episode22 西セントラル平原
西門から西セントラル平原に出た俺達は、採取ポイントや採掘ポイントを探しながら北に向かっていた。
次の街であるイストールは西方向なのだが、北は岩山による岩壁となっていて採掘ポイントが多いらしいので、岩山沿いに西に向かって街を目指す予定だ。
「あれは……採取ポイントのようだな」
適当に出会ったモンスターを倒しながら歩いていると、少し離れたところに採取ポイントを見付けた。
辺りにモンスターがいないことを確認したところで、早速そこに向かって採取を始める。
もちろん、ここでの狙いは【メタルローズ】だ。
レア素材なので採取できる確率は低いが、依頼の品である以上何とかして入手する必要があるので、積極的に採取での入手を狙っていくことにする。
「まあそう簡単には行かないか」
しかし、狙いの【メタルローズ】は入手できず、今回採取できたアイテムは【癒し草】と【赤い花】の二種類だけだった。
「そちらはどうだ?」
「……拾えてない」
採取した際に特に反応がなかったので察してはいたが、やはり、リッカも入手できていなかった。
「店の買い取り品に設定するか、市場で探した方が早い」
「それはそうだが、レア素材は割高だからな。調合用の素材も欲しいし、採取は続けるぞ」
彼女の言う通りに、採取での入手を狙うよりも探して買った方が早いが、レア素材なので少々割高なのと、調合用の素材も集めたいので、このまま採取は続けることにする。
「……分かった」
「では、行くぞ」
そして、採取を終えたところで、北の岩山を目指して再び歩き始めた。
◇ ◇ ◇
西セントラル平原の最北である岩山の前にまで来たところで、俺達はそのまま岩壁に沿って西を目指していた。
「採掘ポイントは何か所かあったが……」
「……【原初の石】、出ない」
イストールまでの道のりの半分近くまで来て、見付けた採掘ポイントでは全て採掘しているが、目的の【原初の石】は出ていなかった。
もちろん、採取ポイントでは【メタルローズ】を狙って採取をしているが、こちらもまだ出ていない。
「あそこにも採掘ポイントがあるな」
ここで先の方を見てみると、前方に採掘ポイントがあることが確認できた。
「とりあえず、採掘してみるか」
俺はすぐにそこに駆け寄って採掘を始める。
「……待って」
だが、何故かそれをリッカが止めてきた。
「どうした?」
「……あそこ」
「む?」
彼女が示した方向を見てみると、ホーンラビットという頭部に角の生えた兎のモンスターがこちらに向かって突進して来ていた。
「……っと」
俺はすぐに採掘を止めて、サイドステップで突進を躱す。
「リッカ!」
「……分かってる。『居合斬り』」
「『ウィンドショット』!」
そして、そのまま二人でスキルによる攻撃をホーンラビットに叩き込んだ。
「……これでトドメ」
「リッカ、少し待ってくれるか?」
リッカが後一撃で倒せるホーンラビットにトドメを刺そうとするが、試してみたいことがあるので、少しだけ待ってもらうことにする。
「……良いけど、早くして」
「分かっている」
ここで俺は【失敗ポーション】を取り出して、それをホーンラビットに投げ付ける。
「キュッ⁉」
すると、それを受けたホーンラビットは毒状態になった。
「ふむ、こういう使い方もできるのか」
使っても毒状態になるだけなので、使い道はないかと思っていたが、そんなこともなかったようだ。
「……もう良い?」
「ああ。もう倒して良いぞ」
そして、俺が許可したところで、リッカはホーンラビットにトドメを刺した。
「ふぅ……何とかなったな」
「……周りを確認せずに採掘するからこうなる」
「一応、周りは見たぞ? あの距離なら気付かれないと思っただけだ」
俺も考えなしに採掘を始めたわけではない。
採掘を始める前に周りを確認して、モンスターとは十分に距離があることを確認してから採掘を始めていた。
「……どう見ても採掘の音で気付かれてた」
「む、そうか」
どうやら、距離は離れていたが、採掘の音で気付かれてしまっていたらしい。
「あれで距離は十分だと思ったが、あれでも足りなかったか」
「……兎系モンスターだから、音には敏感」
「む、そういう概念もあるのか」
確かに現実でも兎は聴力が良いが、どうやら、それはこのゲームでも同じらしい。
「と言うことは、他の動物系のモンスターも現実と同じような特性があるのか?」
「……うん。蝙蝠系とか蛇系には暗闇の効果がないとか色々ある」
「そうだったのか」
他にも超音波を用いた反響定位で周囲の状況を探る蝙蝠系モンスターや、ピット器官を使って赤外線で敵を感知することが可能な蛇系モンスターには暗闇の効果がないなど、現実世界のものと同じような特性を持っているようだ。
「さて、ドロップ品は……む?」
ここでホーンラビットのドロップ品を確認してみると、その中に見たことのないアイテムがあった。
「……何かあった?」
「ああ。見たことのないアイテムがあってな」
「……見せて」
「ああ」
俺はそのままリッカにそのアイテムを手渡して見せる。
そのアイテムは【角兎の染毒角】というホーンラビットの角に毒が染み込んだアイテムだった。
ここに来るまでにホーンラビットは何体も倒しているが、このアイテムだけは見たことがなかった。
「……間違いなく条件ドロップ」
「だろうな」
条件ドロップとは特定の条件下でのみドロップするアイテムのことだ。
今回の場合は毒状態で倒すことが条件だと思われる。
「さて、今度こそ周りにモンスターはいないようだし、採掘を始めるか」
「うん」
そして、周囲を見渡してモンスターがいないことを確認してから採掘を始めた。
「む? 何だこれは?」
採掘していると、【風化した刀】という何やら気になるアイテムが手に入った。
ひとまず、その詳細を確認してみる。
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【風化した刀】
遥か前の時代の刀。
その形は保っているものの、完全に錆び付いていて、かつての輝きは完全に失われてしまっている。
このままでは使うことができないので、修理する必要がある。
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名称通り、見た目は全体が錆び付いた刀なのだが、装備品ではなく素材アイテム扱いになっていた。
説明文にも修理する必要があると記載されているので、恐らく修理すれば装備品として使えるようになるのだろう。
「……それ、レア枠」
「そうなのか?」
「うん。【原初の石】より確率低い」
どうやら、このアイテムは入手できる確率の低いレア枠らしく、目的のアイテムである【原初の石】よりも確率が低いらしい。
「そうか。修理すれば使えるようだが、この武器は強いのか?」
「……いや、弱い」
「レアアイテムなのにか?」
「うん」
レアアイテムのようなので強いのかと思ったが、残念ながらそんなことはなかったようだ。
「そうか。それはそうと、あれは何だ?」
採掘を優先して気にしないでいたが、採掘ポイントのすぐ近くには洞窟があった。
「見てみたら?」
「それもそうだな」
このままここから洞窟を眺めていても仕方がないので、ひとまず、その洞窟を見てみることにした。
洞窟を覗き込んで、近くにモンスターがいないことを確認したところで、洞窟に足を踏み入れる。
「ここは……山貫氷窟。ダンジョンか」
洞窟に入ったところでマップを確認してみると、マップ名が「山貫氷窟」になっていた。
その名前から察するに、この洞窟を抜ければ山の向こう側に行くことができそうだった。
「入ってみたは良いが、真っ暗で進めそうにないな」
しかし、洞窟内は明かりがなく真っ暗なので、これ以上先に進むことはできそうになかった。
「引き返すか」
「……うん」
ダンジョンを発見したが、攻略はできなさそうなので、一旦ここのことは置いておいて素材集めに戻ることにした。
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