episode46 マテリアルクラフター
「マテリアルクラフターは【クラフトマテリアル】を消費して攻撃を行う武器だよ」
「【クラフトマテリアル】?」
「これだよ」
俺が尋ねると、ミルファに灰色の粘土のような物体を渡される。
ひとまず、受け取った物の詳細を確認してみる。
━━━━━━━━━━
【クラフトマテリアル】
マテリアルクラフターでの攻撃時に消費するアイテム。
━━━━━━━━━━
「これを自在に変形させて、戦うということか?」
「まあそういうことだね」
ミルファは様々な形状にした物を打ち出して攻撃していたからな。
マテリアルクラフターという武器の戦い方に関してはある程度は理解している。
「マテリアルクラフターの攻撃は効力値が参照されるから、基本的にはこれと魔法道具をメインにした戦い方になるね」
「そうか。何と言うか、コストが掛かりそうだな」
【クラフトマテリアル】に加えて魔法道具を作製するとなると、運用コストが掛かるからな。
どう考えても【矢】を消費する弓よりも運用コストが高い。
「まあそれはそうだけど、対応力は高いよ。相手に合わせて魔法道具を使い分ければ良いからね」
「なるほどな。運用コストが掛かる代わりに対応力が高いと」
「そういうことだね。補助や回復もできるし、かなり万能だよ」
「ふむ……それは中々魅力的だな」
道具さえ用意しておけば、大体何でもできるといった感じのようだからな。
マテリアルクラフターを使った戦術自体は優秀なので、一考の余地がありそうだった。
「少し試してみるのも良さそうだな」
「そうかい。……ちょっと【リザードマンの皮】と【リザードマンの擬宝核】を二個ずつ渡してくれるかな? できれば、付与効果がある物の方が良いと思うよ」
「別に構わないぞ」
【リザードマンの擬宝核】はレア素材だが、必要であればまた手に入れれば良いからな。
俺はそのままミルファに【リザードマンの皮】と【リザードマンの擬宝核】を渡す。
「少し待ってくれる?」
すると、その素材を使って作業を始めた。
「できたよ」
作業はすぐに終わって、完成品を渡してきた。
ひとまず、その詳細を確認してみる。
━━━━━━━━━━
【リザードマン素材のマテリアルクラフター】
効力:180
耐久:300
重量:4
空S:2
品質:50
効果:
付与:荒野の風、乾いた大地
説明:リザードマンの素材で作られたマテリアルクラフター。
━━━━━━━━━━
また、効果と付与効果は以下のようになっている。
━━━━━━━━━━
【
敵から狙われにくくなり、発見もされにくくなる。
【荒野の風】
不毛の地に吹く乾いた風は活力を奪う。
攻撃時に対象のMPを減少させる。
【乾いた大地】
乾いた大地は活力を求める。
攻撃時に対象からMPを吸収する。
━━━━━━━━━━
「効力値が上がるのだな」
通常の武器に記載されているパラメーターは物攻、物防、魔攻、魔防の四つだけで、効力の項目自体がないからな。
そのことからもこの武器が異質な武器であることが分かる。
「魔手甲の上位武器ではあるけど、少々特殊だからね」
「上位武器?」
「その名の通りに元の武器の特性を引き継いだ上で性能を向上させた上位の武器だよ。エルリーチェが使っている機構剣なんかもそうだね」
「そうなのか」
エルリーチェと会ったのは街中で、彼女の武器は見ていないからな。
それに関しては何とも言えない。
「まあマテリアルクラフターは特殊で、元の武器の特性を引き継いでいないけどね」
「効力値が上がるようだし、やはり、かなり特殊な武器なようだな」
純粋な上位互換になっていないというか、もはや別の武器だからな。
特殊な武器であることがはっきりと伝わってくる。
「それにしても、中々良い付与効果の物を選んだね。君達の段階なら十分良い付与効果だと思うよ」
「む? そうか?」
「『乾いた大地』は乾燥地帯で手に入れた素材にしか付与されないし、付与されていることが少ない付与効果だからね」
「そうだったのか」
どうやら、『乾いた大地』はレアな付与効果だったらしい。
「まあ色々な素材に付与される効果だし、入手はそんなに難しくないけどね」
「そうか」
「……他に良い付与効果あるの?」
ここでその話を聞いていたリッカがそんなことを尋ねる。
「MP吸収の他に効果が付いているものもあるからね」
「……例えば?」
「『
「……そう」
と、ここでその二つの付与効果の情報が図鑑に加えられていたので、さり気なく確認してみる。
━━━━━━━━━━
【
絶対なる力は全てを奪い尽くす。特殊付与効果。
敵を倒したときにHP、MP、スタミナが回復して、一定時間、物理攻撃力と敏捷が上昇する。
また、アイテムのドロップ率が大きく上昇する。
さらに、近接物理攻撃時に対象からHP、MP、スタミナを吸収して、確率で物理攻撃力低下、物理防御力低下の効果を付与する(確率判定はそれぞれで独立)。
【霊王の
霊王の
最大MPと魔力が上昇して、一定時間ごとにMPが回復する。
また、魔法攻撃時に対象からHP、MPを吸収する。
さらに、一度の冒険中に一度だけ、蘇生待機状態のときにMPを最大値の半分消費することで、自身を蘇生できるようになる。
加えて、魔法攻撃時に以下の効果が発動する。
○確率で対象に魔法攻撃力低下の効果を付与する。付与に成功した場合、さらに自身に魔法攻撃力上昇の効果を付与する。
○確率で対象に魔法防御力低下の効果を付与する。付与に成功した場合、さらに自身に魔法防御力上昇の効果を付与する。
○確率で恐怖、脱力、減衰、スタンを付与する(確率判定はそれぞれで独立)。
━━━━━━━━━━
……何だこれは? 効果が多すぎるし、そのせいで説明のテキストが長すぎる。
これまで付与効果はおまけのような感じで考えていたが、その認識は改めた方が良さそうだった。
(確かに、これらと比べると『無窮の輝き』は選択肢に上がらないレベルだな)
エルリーチェが『無窮の輝き』をそんなに評価していなかったが、これを見ればそれにも納得だった。
「そうそう、それとこれも渡しておくよ」
と、そんなことを思っていると、ミルファが俺に本を渡してきた。
「これは?」
「それはマテリアルクラフターの作り方が示された本で、それがあれば作れるようになるはずだよ」
「そうか」
どうやら、上位武器は作り方を知らないと作製できないらしく、このような本が必要になるらしい。
「ところで、【クラフトマテリアル】はどうやって作るんだ?」
それはそうと、マテリアルクラフターの攻撃に使う【クラフトマテリアル】の作り方をまだ教えてもらっていない。
なので、忘れずにそれについて聞いておくことにする。
「適当なアイテムを錬金で溶かせばできるよ。マター錬成機があれば効率良く作れるけど、まあ今の君達には関係のない話だね」
「そうか。【石ころ】や【スラグ】なんかで良いのか?」
「それで問題ないよ」
どうやら、作製自体は簡単なようなので、そこはあまり気にする必要はなさそうだった。
「それと、ついでにいくつか錬金の基本のレシピを教えてあげるよ」
ミルファはそう言うと、先程とは別の本を渡してくる。
「助かる。後で見ておこう」
基本のレシピでも、あるとないとでは大違いだからな。
後で錬金をするときに確認しておくことにする。
「何か聞きたいことがあったら、また来ると良いよ。……まあセントラルの本部に戻っているかもしれないけどね」
「分かった。リッカ、行くぞ」
「……うん」
そして、ミルファから有用な話を色々と聞いた俺達は、研究所支部を後にしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます