episode47 闘都コロッセオス
研究所支部を後にした俺達は街に出て闘都コロッセオスを見て回っていた。
「売っているアイテムも一段階良い物になっているな」
NPCの売り物を見て回っているが、次の都市とだけあって、売り物が一段階良い物になっていた。
「そう言えば、【転移石】はどこで手に入るんだ?」
それはそうと、ベータ版と同じであれば闘都コロッセオスで二つ目の【転移石】が入手できるはずだからな。
詳しく調べているリッカにそのあたりのことを聞いてみる。
「……プレボにある」
「む、そうか」
リッカに言われてプレゼントボックスを確認すると、確かに闘都コロッセオスへの到達報酬として【転移石】が届いていた。
「次に手に入るのがいつになるかも分からないし、登録先はよく考えないとな」
「……うん」
ベータ版の情報で分かっている【転移石】の入手場所はこれだけだからな。
次に手に入るのはいつになるのか分からないので、登録先はちゃんと考えて決めることにする。
「さて、鍛冶用の炉のアップグレードをしたいところだが……たぶん鍛冶屋だよな?」
次にすべきことは鍛冶用の炉のアップグレードだが、それが行える場所についての情報を聞いていなかった。
なので、これからそれを行える場所を探す必要があった。
「……鍛冶屋ならそこ」
「そのようだな。とりあえず、行ってみるか」
「うん」
ちょうど近くに鍛冶屋があったので、ひとまず、そこに行ってみることにした。
俺とリッカはそのままその鍛冶屋に入る。
「店員さん、少し良いか?」
「なんだい?」
「炉のアップグレードをしたいのだが、受け付けているか?」
俺は店に入ったところで、店員の男に炉のアップグレードについてのことを尋ねる。
「おう、素材さえあればできるぞ」
「何が必要なんだ?」
「【原初の石】だな。一つで十分だぞ」
「これで良いか?」
【原初の石】はエルリーチェに一つ渡したが、まだ余っているからな。
品質は関係なさそうなので、俺は残っている中から一番品質が低い物を取り出して渡す。
「ふむ……素材はこれで問題ないな。費用として一万ゼルもらうが、それで良いな?」
「ああ」
「じゃあこのまま少し待っていてくれ。すぐに終わらせる」
そして、代金として一万ゼルを支払うと、男はすぐに作業に取り掛かった。
(このまま待つか)
俺は特に買う物もないので、そのまま作業の様子を眺めながら待機する。
「できたぞ」
そして、それから数十秒ほど待つと、作業が終わって完成した赤い球体を渡してきた。
「それを炉にセットすれば、火力が上がるはずだ」
「分かった。ところで、これ以上はアップグレードできないのか?」
「【炎竜の鱗】があればできるぞ」
「【炎竜の鱗】か……となると、次のアップグレードはまだ先になるな」
炎竜がいる煉獄火山に行くにはまだ早いからな。
次のアップグレードは当分先の話になりそうだった。
「順当なアップグレードも良いが、補助機構の作製も考えてみたらどうだ?」
「補助機構? 何なんだ、それは?」
その名前から、ある程度どのような物なのかを推測することはできるが、聞いた方が確実だからな。
ここはその詳細を直接聞いてみることにした。
「その名の通りに炉の稼働を補助するための装置だな。消費するMPを軽減したり、より精度の高い製錬ができるようになったりと、物によって色々と効果があるぞ」
「そうか。それも素材を渡して頼めば良いのか?」
「いや、うちではやっていないぞ。術式機構に詳しくないと作れないからな。専門の場所で作製を依頼するか、その知識を身に着けて、自分で錬金で作るかだな」
どうやら、作製には専門の知識が必要になるらしく、普通の鍛冶屋では作製を受け付けていないらしい。
(エルリーチェかミルファに聞くのが良さそうだな)
あの二人であれば詳しそうだからな。機会があれば聞いてみることにした。
「そうか。ところで、魔力タンクの作製はできないのか?」
それはそうと、もう一つ聞いておきたいことがあったので、それについても聞いてみることにする。
聞いておきたいことというのは、魔力タンクのことだ。
