episode21 西セントラル平原への出発準備
拠点に戻った俺は試行錯誤してアイテムの作製に挑戦していた。
「……ただいま」
「む、帰ったか」
アイテムの作製をしながらしばらく待っていると、呼んでおいたリッカが帰って来た。
「……何かできた?」
「残念ながら、大した物はできていないぞ。市場調査で時間も取られたからな」
拠点に戻る前に市場調査をしたからな。
その分アイテムの作製に挑戦する時間は減ったので、結局、大した物は作れていなかった。
「……もう開店するの?」
「多くのプレイヤーがログインし始めているからな。そろそろ開店しておかないと、乗り遅れるぞ」
ソロでやる以上、店は小規模なものにならざるを得ないが、小規模な店だと客を獲得できるときに稼いでおかないと、最悪、閑古鳥が鳴くことになるからな。
サービス開始という一大チャンスを見送る理由はないので、この波に乗ってスタートダッシュを決めるつもりだ。
「……そう。作れた物見せて」
「分かった」
本当に大した物はないのだが、見たがっているので一応見せることにした。
新たに作製に成功した物を取り出して、それらをリッカに見せる。
新たに作製できた物は【失敗ポーション】、【染料・レッド】、【染料・ブルー】、【染料・パープル】の四つだった。
【失敗ポーション】はその名の通り失敗作のポーションで、何かできないかと色々と混ぜていたら失敗してしまった。
その効果は微弱な毒を付与するというもので、自身に使用するわけにはいかず、正直使い所がない。
【染料】は髪の色の変更や装備品の着色など、色をつける際に使用するアイテムで、基本16色からシルバーを除いた15色、即ちレッド、イエロー、ライム、アクア、ブルー、フクシア、マロン、オリーブ、グリーン、ティール、ネイビー、パープル、ブラック、グレー、ホワイトの15種類が存在している。
【染料】の種類自体は15種類だが、色は赤、緑、青の各数値を0~255の間から設定、つまりカラーコードで指定できるので、16777216色から選択できる。
また、着色の際は選択した色に一番近い色の【染料】を消費することで、着色を行うことができるというシステムになっている。
【染料】の作製に関してだが、レッドとブルーは花を原料にすることで、パープルはレッドとブルーを混ぜることで作ることができた。
ちなみに、原料として使った花はサウシアに向かう道中で拾った物だ。
わざわざ採取のための寄り道はしなかったが、通り道にあった物は採取しておいたので、その際に拾った物を使って作った。
「……ほんとに大した物ない」
「だから、言っただろう? 【MP回復ポーション】ぐらいは作っておきたかったが、結局作ることはできなかったな」
【MP回復ポーション】の作り方は確立しておきたかったので、何とか作れないかと色々と試していたが、結局作ることはできなかった。
「……【MP回復ポーション】は【マナの実】が原料」
「【マナの実】か……少なくとも、サウシアでは売っていなかったな」
サウシアにあるNPCの店は一通り見てみたが、そのようなアイテムはどこにも売っていなかった。
「アナザーレシピを探しても良いが、分かっているのなら【マナの実】を探した方が良いか」
アイテムの作製方法は一つではないので、探せばアナザーレシピが見付かるかもしれないが、分かっているレシピがあるのなら、まずはそれを試してみるべきだろう。
なので、ここは【マナの実】を探しながら次の街であるイストールに向かうことにした。
「それと、忘れていたがこれが新しく作った装備品だ」
それはそうと、作製した装備品をまだ渡していなかったので、忘れない内にリッカに渡しておくことにする。
「どうだ?」
「……繋ぎには十分」
「そうか。まあ本格的な装備品の作製は錬金ができるようになってからするつもりなので、それまでは我慢してくれ」
【錬金】が使えるようになれば、作製できるアイテムの幅が大きく広がるからな。
本格的にアイテム作製の研究をするのは【錬金】習得後の予定なので、もう少し待ってもらうことにする。
「……分かってる」
「では、商品の登録をするので、少し待ってくれるか?」
「……値段は?」
「もう決めてある。これが販売価格を記したメモだ」
アイテムの販売価格は歩きながら決めておいたからな。
後は商品の登録をするだけなので、そんなに時間は掛からない。
「……何でまだ?」
「お前にも値段を見せておいた方が良いと思ってな」
俺の一存で値段を決めるわけにもいかないだろうからな。
リッカも納得した価格で販売しようと思ったので、まだ販売は開始していない。
「……店は任せる」
「良いのか?」
「……うん。私は生産やらない」
どうやら、リッカはアイテムの生産をするつもりがないので、店のことは俺に一任するつもりらしい。
「そうか。では、すぐに終わらせるので待っていてくれ」
リッカの許可が下りたところで、早速、商品の登録を始める。
「……終わったぞ」
事前に値段は決めていたので、商品の登録はすぐに終わった。
「では、出発するか?」
「……ピッケルある?」
商品の登録が終わったところで出発しようとしたが、ここでリッカはピッケルがあるかどうかを確認してきた。
「もちろんあるぞ」
ピッケルは必要になると思って鍛冶で作っておいたからな。
もちろん、ちゃんと準備してある。
「……見せて」
「分かった」
リッカに言われたところで、作ったピッケルを取り出して見せる。
作ったピッケルの性能と付与されている効果は以下のようになっている。
━━━━━━━━━━
【コッコアイアンのピッケル】
耐久:70
品質:12
効果:しなやか
付与:なし
【しなやか】
耐久度の減少を低確率で防ぐ。
━━━━━━━━━━
「……一本だけ?」
「いや、販売用に作れるだけ作ったぞ」
市場や店を見たところ、コッコアイアン製のアイテムは出回っていなかったからな。
この段階で作れる物としては性能は良い方なので、売れると見込んで需要が高いピッケルを作れるだけ作っておいた。
「……そう」
「一本では足りないか?」
「……うん。もう一本」
「分かった。では、一本だけ回収しておこう」
一本では足りないとのことなので、商品から一本だけ回収しておくことにした。
商品の中から【コッコアイアンのピッケル】を一本だけ回収して、それをそのまま手持ちに入れる。
「では、装備品の耐久度を回復させたら出発ということで良いな?」
「……うん」
そして、店の準備と装備品の耐久度の回復を終えたところで、次の目的地である西セントラル平原に行くために西門へと向かった。
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