episode17 初めての鍛冶
「さて、まずはインゴットを作ってみるか」
早速、武器を作ってみたいところだが、そのためには金属が必要だからな。
まずはインゴットの作製に挑戦することにする。
「とりあえず、【アイアン鉱石】を製錬したいところだが……まあ乾式製錬一択か」
製錬には炉を用いて鉱石を溶かすことで目的の金属を得る乾式製錬と、鉱石に含まれる目的の金属を液体に溶かして、その溶液から金属を取り出す湿式製錬の二種類がある。
乾式製錬に関しては鍛冶セットに炉が付属しているので問題ないが、湿式製錬に用いる液体はないので、製錬方法は乾式製錬しか選択肢がなかった。
まあそもそもの話をすると、このゲームに湿式製錬による製錬方法が用意されているかどうかも分からないが。
「炉に放り込めば良いのか?」
早速、乾式製錬で製錬したいところだったが、もちろん、俺にその経験はない。
なので、製錬の正しいやり方が分からなかった。
「とりあえず、適当にやってみるか」
一度ログアウトしてネットで調べても良いのだが、そうはせずにこのまま挑戦してみることにした。
俺は炉を起動して、その中に十個の【アイアン鉱石】を放り込んでいく。
「これは魔力炉らしいが……ふむ、MPが減っていっているな」
ここで自分のステータスを確認してみると、MPが時間経過で減少していた。
この炉は普通の炉ではなく、魔力炉という魔力を用いて熱を発生させる炉なので、使用するにはMPを消費する必要がある。
そのため、MPが途中で切れると、そこで火が消えてしまうので注意が必要だ。
魔力タンクという生産時に消費するMPを肩代わりしてくれる設備も存在するが、現段階では入手できないので、その話は置いておくことにする。
「こんなところか?」
それからしばらく加熱したところで、炉の中身を取り出す。
すると、炉の中からは二つのインゴットが出てきた。
(インゴット状になっていることには突っ込んだら負けか?)
ただ鉱石を入れて熱しただけなのに、何故かインゴット状になって出てきたが、そこはゲームだからということで納得しておくことにする。
「鉱石五個でインゴット一つになるのか。とりあえず、情報を見てみるか」
まだちゃんとできているかも分からないので、ひとまず、アイテムの詳細を確認してみることにした。
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【アイアンインゴット】
品質:10
効果:不純物(超)、銑鉱(超)
付与:なし
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効果が付いているので、それも確認してみる。
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【不純物(超)】
多量に混じった不純物。
このアイテムを使って作製したアイテムが本来の性能を発揮できなくなることがある。
【銑鉱(超)】
製錬の際に混じった多量の成分。
このアイテムを使って作製したアイテムの耐久度が低下する。
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確認してみると、製錬は無事にできたようだが、二つのデメリット効果が付いてしまっていた。
ここで耐久度について説明しておくと、装備品には耐久度というものが設定されていて、この値がゼロになると破損状態になる。
破損状態になると、その装備品は使用できなくなるので、耐久度の管理には注意が必要だ。
破損した装備品の修理や耐久度の回復は専門のNPCの店で依頼するか、【鍛冶】アビリティ持ちが金床を使うことで行うことができる。
ちなみに、耐久度の回復であれば専用のアイテムで回復可能なので冒険中でも行えるが、修理はそうではないので、耐久度が切れないように管理するのが基本だ。
「デメリット効果が付いているのは、作り方が悪かったか、ここからさらに精錬しろということなのだろうが……まあ今回はこのままやるか」
ここから精錬すればこれらのデメリット効果は消せるかもしれないが、今回はこのまま装備品を作製することにした。
本当は色々と試したいところなのだが、今は素材があまりないからな。
試行錯誤はもう少し余裕ができてからにする。
「さて、やるか」
俺はインゴットの一つを炉に入れて、赤熱するまで熱していく。
そして、インゴットが赤熱したところで取り出して、ハンマーでインゴットを叩いて刀の形に変形させていく。
(意外と簡単にできるな)
現実だとこんなに簡単に理想通りの形に変形させられないだろうが、このゲーム内では何かしらの補正が働いているのか、簡単に変形させることができていた。
「こんなところか」
そして、変形させ終わったところで、刀を水に入れて冷やして完成させた。
「とりあえず、確認してみるか」
完成したところで、早速その性能を確認する。
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【アイアンの刀】
物攻:60
耐久:100
重量:5
空S:1
品質:10
効果:なし
付与:なし
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空Sは空きスロットのことで、空きスロットには様々な効果がある宝珠を
ちなみに、装備品のパラメーターに関してだが、物防、魔攻、魔防はゼロなので省略した。
今後もゼロのパラメーターは省略することにする。
「まあ初期装備よりかはだいぶマシか」
そんなに性能が良いわけではないが、今はこれで満足しておくことにする。
「見た目は後で何とかしておくか」
武器として使える状態になったは良いが、インゴットを刀の形に変形させただけなので、無骨な見た目になってしまっていた。
これで完成というわけにもいかないので、後で持ち手のあたりを適当に装飾しておくことにする。
「他の素材でも作れるか試してみるか」
ひとまず、金属製の物は作ることができたので、今度は他の素材を試してみることにした。
俺は倉庫を確認して、良さげな素材を探す。
「ふむ、骨製なんてどうだ?」
俺が目をつけたのは【ウルフの骨】だった。
骨であれば武器になりそうだからな。今度はこれで作ってみることにする。
俺は【ウルフの骨】を取り出して、それを先程と同じように加熱していく。
(作り方はこれで大丈夫なのか?)
金属製の物と同じやり方でやっているが、失敗したら別のやり方を考えれば良いので、このまま続けることにした。
「このぐらいで良いか?」
ある程度、加熱したところで、炉から【ウルフの骨】取り出す。
そして、それを金床の上に置いて、ハンマーを降り下ろした。
「あ……」
しかし、ハンマーを降り下ろすと、骨は粉々に砕けてしまった。
ひとまず、骨の状態を確認してみる。
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【骨粉】
砕けて粉々になった骨。肥料として使える。
もちろん、一瞬で育つようなことはない。
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確認してみたが、別のアイテムになってしまっているので、もうこれは使えそうになかった。
(手間が掛かりそうだし、大した物もできそうにないので、骨製の物を作るのは止めておくか)
少々手間が掛かりそうなのと、完成しても性能はあまり良くなさそうなので、骨製の武器を作るのは止めておくことにした。
「次は合金を試してみるか」
とりあえず、鍛冶のおおまかな流れは分かったので、次は合金の作製に挑戦してみることにした。
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