episode45 闘都コロッセオスの研究所支部
「……着いたな」
俺達はミルファの案内で無事に闘都コロッセオスに到着していた。
道中の敵は全てミルファが倒したので、特に何事もなくここまで来ることができていた。
「ここがコロッセオスか。……あれが闘技場か?」
街に入ったところで正面を見てみると、街の中心には入口からも見えるほどの大きな円形の建物があった。
「そうだよ。まあそれは置いておいて、このまま研究所支部に来ないかい?」
「む? 良いのか?」
研究所は許可がなければ入れない場所だからな。本当に良いのか確認を取る。
「まあ面白いものを見せてもらったからね」
「そうか。リッカもそれで良いな?」
「……うん」
街を見て回ることは後でもできるからな。このまま研究所支部に向かうことにした。
「それじゃあ付いて来て。案内するよ」
そして、そのままミルファの案内で研究所支部に向かったのだった。
◇ ◇ ◇
研究所支部に向かった俺達はそのまま研究室のような部屋に案内されていた。
「ふむ……セントラルの研究所とあまり変わりはなさそうだな」
「まあ支部だからね。構造は似たようなものになっているよ」
外観も規模が小さいだけで、見た目はほぼ同じだったからな。
支部と言うだけあって、基本的に構造は同じになっているようだった。
「そうか。それはそうと、ここまでの案内助かった。礼を言おう」
道中はミルファに敵を倒してもらったからな。
彼がいなければ闘都コロッセオスまで辿り着くことはできなかったので、ここで謝意を伝えておく。
「帰るついでだったから、別に構わないよ」
「そうか。それにしても、リッカはよくあの攻撃を掻い潜れたな」
あれは決して偶然ではなく、狙ってやっていたようだからな。
少しそのあたりのことを聞いてみることにする。
「……全部見る必要ない。ルートに干渉するのだけ見れば良い。後はタイミングを合わせるだけ」
「つまり、決めたルートの方を向いている魔法陣だけを見て動いたということか?」
「うん」
どうやら、全ての攻撃を見て掻い潜っていたわけではなく、接近するルートを決めて、タイミングを合わせて飛び出していたらしい。
言われてみれば、リッカは真っ直ぐとユヅハに接近していたからな。それにも納得だ。
(まあ理論上はそうでも、それを実践できるかどうかは別の話だがな)
それが分かっていたとしても、実践するには相当なプレイヤースキルが必要になるからな。
それもリッカだからこそできたことだと言える。
「ユヅハが手を抜いていたとは言え、最後には【火魔法】の上位のスキルも使わせたわけだしね。上出来だったと思うよ」
「ふむ……あれは【火魔法】の上位のスキルだったのか」
「知らなかったのかい? 詠唱時間が必要なくて、ノックバック効果もあるから、接近されたときに便利だよ。クールタイムは長いけどね」
「そうか。……む?」
と、ここでその話を聞いたからなのか、『緋炎・瞬獄』の情報が手に入っていた。
ひとまず、その情報を確認してみる。
━━━━━━━━━━
【緋炎・瞬獄】
術者の前方に瞬時に炎による爆発を発生させる火魔法。
強力なノックバック効果のある火属性ダメージ。
キャストタイム:0秒
クールタイム:60秒
━━━━━━━━━━
項目にあるキャストタイムというのは、スキルを起動してから発動可能になるまでの時間のことだ。
魔法系のスキルに多く設定されていることから、詠唱時間といった呼ばれ方もしている。
また、クールタイムというのは、そのスキルなどが再使用可能になるまでの時間のことだ。
強力なスキルであるほど長い時間に設定されていて、連発ができないようになっている。
「これは確かに便利そうだな」
ミルファが言うように、接近して来た敵を吹き飛ばすことができるようなので、俺のような遠距離攻撃タイプにとっては便利そうだった。
「……うん。レンジには便利」
「……レンジ?」
「……遠距離攻撃のこと」
それを聞いて理解できなかったと察したリッカは一言説明を入れてくる。
どうやら、俺のような遠距離攻撃がメインの者のことを指していたらしい。
「そうだったか。それにしても、相変わらず色々とあるな」
ここで周囲を見てみると、研究室とだけあって色々な物が置かれていた。
「まあ主に錬金用の設備だね」
「ふむ……これが錬金用の錬金板か?」
「そうだよ」
