episode19 NPCへの防具の作製依頼
拠点を出た俺はマップを見ながら、一直線に目的の店に向かっていた。
(プレイヤーが多いな。ログインし始めたということか)
街を出歩いてみると、明らかに街にいるプレイヤーの数が増えていた。
現在の現実世界での時刻は夕方なので、帰宅して初ログインしているプレイヤーが多いらしい。
「さて、目的の店は……あったな」
近くに来たところで周囲を確認してみると、目的の店はすぐに見付かった。
店内には客であるプレイヤーは数人程度しかおらず、そんなに忙しくなさそうなので、今なら話ができそうだ。
「とりあえず、入るか」
外で見ていても仕方がないので、さっさと店に入ることにした。
俺は扉を開けて、店に入る。
「店員さん、少し良いか?」
店に入ったところで、早速、交渉を試みる。
「何だ?」
「これを使って装備品を作って欲しいのだが、良いか?」
俺はそう言って取り出した【コッコの羽】を見せる。
コッコを集中的に狩っていたおかげで、コッコの素材は大量にあるからな。
とりあえず、これを使って作ってもらうことにする。
「何を作って欲しいんだ?」
店員は作製する装備品を具体的に聞いてくる。
(どうやら、作製してもらうことは可能なようだな)
具体的に聞いてきているので、どうやら、装備品の作製を依頼することはできるらしい。
「防具一式だな」
「防具一式か……それなら、頭装備は十五個で帽子、二十五個でフード、体装備は五十個で服、腕装備は十個で手袋、腰装備は二十個でロングパンツなら作れるぞ」
そして、作製品として防具を指定すると、いくつか候補を挙げてくれた。
(要求数が多いが、素材が羽だと考えるとそんなものか)
それなりの要求数だが、素材が羽だということを考えると、別に不当と言うほどのことでもない。
(【ウルフの毛皮】あたりを素材にした方が良かったか? ……まあコッコ素材は大量にあるし、今後使うこともなさそうなので別に良いか)
他の素材であれば要求数は減るだろうが、どうせ今後コッコ素材を使うことはないだろうからな。
要求数は気にせずに使ってしまうことにする。
「足装備は作れないのか?」
それはそうと、候補の中に足装備が一つもなかったので、そのことについて聞いてみることにする。
「【コッコの羽】だけだと無理だな」
「そうか。……【コッコの羽】だけだと無理ということは、他の素材もあれば作れるということだな?」
「おう、作れるぞ。素材として何を追加するんだ?」
「では、これとこれでどうだ?」
ここで俺は【コッコの嘴】と【コッコの鶏冠】を取り出して、それらを素材として追加する。
「【コッコの嘴】と【コッコの鶏冠】か。そうだな……これなら、【コッコの羽】三十個と【コッコの鶏冠】三十個でコート、【コッコの羽】十個と【コッコの鶏冠】五個で靴、【コッコの羽】十個と【コッコの嘴】五個と【コッコの鶏冠】十個でブーツも作れるぞ」
「そうか。では、帽子、服、手袋、ロングパンツ、靴を作ってくれるか?」
「それで良いのか? 魔手甲を使ってると、手袋は装備できないぞ?」
作製する装備品を指定するが、ここで店員がそんな注意をしてくる。
魔手甲は武器ではあるが、手に装備する物なので、これを装備していると手袋系の防具は装備することができないという仕様がある。
なので、俺は腕装備には腕当てのような手に干渉しないような物でなければ装備できない。
「これは連れの分だからな。そこは問題ない」
だが、これらの防具はリッカ用の物だからな。その点に関しては問題ない。
「そうかい。自分の分は良いのか?」
「そうだな……では、フードとコートとロングパンツとブーツを頼む」
「ロングパンツは二つ作るんだな?」
「ああ」
「じゃあ【コッコの羽】百九十個、【コッコの嘴】五個、【コッコの鶏冠】四十五個、それと二千七百ゼルになるが、それで良いか?」
「ああ。これで良いか?」
俺は必要な素材を取り出して、作製代金と一緒にそれらを渡す。
「全部揃ってるな。それじゃあ少し待っててくれ」
そして、素材と代金を受け取った店員はすぐに作業を始めた。
(少々時間が掛かりそうだし、今の内にリッカに連絡しておくか)
このまま何もせずに待っておくのも何だし、そろそろ頃合いなので、リッカに連絡しておくことにした。
(どちらでも良いが、フレンドチャットにするか)
リッカへの通信手段はフレンドチャットとギルドチャットの二つがあるが、別にどちらでも良いので、先に目についたフレンドチャットで連絡することにした。
フレンドの項目からフレンドチャットを選択して、表示されたフレンドリストからリッカを選択して通信を試みる。
(……出ないな)
だが、戦闘中か何かで手が離せないのか、リッカがそれに出ることはなかった。
(仕方がない。メッセージを送っておくか)
