ【砂】は他の使い道もないし、全部【ガラス】にしておくか」


 【砂】は手に入れようと思えば簡単に手に入るので、今倉庫にある【砂】は全て焼いて、【ガラス】にしてしまうことにした。

 俺は倉庫にあった【砂】を全て炉に入れて、焼き上がるのを待つ。


「できたな」


 そして、焼き上がったところで、完成した【ガラス】を錬金板に乗せて、作業に取り掛かった。


「……こんなところか?」


 錬金板を起動すると、ガラスが球状に変形して、中に風が封じ込められたガラス球が完成した。

 ひとまず、その詳細を確認してみる。



━━━━━━━━━━


【ウィンドボム】

品質:10

効果:風属性ダメージ

付与:なし

説明:風の力が封じられた魔法道具。投げると爆発して、対象に風属性のダメージを与える。


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 確認すると、無事に目的のアイテムが完成していた。


「とりあえず、多めに作っておくか」


 このアイテムは【風魔法】のアビリティを習得していなければ作ることができないが、それさえ満たしていれば、【ガラス】だけで作ることができるお手軽アイテムだからな。

 どうせ使うことになると思われるので、多めに作っておくことにした。


 ちなみに、他の属性魔法を習得していれば、対応する属性の物を作ることができるが、わざわざ習得してまで作る必要もないので、このまま【ウィンドボム】だけを作製することにする。


「……これで三十個か……。もう少し作っておきたかったが、【ガラス】がない以上は仕方がないか」


 もっと作りたいところだったが、材料である【ガラス】がないことには作れないからな。

 【ウィンドボム】の作製はここまでにしておくことにした。


「店で買い取りをして集まれば良いが……無理か」


 【砂】はほとんど値段が付かないようなアイテムで、普通はわざわざ集めるようなことはしないからな。

 買い取りアイテムとして設定しても、集まらない可能性が高い。


「後でコスタル平野に行って集めるか」


 コスタル平野は海岸平野で、砂が採れる場所が多いからな。後で大量に集めておくことにした。


「さて……錬金の流れは分かったし、何か作れないか試してみるか」


 これで錬金のやり方は分かったからな。新しいアイテムの作製を試してみることにした。


「まずはこれはどうだ?」


 俺は【癒し草】を水を入れたビンに入れて、それを錬金板の上に置く。

 そして、錬金板を起動して、錬金を開始した。


「おわっ⁉」


 だが、軽く爆発が起こって、ビンから黒煙が上がってしまった。


「……ポーション作りには向いていないのか?」


 確認してみると、ビンの中身は【失敗ポーション】になってしまっていた。

 錬金はポーション作りに向いていないのか、やり方が悪いのかは分からないが、今回はポーションを作るのは止めておくことにした。


「では、これはどうだ?」


 今度は【ガラス】と【基本HP回復ポーション】を取り出して、それを錬金板の上に置いて錬金を始める。


(まずは球体のガラスを作って、その中にポーションの中身を移して……こんなところか?)


 加工は順調に進んで、無事に目的通りのアイテムが完成した。

 早速、完成品の詳細を確認してみる。



━━━━━━━━━━


【HP回復ポーション入りのガラス球】

品質:10

効果:HP回復

付与:なし

説明:HP回復ポーションが入ったガラス球。投げるとHPを回復できるが、掛けるだけになるのであまり回復しない。


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 俺が作った物は中にHP回復ポーションが入った球状のガラスだった。

 こうすれば魔法道具の回復アイテムになるかもしれないからな。試しにこのような物を作ってみたのだ。


「……そう簡単にうまくはいかないか」


 だが、残念ながら今回は失敗だった。

 先程のように錬金自体は失敗しなかったが、回復量が下がっている上に魔法道具になっていないからな。これでは話にならない。


 魔法道具であるかどうかに拘っているが、効力値の影響を受けるアイテムは分類が魔法道具のアイテムだけだからな。

 魔法道具であれば効力値による補正を受けて効果が上がるので、何とかして魔法道具を開発したい。


「まあ魔法道具の開発は後回しにするか」


 分類が魔法道具の物を作りたいが、開発は難航しそうだからな。

 魔法道具の開発は後回しにして、他のことを進めることにした。


「時間的に考えて、【砂】の採取をしに行くか、このまま開発を続行するかだが……【砂】の採取に行くか」


 今後の戦闘を考えると、【ウィンドボム】をもっと作っておきたいからな。

 ここは素材となる【ガラス】を作るために、素材となる【砂】の採取に向かうことにした。


「……と、その前に【クラフトマテリアル】をもう少し作っておかないとな」


 戦闘の準備は必要だからな。【クラフトマテリアル】をまだ五個しか作っていないので、追加で作ることにした。


 そして、その後は【クラフトマテリアル】を五百個ほど作製してからコスタル平野に向かったのだった。

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