episode25 竜人専用エリアへ

 三十分の休憩を終えてログインした俺は店の商品を確認していた。


「思っていたよりも売れているな」


 確認してみると、想定していたよりも商品が売れているようだった。

 特に【基本HP回復ポーション】と【コッコアイアンのピッケル】の売れ行きは好調で、この二つは完売してしまっていた。


「……どうするの?」

「まずは商品の補充だな。とりあえず、必要な素材を買いに行く」


 西セントラル平原で集めた素材はあるが、これだけでは足りなさそうだからな。

 ひとまず、街に出て素材を買い集めることにした。


「リッカはどうする?」

「……外にいる」

「そうか。では、準備ができたら呼ぶので、戻って来てくれ」

「うん」


 そして、そのまま拠点を出た俺達はそれぞれで行くべき場所に向かった。



  ◇  ◇  ◇



 街に出た俺は各所で必要な素材を買い集めていた。


「ふぅ……こんなところか」


 一時間ほどNPCの店や市場を回って、何とか必要な分の素材を集めることができた。


「それにしても、人が多いな」


 それはそうと、夜の時間帯になってログインするプレイヤーが増えたのか、街にはさらに人が増えていた。


(予定の変更を検討しても良さそうだな)


 人が多いと狩りもしづらいし、何かと面倒だからな。

 この後は西セントラル平原で【原初の石】を狙って採掘を行うつもりだったが、人が集中しているこの時間帯にする必要もないので、予定を変更しても良さそうだった。


「まあ作りながら考えるか」


 今すぐに決める必要もないので、商品を作製しながら考えることにした。

 そして、その後は拠点に戻って商品の作製を続けたのだった。



  ◇  ◇  ◇



 商品の作製が済んだところでリッカを呼んで、俺達は拠点に集まっていた。


「リッカ、この後の予定を変更しても良いか?」

「……変更?」

「ああ。この時間帯は人が多いからな。【原初の石】と【メタルローズ】を狙って西セントラル平原に向かうより、【竜脈鉱】を狙って竜人専用エリアに向かった方が良いと思ったのだが、どう思う?」


 エルリーチェに要求されたアイテムは【原初の石】、【メタルローズ】、【自然の結晶】、【竜脈鉱】の四つで、どうせその内【竜脈鉱】狙いで竜人専用エリアに向かうことになるからな。

 あえてこのタイミングで【原初の石】と【メタルローズ】を採りに行く必要もないので、先に【竜脈鉱】を採りに向かおうと思ったのだ。


「……でも、敵強い」

「まあ問題はそこだな」


 だが、それに当たって一つ大きな問題があった。

 その問題というのは、専用エリアの敵は始都セントラルの周辺の敵よりも遥かに強いということだ。


 攻略サイトを見ても、闘都コロッセオス周辺で装備を作ってから行くことを推奨されていたぐらいだからな。

 誰も種族専用エリアに行かずに、共通エリア側に人が集まっているのもこれが原因だ。


「……でも、行く」

「分かった。確か、転移用の施設は北だったな?」

「……うん」


 種族専用エリアには転移用の施設から転移することで向かうことができる。

 なので、まずはその施設に向かう必要があった。


「では、行くか」


 そして、種族専用エリアに向かうことが決まったところで、街の北の方にある転移用の施設に向かったのだった。



  ◇  ◇  ◇



「さて、地図によるとこの先のはずだが……あれか?」


 地図を表示したまま歩いていると、無事にそれらしき建物を発見することができた。


「……神殿?」


 その建物は三角形の屋根をした白い建物で、入口の前には等間隔に柱が並んでいた。

 その見た目は一言で言うのなら神殿で、何かが祀られていても不思議ではなさそうな見た目だった。


「とりあえず、入ってみるか。行くぞ」


 そして、そのまま中に入ってみると、そこには広々とした空間が広がっていた。


 床面には四つに分け隔てるかのように十字に線が引かれていて、中央には円形に紋様が描かれている。

 そして、その分けられた床面にはそれぞれの特色を表すかのように異なった紋様が描かれていた。


 さらに、四隅には彫像があり、その手前に転移用の物だと思われる魔法陣が設置されていた。


「ご利用ですか?」


 と、建物内の様子を見ていると、ここの職員だと思われる女性に話し掛けられた。


「そのつもりだ」

「特別許可証はお持ちではないようですね。行き先は竜都ドラガリアでよろしいでしょうか?」

「ああ」


 特別許可証があれば時間制限付きで他の種族の専用エリアに行くことも可能だが、もちろんそんな物は持っていないし、行くつもりもないからな。

 このまま予定通りに竜人専用エリアに向かうことにする。


「ところで、この彫像は誰の彫像なんだ?」


 それはそうと、彫像が少し気になったので、そのことについて聞いてみる。


「順番に説明しますね。まず左奥の彫像が神秘を司る神である秘神ミステアになります」


 左奥にある彫像は腰まで届くロングヘアをした三十代ぐらいの人間の女性だ。

 彼女は秘神ミステアと言って、神秘を司る神らしい。


「右奥にある彫像は獣神ハクアとなります。獣を司る神で、獣人の暮らす地域の奥地にいらっしゃるそうです」


 次に右奥にある彫像が獣を司る神である獣神ハクアらしい。

 その見た目は十二か十三歳ぐらいの少女で、通常の獣人のように耳と尻尾があるのに加えて、両腕の肘から先が獣のものになっている。

 そして、それらの獣の部位はホワイトタイガーがベースになっているようだった。


「左手前にある彫像は深緑を司る神である緑神ドライアになります。エルフの暮らす地域で一部のエルフの者に信仰されているとのことです」


 また、左手前にある彫像は深緑を司る神である緑神ドライアのものらしい。

 腰まで届くロングヘアをしたエルフの女性で、年齢はミステアと同じぐらいに見える。

 彼女は服の代わりに葉が生えた蔦を纏っていて、必要な部分だけを隠している感じなので、かなり露出度が高くなっている。


「最後に右手前の彫像は竜を司る神である竜神ドラークになります。基本的には竜人の暮らす地域にいらっしゃるそうですが、他の地域に行くことも多いそうで、その姿を見た者はあまりいないそうです」


 そして、右手前の彫像が竜を司る神である竜神ドラークらしい。

 彼は下半身と両腕の肘から先はドラゴンのものになっていて、頭部には角、背中には翼が生えている。


「以上になります。お分かりいただけたでしょうか?」

「ああ」

「それでは、竜都ドラガリアに転送しますので、こちらへどうぞ」


 説明が終わったところで、俺達は竜神ドラークの彫像の前にある魔法陣に案内される。


「こちらの魔法陣に乗ると、竜都ドラガリアに転送されます」

「分かった。リッカ、行くぞ」

「……うん」


 そして、リッカと共に魔法陣に乗ると、魔法陣が光って視界が眩い光に包まれた。

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