なので、ここはメッセージを送っておくことにした。
俺はもうすぐ装備品ができるので、そろそろ戻って来いといった旨のメッセージを作成して、それを送信する。
「できたぞ。受け取ってくれ」
と、ちょうどメッセージを送信し終わったところで装備品ができたらしく、先程の店員が俺のことを呼んでいた。
「すぐに行く」
そして、呼ばれたところですぐに戻ると、そこには完成した装備品が並べられていた。
ひとまず、それらの性能を確認してみる。
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【コッコ羽の帽子】
物防:9
魔防:9
耐久:100
重量:1
品質:8
効果:モコモコ素材
付与:なし
【コッコ羽の服】
物防:13
魔防:13
耐久:150
重量:3
品質:12
効果:モコモコ素材
付与:なし
【コッコ羽の手袋】
物防:8
魔防:8
耐久:100
重量:1
品質:8
効果:モコモコ素材
付与:なし
【コッコ羽のロングパンツ】
物防:10
魔防:10
耐久:100
重量:3
品質:8
効果:モコモコ素材
付与:なし
【コッコ素材の靴】
物防:8
魔防:8
敏捷:1
耐久:100
重量:2
品質:10
効果:モコモコ素材
付与:なし
【コッコ羽のフード】
物防:12
魔防:12
耐久:120
重量:2
品質:10
効果:モコモコ素材
付与:なし
【コッコ素材のコート】
物防:15
魔防:15
耐久:170
重量:3
品質:12
効果:モコモコ素材
付与:なし
【コッコ素材のブーツ】
物防:10
魔防:10
耐久:120
重量:3
品質:12
効果:モコモコ素材
付与:なし
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また、「モコモコ素材」の効果は以下のようになっている。
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【モコモコ素材】
耐寒レベルが0.2上昇する。
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耐寒レベルというのはその名の通り寒さに対する耐性で、寒冷レベルが設定されている寒い場所に行く際に半ば必須になるものだ。
このゲームでは特定の寒い場所には寒冷レベルというものが設定されていて、そこでは耐寒レベルが不足しているとデバフ効果を受けてしまう。
これら装備の場合だと、耐寒レベルは合計で1になるので、寒冷レベル1の場所であればデバフ効果を受けずに済む。
もちろん、寒冷レベル2以上は防ぐことができないが、デバフ効果を軽減することはできるので、一応、耐寒レベル1でも意味はある。
また、寒冷とは逆に酷暑というものも存在し、こちらは耐暑レベルを上げることで対応できる。
ちなみに、これらはあくまで寒冷レベルや酷暑レベルに対して効果を発揮するものなので、氷属性や火属性への耐性には一切関係しない。
つまり、いくら耐寒レベルを上げても氷属性の被ダメージに変化はないし、耐暑レベルの場合も然りだ。
「強化はしなくて良いのか? 四回までなら強化できるぞ?」
ここで店員が装備品を強化するのかどうかを聞いてくる。
(武器よりも強化可能回数が少ないな)
強化限界になるまでの回数は武器は十回なのに対して、防具は四回のようだった。
防具の方が強化限界になるまでの回数が少ないが、武器は基本的には一つしか装備できないのに対して、防具は五部位分を装備できるので、そのあたりの調整だと思われる。
ちなみに、武器が一つしか装備できないことに対して「基本的に」と言ったのは、剣二本装備による二刀流なども可能だからだ。
「強化か……いくらになる?」
「一回につき百ゼルだ」
「そうか。今回は止めておこう」
強化のために三千六百ゼルの出費は割に合わないからな。今回は止めておくことにする。
「装飾品は作らなくて良いのか?」
「ああ。防具だけで十分だ」
装備品には武器、防具の他に装飾品という物もあるが、こちらは効果がメインになる装備品だからな。
一応、多少の防御力はあるが、武器や防具と違って強化することができないので、防御力には期待できない。
なので、大した効果を付与できない現状では作っても仕方がないので、装飾品の作製は見送ることにする。
「さて、市場調査をして帰るか」
そろそろ店を開きたいところだが、そのためには各アイテムのレートを調べる必要があるからな。市場調査をしてから拠点に戻ることにした。
そして、無事に防具を作製し終わったところで、市場調査をしに市場に向かったのだった。
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