このゲームでは錬金板という物を使って錬金を行うシステムになっている。
そして、ちょうど台の上に置いてある、一辺が五十センチメートルほどの正方形のこの板が錬金板のようだった。
「興味があるのかい?」
「まあ俺は【錬金】を習得するためにこの街に来たようなものだからな」
ここに来た最大の目的は【錬金】の習得だからな。そう言っても過言ではない。
「それじゃあこれをあげるよ」
そう言うと、ミルファは台の上に置いてある物とは別の錬金板とスクロールを渡してきた。
「……良いのか?」
「余っているからね。その錬金板は初心者用の物だから、アップグレードは自分ですると良いよ」
「アップグレードか……いずれ考える必要がありそうだな」
アップグレードしないと、上位の素材を加工できなくなるだろうからな。
少しは考えておくことにする。
「そうは言うけど、鍛冶用の道具はそろそろアップグレードしないといけないんじゃない?」
「ふむ……確かにそうかもしれないな」
実際ドラガリア峡谷で手に入れた【クロライト鉱石】は加工できなかったからな。
鍛冶道具に関しては早急にアップグレードした方が良さそうだった。
「鍛冶用の道具は炉とハンマーを最優先にアップグレードすると良いよ。金床は必須じゃないから、そっちは余裕があればで良いかな」
「そうか」
「ハンマーは初期のハンマーとは違って耐久度もあるから、それも考えて作ると良いよ」
「分かった」
こちらは分かっていないことも多いからな。そう言ったアドバイスは助かる。
「とりあえず、そのスクロールを使ってみたらどうだい?」
「それもそうだな」
使わない理由はないからな。さっさとスクロールを使ってしまうことにした。
俺は先程受け取ったスクロールを取り出して、そのまま使用する。
【【錬金】のアビリティを習得しました】
すると、そんなシステムメッセージが表示されて、無事に【錬金】の習得が完了した。
「使うだけでスキルなんかを習得できて、スクロールは便利だな」
「作製は面倒だけどね」
「む? 作れるのか?」
「一部の物はね」
どうやら、一部のスクロールは作ることができるらしい。
「まあその錬金板じゃ作れないから、今は気にしなくて良いよ」
「そうか……」
作ることができれば色々とスキルが習得できそうだったが、残念ながら現段階では作ることができないようだ。
「とりあえず、【裁縫】も習得して装備を作るか」
「……うん。武器欲しい」
「いや、それよりも防具だろう?」
リッカは防具を着けていないからな。
武器は耐久度の問題はあるが、使える物はもうあるので、できれば防具を優先したい。
「でも、重量ない方が良い」
「そうは言ってもだな……」
今後のことを考えると、防具は欲しいからな。
重量はどうしようもないので、そろそろ防具は着けてもらうことにする。
「軽い素材で装備を作れば良いんじゃない? 手軽なので言えば、【ルーテッドクリアライトインゴット】あたりかな」
だが、それを聞いたミルファがそんな提案をしてきた。
「軽い素材で作るというのはありだが、重量はゼロにはならないからな……」
いくら軽くても、装備する以上は重量はゼロにならないからな。
軽い素材で作ったところで、リッカの望むようにはできない。
「【クラウドストーン】の固有の付与効果の『浮天の雲海』でも付ければ良いんじゃない? 軽い装備なら重量をゼロにできるはずだよ」
「『浮天の雲海』?」
「重量を下げる付与効果だよ」
「そうか」
どうやら、軽い装備に重量を下げる付与効果を付与することで、重量をゼロにするつもりらしい。
(と言うか、重量はゼロまで下げられるのか……)
重量は一が下限かと思っていたが、実はそうではなかったようだ。
「ところで、あの武器は何なんだ?」
それはそうと、ミルファの使っていた武器は見た目は魔手甲とほぼ同じだが、その性能が明らかに違っていたからな。
少々気になるので、そのことについて聞いてみることにする。
「あれはマテリアルクラフターだよ」
「マテリアルクラフター?」
「まあそれはこれから説明してあげるよ」
「分かった」
聞いたことのない未知の武器だからな。
とりあえず、このままマテリアルクラフターについての説明を聞くことにした。
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