episode24 ホーリーホーンドラゴン
「グルォ? グオオォォーーン!」
俺の攻撃でこちらの存在に気が付いたホーリーホーンドラゴンは強烈な
「っ⁉」
すぐに敵の動きに備えようとしたが、俺はその
「グオッ!」
怯んでいる俺を見たホーリーホーンドラゴンは隙ありと言わんばかりに飛び掛かって来て、その腕を大きく振り上げる。
(っ⁉ 動けない⁉)
何とかそれを躱そうと動こうとしたが、何故か一切動くことができなかった。
だが、その原因は簡易ステータスウィンドウという、HP、MP、状態変化のみが表示されるウィンドウ見るとすぐに分かった。
(……スタンか)
簡易ステータスウィンドウの状態変化を示す欄を見てみると、そこにはスタン状態であることを示すアイコンが表示されていた。
そう、動くことができなかったのは行動不能になる状態異常であるスタンに掛かっていたからだった。
どうやら、あの
「がっ……」
そして、回避行動を取ることすら許されなかった俺は、そのまま振り下ろされた腕に直撃した。
その攻撃によって大きく吹き飛ばされて地面を跳ねて、後方にあった木に叩き付けられる。
【戦闘不能になりました。戦闘対象のモンスターがボスモンスターのため、戦闘が終了するまでは強制帰還までの制限時間はありません。強制帰還まで――秒】
そして、木に叩き付けられたところで、そのようなメッセージが記載されたダイアログが表示された。
どうやら、一撃でHPを全て持って行かれたらしく、蘇生待機状態になったらしい。
蘇生待機状態というのは、その名の通り戦闘不能になって蘇生待ちをしている状態のことだ。
このゲームでは戦闘不能になった際には即座に拠点に送られるわけではなく、パーティメンバーが一人でも生存している場合や、全滅状態でも蘇生手段がある場合であれば百八十秒後、パーティメンバーが全滅かつ蘇生方法がない場合は三十秒後に拠点に送られる。
そして、その間はアイテムやスキルなどで蘇生することが可能だ。
ただし、ダイアログのメッセージにも記載されているように、相手がボスモンスターである場合は、戦闘が続いている限り強制帰還までの制限時間はカウントされない。
(リッカは……採取ポイントに着いたようだな)
ここでリッカの様子を見てみると、ちょうど採取ポイントに到着したところだった。
「グオーーン!」
だが、俺を仕留めたホーリーホーンドラゴンはリッカの方を向いて攻撃を仕掛けようとしていた。
頭を空に向けて突き上げると、その角に少しずつ光が集まっていく。
そして、その角が集まった光によって眩いほどに輝くと、そこから上空に向けてビーム状の光が放たれた。
すると、今度は上空から一本のビーム状の光が降って来て、その光はリッカに直撃した。
「うぐ……」
その攻撃でリッカのHPは一撃で消し飛んで、彼女はその場にばたりと倒れた。
【パーティが全滅しました。拠点に強制帰還します。強制帰還まで30秒】
そして、それと同時に先程まで表示されていたダイアログが閉じられて、代わりにそのようなメッセージが書かれたダイアログが表示された。
秒数の表示は一秒ごとにその数字が減っていて、カウントダウンされている。
(とりあえず、拠点に帰るか)
パーティが全滅してこれ以上ここにいる意味もないので、さっさと拠点に帰ることにした。
そして、強行採取に成功した俺達はダイアログの「今すぐ帰還」を選択して、カウントダウンを待たずに拠点に戻ったのだった。
◇ ◇ ◇
「む……」
気が付くと、俺は拠点のベッドの上にいた。
(ギルド拠点ではなく自分の拠点か)
確認すると、ここは自分の拠点のようだった。
まあギルド拠点にベッドはないからな。それも当然か。
「とりあえず、ギルド拠点でリッカと合流するか」
ここでは特にすることもないので、ひとまず、リッカと合流することにした。
拠点にあるギルド拠点に直通している扉からギルド拠点に向かう。
そして、扉を開けるとリッカもちょうどギルド拠点に入って来たところだった。
「それで、どうだったんだ?」
竜の巣で採取を行った目的は【聖角竜の古鱗】の入手だ。
見たところ、二回は採取に成功していたようなので、拾えたのかどうかを確認してみる。
「……拾えた」
リッカは一言そう答えると、拾ったという【聖角竜の古鱗】を見せて来た。
「レア枠なのに一発で引けたのか」
「うん」
まあ当初の目的の【メタルローズ】と【原初の石】は出ていなかったしな。その分のツキが回ったか。
「……とりあえず、ログアウトする?」
「いや、その前に装備品の耐久度を回復させておくぞ」
そろそろ時間なのでログアウトしたいところだが、装備品の耐久度がだいぶ減っているので、それを回復させてからログアウトすることにする。
「……分かった」
「とりあえず、装備品はそこに置いておいてくれ。俺が直しておこう」
「うん」
そして、その後は鍛冶台で装備品の耐久度の回復を行って、それが済んでからゲームからログアウトしたのだった。
◇ ◇ ◇
「む……」
気が付くと、視界には毎朝見ている見慣れた部屋の天井が広がっていた。
どうやら、無事に現実世界に戻って来ることができたらしい。
「……とりあえず、夕食にするか」
時間的にもちょうど良いので、まずは夕食を摂ることにした。
装置を外してから机の上に置いていたスマホを手に取って、そのままリビングに向かう。
「今日はカップ麺で良いか」
夕食の準備はしていないし、今から作るとなると時間が掛かるので、今日の夕食はカップ麺にすることにした。
「六華、カップ麺を作っておいてくれ」
ちょうど六華もリビングに来たので、彼女にカップ麺を作っておくよう頼むことにする。
「……うん」
六華はすぐに台所に向かって、カップ麺作り始める。
「さて、俺は情報収集でもしておくか」
カップ麺ができるまで時間があるので、その間にネットで情報を集めておくことにした。
俺は手に持っていたスマホをネットに繋いで、攻略サイトを開く。
そして、そのサイトの掲示板のページを開いた。
「……情報収集?」
カップ麺にお湯を入れて戻って来た六華は、スマホを弄っている俺を見てそんなことを聞いてくる。
「それもあるが、店の宣伝もしておこうと思ってな」
店を経営するに当たって、知名度は重要になるからな。
掲示板に良い店を見付けたといった旨の書き込みをして、俺達の店の情報を広めるつもりだ。
「……そう。この後はどうする?」
「ログインするのは三十分後だ。風呂の準備は俺がするので、六華は適当に待っていてくれ」
家事は午前中に済ませておいたおかげで、特にすることはないからな。
風呂の準備さえ終われば特にすることはないので、それまでは各自自由に過ごすことにする。
「……分かった」
そして、夕食と風呂の準備を手早く済ませて、その後はネットで情報収集をしながら時間になるのを待ったのだった。
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