ここで改めて説明しておくと、魔力タンクは溜め込んでおいた魔力を使うことで、生産時に消費するMPを肩代わりしてくれる設備だ。
これがあると、生産がかなり楽になるからな。
魔力タンクは早めに手に入れておきたいので、そのことについて少し探ってみる。
「【鉱石亀の宝珠鉱】があれば作れるぞ。代金は十万ゼルだな」
どうやら、素材があれば作ることはできるらしい。
(ベータ版のときとは違って、素材を要求されるのか)
調べた限りだと、ベータ版のときは素材が必要ないようだったからな。
本リリースに当たって、素材が必要なように変更されたらしい。
「【鉱石亀の宝珠鉱】か……エルリーチェの研究所には置かれていたが、入手手段は分からないな」
それはそうと、作製に要求されたのは、まだ入手したことのない素材だった。
その名称から察するにモンスター素材のようだが、それを落とすと思われるモンスターにはまだ出会っていない。
「まあ手に入ったらまた来てくれ」
「そうさせてもらおう」
素材がないことにはどうしようもないからな。魔力タンクのことは素材が手に入ってから考えることにした。
「さて、このまま【裁縫】を習得してから拠点に戻っても良いが、どうする? 闘技場でも見に行ってみるか?」
この街の最大の特徴は中央にある闘技場だからな。
今のところは用はないが、どうするのかを聞いてみる。
「……うん」
「分かった。では、行くか」
そして、鍛冶屋を後にしてスクロール屋で【裁縫】のスクロールを買った俺達は、そのまま闘技場に向かったのだった。
◇ ◇ ◇
「ここが闘技場か……」
俺は闘技場の前にまで来たところで、高く
「この街のシンボルとだけあって、かなりの大きさだな」
街の入口からも確認できるほどの大きさだからな。この街のメインの施設で、シンボルなだけはある。
「……うん。それと、あれ」
「む?」
リッカが指差した場所を確認してみると、そこには【転移石】で転移先として登録可能なクリスタルがあった。
「とりあえず、登録しておくか」
「……うん」
ちょうど先程新たに【転移石】を入手したところだからな。
まだ転移先は未登録の状態だし、上書きはいつでもできるので、とりあえず、この場所を登録しておくことにした。
「闘技場をご利用でしょうか?」
「む?」
と、ちょうど転移先を登録し終わったところで、闘技場の受付にいた女性に話し掛けられた。
「いや、少し見に来ただけだ」
「そうでしたか。興味はありませんか?」
「興味がないわけではないが、他の予定があってな」
「そうですか。時間があるのでしたら、闘技場に説明致しましょうか?」
「そうだな……時間はあるし、聞いて行くか」
まだ時間はあるからな。折角なので、説明を聞いておくことにした。
「かしこまりました。闘技場は自由にプレイヤー同士で戦闘を行うことができる場所です」
「らしいな」
闘技場ではプレイヤー同士で戦うことができる他、時折イベントも行っている。
もちろん、闘技場であればプレイヤーを倒してもPK扱いにはならず、PKに伴うペナルティも発生しないので、自由にPvPを楽しむことができるようになっている。
「観戦の許可及び不許可、特殊効果の付与やステータスへの補正を掛けてのハンデなど、条件を自由に設定することができます」
「そうか。イベントは行っていないのか?」
「現在開催しているイベントはありません。今後の予定に関しましては、イベントの予定表がありますので、そちらでご確認ください」
まあほとんどのプレイヤーはまだここに辿り着けていないようだからな。
今イベントが行われていても困るか。
「ご利用の際はこちらにいらしてください。詳細に関しましては、その際にご案内します」
「分かった。では、そろそろ行かせてもらう」
闘技場の説明はこのぐらいで十分だからな。そろそろ拠点に戻ることにした。
そして、闘技場の説明を聞き終わった俺達は、そのまま拠点に戻ったのだった。
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