episode18 初めての装備強化
「とりあえず、これで試してみるか」
俺が合金の素材に選んだのは【コッコの嘴】だった。
一見すると金属とは合わないように思えるが、【シルバーコッコの嘴】は【オリジンインゴット】の素材になるらしいからな。
【シルバーコッコの嘴】は説明に金属質であることが書かれていたので、使えて当然かもしれないが、こちらはこちらで試してみる価値は十分にある。
「加熱して叩けば良いか?」
詳しいやり方は分からないが、加熱は必要だろうからな。
まずは【アイアンインゴット】を赤熱するまで加熱することにした。
「このぐらいで良さそうだな」
赤熱したところでそれを金床の上に置いて、その上に加熱した【コッコの嘴】を置いてハンマーで叩いていく。
「変化はないな」
とりあえず、一つ合成してみたが、特に変化はなかった。
「さらに二つ追加してみるか」
なので、さらに【コッコの嘴】を追加してみることにした。
「ついでに付与効果の付与も試してみるか」
この際なので、ついでに付与効果の付与も試してみることにした。
俺は『初撃強化(微)』の付与効果が付いている【コッコの嘴】を取り出す。
付与効果というのはアイテムに付与されている特殊な効果のことで、素材アイテムに低確率で付与されているものだ。
付与効果はアイテムの作製の際に移すことができて、対応するアイテムに付与されていると効果を発揮する。
付与効果はある程度自由に移すことができるので、作成に使った素材によって決まってくる効果とは違って自由度が高い。
ちなみに、今回付与する『初撃強化(微)』の効果は以下のようになっている。
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【初撃強化(微)】
HPが100%以上の相手に対して与えるダメージが増加する。
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100%ではなく100%「以上」となっているのは少々気になるが、今はそこを気にしても仕方がなさそうなので、スルーしておくことにする。
「さて、やるか」
俺は先程と同じように、素材を加熱してハンマーで叩いて合成していく。
そして、【コッコの嘴】をさらに二つ合成したところで、合成を止めた。
(……何かが変わったようだな)
ちょうど三つ目を合成したところで、俺はアイテムに変化が起こったことを何となくで感じ取った。
ひとまず、どうなったのかを確認してみる。
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【コッコアイアンインゴット】
品質:10
効果:不純物(大)、銑鉱(超)
付与:初撃強化(微)
説明:コッコの嘴を加えることで、しなやかさを増した金属。
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確認すると、無事に合金のような物ができていた。
(『不純物(超)』が『不純物(大)』になっているのは、精錬と見なされたからか?)
さらに、先程まで『不純物(超)』だった効果が『不純物(大)』になっていた。
どうやら、先程の合成の過程が精錬と見なされたらしい。
「このままリッカ用の武器を作るか」
合金は無事にできたので、このままこれを使ってリッカ用の武器を作ることにした。
「……こんなところか」
そして、俺は先程と同じようにして刀を作製した。
完成品を確認すると、以下のようになっていた。
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【コッコアイアンの刀】
物攻:70
耐久:130
空S:1
重量:5
品質:10
効果:しなやかな金属
付与:初撃強化(微)
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確認すると、【アイアンの刀】よりも攻撃力が高い上に、効果が一つ付与されていた。
ひとまず、どんな効果なのかを確認してみる。
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【しなやかな金属】
ガード時の耐久度の減少を低確率で防ぐ。
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近接武器の耐久度は攻撃の命中時や特定のスキル使用時、武器を使ってガードを行った際などに減少するが、この効果はガードをしたときに確率で耐久度の減少を防いでくれるというものだった。
ちなみに、わざわざ「近接武器は」と言ったのは、遠隔武器だと耐久度に関する仕様が少し異なるからだ。
弓や杖などの遠隔武器の場合は、攻撃を放った時点で耐久度が減少するので、命中したかどうかに関わらず耐久度が減少する。
(この効果はあまり必要なさそうだな)
リッカの戦闘スタイルだと、基本的に武器ガードは行わないので、あまりこの効果は必要なさそうだった。
「強化もしておくか」
装備品は素材を消費して強化することができるので、そちらも済ましておくことにした。
「とりあえず、【アイアン鉱石】を使ってみるか」
強化に使える素材はある程度決まっていて、基本的には強化する装備品に使われている素材のカテゴリに近いアイテムが使うことができる素材になる。
具体的に言うと、金属製の物であれば金属類、鉱石類、宝石類など、皮製の物であれば毛皮類、糸類などといった感じだ。
今回の場合だと金属の武器なので、鉱石類である【アイアン鉱石】を使って強化してみることにする。
「ひとまず、同じようにやれば良いか」
強化対象である【コッコアイアンの刀】と素材として使う【アイアン鉱石】を赤熱するまで熱して、それらを金床の上に置いてハンマーで叩いて強化を始める。
ハンマーで叩く度に少しずつ武器と素材が一体化していき、十数回叩いたところで完全に一つになった。
「ふむ……無事に強化はできたようだな」
完成品を確認してみると、見た目に変化はないが、物理攻撃力が2上がって72になっていた。
「他の素材も試したいところだが、今は止めておくか」
素材によって強化値は変わるはずなので、色々と試してみたいところだが、今は素材にあまり余裕がないので止めておくことにする。
「そんなに手間は掛からないな。とりあえず、強化できるだけ強化しておくか」
強化は複数回できるので、強化できるところまで強化しておくことにした。
俺は先程と同じように【アイアン鉱石】を使って【コッコアイアンの刀】を強化していく。
そして、十回強化したところで、それ以上の強化ができなくなった。
「攻撃力は90まで上がったし、これで十分か」
【アイアン鉱石】を素材にすると、一回の強化で物理攻撃力プラス2なので、【コッコアイアンの刀】の物理攻撃力は90まで上がった。
とりあえず、このぐらいの性能があれば次の街に行くには十分だろう。
ここからさらに強化する方法も存在するのだが、今は必要な素材が不足していてできないので、今回はここまでにしておく。
「さて、次は防具を作りたいところだが、どうしたものか……」
軽い装備を作りたいので、鎧ではなく服系統の物を作りたいのだが、そのためには糸が必要になる。
だが、手元には糸系統のアイテムがなかった。
錬金が使えれば【コッコの羽】あたりから作れそうだが、残念ながらまだ錬金は使えない。
(NPCに作製を依頼してみるか?)
現段階で【錬金】のアビリティを習得しているプレイヤーはいないはずなので、依頼するのであればNPCになる。
しかし、NPCが作製依頼を受けてくれるかどうかは分からないし、そもそもNPCが作製依頼という概念を持っているかどうかも分からない。
「まあ分からないのであれば、試せば良いだけか」
だが、分からないのであれば試せば良いだけの話なので、とりあえず、依頼してみることにした。
そして、方針が決まったところで、拠点を出てNPCの店に向かったのだった。
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