episode39 風化した武器

「まず聞くけど、あんた達はどこまで風化した武器についてのことを知ってるんだい?」

「適当な素材を使って修理すると武器として使えるようになることと、その武器の耐久度が異常に高いことぐらいしか知らないな」


 攻略サイトで軽く情報を集めてみたが、結局集まった情報はこれだけだからな。

 有益な情報は得られなかったので、風化した武器についてのことはあまり分かっていない。


「一応、錆びを落とそうとはしてみたが、残念ながらうまくいかなかったな」

「もしかして、錆びを落とせば使えると思ってる?」

「違うのか?」

「魔力が失われてるから、錆びを落としただけだと使い物にならないよ」


 錆びさえ落とせば使えると思っていたが、どうやら、そんな簡単な話ではなかったらしい。


「つまり、魔力を取り戻す必要があるということか?」

「まあそんなところだね。ただ、それに関してちょっと面白い特性があってね」

「面白い特性?」

「うん。元々どんな魔力が込められてたのかは分からないけど、魔力が失われてるせいか、任意の魔力を込め直すことができるんだよね」

「ええっと……どういうことだ?」


 それだけだとよく分からないので、ひとまず、その詳細を聞いてみることにする。


「例えば、火属性の武器にしたければ、火属性の魔力を込めれば作ることができるし、氷属性の武器にしたければ、氷属性の魔力を込めれば作ることができるってことだよ」

「つまり、任意の属性の武器を作ることができるということか?」

「任意の属性の武器と言うより、任意の魔力が込められた武器っていうのが正しいけど、まあ大体そんな感じだよ」

「そうか。それで、どうすれば魔力を込め直すことができるんだ?」


 とりあえず、様々な武器に派生できることは分かったが、肝心なやり方がまだなので、早速そのことを聞いてみる。


「まずは込めたい魔力を持った素材を使って、武器として使える状態にすることだね」

「どんな素材でも良いのか?」

「基本的に何でも良いけど、使った素材で完成品が決まるから、考えて選んだ方が良いよ」

「何でも良い、か……」


 何でも良いとなると選択肢が多いので、何を使うか悩み所だな。


「まあ属性がある素材を使うのが無難かな。無属性でも特殊な武器ができる物もあるけど、大抵は『無窮の』って名を冠する武器になるからね」

「そうなのか。ついでに聞くが、それはどんな武器なんだ?」

「大した武器じゃないよ。品質を100にすれば『無窮の輝き』っていう付与効果化可能な固有効果が付くのが特徴だけど、それぐらいしかないね」

「ふむ……?」


 そう言われるが、『無窮の輝き』という効果はもちろん初めて聞くし、付与効果化可能な固有効果というのも聞いたことがない。


(図鑑の付与効果一覧には……当然載っていないか)


 ここで図鑑の付与効果一覧を開いて検索してみるが、図鑑には確認したことのある付与効果しか載っていないので、それがどんな効果なのかは分からなかった。


「おや? そんなに気になるのかい?」

「まあな」

「だったら教えてあげるよ。ほら」


 彼女がそう言うと、俺の図鑑の付与効果一覧に『無窮の輝き』が追加されていた。


(情報を得られれば図鑑には載るようだな)


 直接確認しないと図鑑には載らないものだと思っていたが、どうやら、情報を得られれば図鑑に載るらしい。

 情報は得られたので、早速その効果を確認してみる。



━━━━━━━━━━


【無窮の輝き】

 古代の輝きが不朽の力を与える。特殊付与効果。

 耐久度が減少しなくなり、耐久度の減少効果も無効にする。


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 確認すると、『無窮の輝き』の効果は耐久度が減少しなくなるという強力な効果だった。


(特殊付与効果とは何なんだ?)


 それはそうと、特殊付与効果という聞いたことのない用語が出てきたので、それについても確認してみる。



━━━━━━━━━━


【特殊付与効果】

 数ある付与効果の中でも特に強力な付与効果。

 一つの装備品に複数の特殊付与効果を付与することはできない。


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 どうやら、強力な代わりに付与に制限が掛けられた付与効果らしい。


「これはかなり使えそうな効果だな」


 これがあれば、修理が必要なくなって修理する手間が省ける上に、耐久度を気にする必要がなくなるので、かなり便利になる。


「そうかい? 付与コストがそこそこ高いし、貴重な特殊付与効果の枠を使ってまで付けるかと言えば、正直いらないと思うけど」


 だが、高評価な俺とは対照的にエルリーチェはそうでもないようだった。


「そうか?」

「この効果自体は戦闘能力に影響しないし、強い装備品を作ろうと思ったら、候補からは外れるかな」

「なるほどな」


 強い装備を求めるのであれば、他の付与効果を付けた方が良いので、必要ないということか。


「まあ付けたい付与効果があまりない、ピッケルなんかのツール類に付けるのが良いだろうね」

「それが良さそうだな」


 戦闘に関わらないツール類であれば、利点をしっかりと活かすことができるからな。そうするのが一番良さそうだった。


「と言うか、付与効果に付与コストなんてあったのか……」

「そうだよ。まああんたも生産のことに詳しくなれば分かるようになるはずだよ」

「そうか」


(生産のことに詳しく、か……。【鍛冶】や【錬金】なんかの生産系のアビリティのレベルを上げれば良いということか?)


 生産への知識となると、そう考えるのが妥当だからな。

 一定のレベルまで上げると、それが分かるようになるスキルが習得できるものだと思われた。


「ところで、付与効果化可能な固有効果とは何なんだ?」


 それはそうと、さり気なく聞いたことのない単語が出てきていた。

 言葉通りのそのままの意味だろうが、一応どんなものなのかを聞いてみる。


「装備品の固有効果の一部には付与効果にすることができる効果があって、解体の際に還元された素材に付与できるよ。基本的には品質を100にしたときに付与される固有効果が対象だね」


 『装備解体』というのは【鍛冶】アビリティで習得できるスキルで、装備品を解体して素材の一部を還元するというスキルだ。

 その際に装備品に付与されていた付与効果は素材に付与されるが、そこで付与効果化可能な固有効果があった場合にはそれも付与することが可能らしい。


「そうか。それで、武器として使える状態にした後はどうするんだ?」


 少し話が本筋から外れてしまっていたので、ここで話を戻す。


「次は込めたい魔力を持ったモンスターを攻撃して、魔力を蓄積させる必要があるよ」

「どのぐらいだ?」

「必要な量の魔力が蓄積されるまでだね」

「正確には分からないのか?」

「必要な量の魔力が蓄積されたら、武器が淡い光を放つようになるから簡単に分かるよ」

「そうか」


 どうやら、見た目に変化が現れるので、判別については問題なさそうだった。


「で、必要な量の魔力が蓄積されたら、一度装備を解体することだね。そうしたら、『覚醒した』って名を冠する素材になるから、それを使って武器を作れば完成だよ」

「ふむ……中々手間が掛かるな」


 とりあえず、風化した武器を使えるようにするためのやり方は分かったが、その工程は思っていたよりも大変なものだった。


「まあその分強力な物も多いから、作ってみる価値はあると思うよ」

「そうか。余裕があったら作ってみよう」

「おや? 早速、試したりはしないのかい?」

「できれば高品質な物を作ってみたいからな。【錬金】を使えるようになってから挑戦するつもりだ」


 【錬金】のアビリティで覚えられる『良質化合成』を使えばアイテムの品質を上げられるからな。

 手間が掛かることを考えると、できれば高品質な物を作りたいので、『良質化合成』を習得してから挑戦することにする。


「そうかい。それじゃああたしはそろそろ研究に戻らせてもらうよ」

「ああ。悪いな、時間を取らせてしまって。リッカはこの後どうする? 俺は拠点で販売用のアイテムを作製する予定だが」


 俺がアイテムを作製している間は暇だろうからな。

 その間リッカはどうするのかを聞いておく。


「……適当に外にいる」

「そうか。では、行くか」


 そして、話を聞き終わった俺は拠点に戻って、販売用のアイテムを作製したのだった。

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