episode11 初めてのボス戦

 南に向かう俺達は道中のコッコを倒しながら次の街を目指していた。

 何故コッコばかりを狙っているのかと言うと、ドロップ品が多く、このエリアに出現する通常のモンスターの中で一番稼ぎが良いからだ。

 なので、他のモンスターよりもコッコを優先して倒しながら進んでいる。


「サクサク倒せるな」

「まあ初期装備でも攻略できるように調整された最初のエリアだからな。……そう言えば、SPは振ったのか?」


 ここでソールがそんなことを聞いてくる。


「いや、まだだぞ」

「アビリティのレベルが上がってSPも増えただろうし、振っておいたらどうだ?」

「そうするか」


 どうせその内割り振ることになるからな。SPも増えたので、今割り振ってしまうことにした。


 俺はメニュー画面を開いて、ステータスボードの項目を選択する。


「ふむ……ボードは全部で十個か」


 確認すると、ステータスボードは全部で十個あった。

 それらは全て「○○基礎」という名前のボードで、○○の部分はそれぞれHP、MP、筋力、靭力、魔力、理力、敏捷、器用、効力、竜人となっている。


「その十個が初期からあるボードになるな」

「特定の条件を満たせば増えるんだったよな?」

「そうだぞ。まあ新たなボードに備えてSPを温存しても良いが、必要なステータスの基礎には迷わず振っても良いと思うぞ」

「それもそうだな」


 俺はそう言ってMP基礎のステータスボードを開く。


「ツリー形式とは聞いていたが……これだとその意味がないな」


 ツリー形式とは言っても、このボードは一本道になっているので、選択の余地はなさそうだった。

 ちなみに、十個あるパネルの内容は全てMP+3になっている。


「まあ最初のボードだからな。ちなみに、線が複数繋がってるやつは、前提となるパネルを全部取らないと取れないぞ」

「そうか。ところで、SPは三十二ポイントあるが、こんなに手に入るのか?」

「初期から三十ポイントは持ってるぞ」


 どうやら、初めから三十ポイントは持っていたらしく、アビリティのレベルアップで獲得したのは二ポイント分だけのようだ。


「そうか。とりあえず、MP基礎は全部取っておくか」


 俺はSPを十ポイント使って、MP基礎の全てのパネルを解放する。



【【MP基礎】のステータスボードをコンプリートしたので、コンプリートボーナスを獲得しました。※この通知はオプションでオフにすることができます。[オプションに移動する][閉じる]】



 すると、そのようなメッセージが表示された。

 ここでMP基礎のボードの左上の方を見てみると、そこには「コンプリートボーナス:MP+10」と表記されていた。


「コンプリートボーナスもあるのか」

「知らなかったのか? まあそれも考えて取ると良いぞ」


 場合によってはコンプリートボーナス目的でパネルを取ることも選択肢に上がりそうだな。


「そう言えば、ステータスを確認したことがなかったな。少し見てみるか」


 それはそうと、ゲームを始めてからまだ一度もステータスを見たことがなかった。

 なので、ここで一度ステータスを確認してみることにした。


 俺はメニュー画面のステータスの項目から自分のステータスを表示して確認する。



━━━━━━━━━━


【シャム】

HP:500/500

MP:148/297

物理攻撃力:60(+0)

物理防御力:60(+30)

魔法攻撃力:94(+30)

魔法防御力:50(+20)


━━━━━━━━━━



 確認すると、俺のステータスはこんな感じになっていた。


「ところで、この括弧内の数値は何なんだ?」

「括弧内の数値は装備品による加算分だな。まあ設定でその辺の表示は変えられるが、デフォルトの設定ならそうなってるはずだぞ」

「そうか」


 つまり、魔法攻撃力の場合だと、素の値が64、装備品による加算分が30ということか。


「素のステータスを見たいのなら、詳細ステータスを確認すると良いぞ」

「分かった」


 折角なので、ここで詳細ステータスの方も確認してみることにした。



━━━━━━━━━━


筋力:60

靭力:30

魔力:64

理力:30

敏捷:70

器用:50

効力:70


━━━━━━━━━━



 詳細ステータスを確認すると、こんな感じになっていた。

 他にも属性耐性や各種状態異常耐性など色々と項目はあったが、今は気にしなくて良さそうなので、それらは置いておくことにする。


「後は……竜人基礎のMP増加の分だけ取っておくか」


 竜人基礎のステータスボードは中心から三方向に線が別れていて、その先にはそれぞれMP、敏捷、効力増加のパネルがある。

 なので、MP増加のパネルだけ取っておくことにした。


「このパネルは……取れないか」


 その中には敏捷側や効力側に前提となるパネルがあって取れない物もあるが、それらは置いておくことにする。


「SP振りは済んだか?」

「ああ」

「じゃあそろそろ行こうぜ」

「そうだな。リッカも行くぞ」

「……うん」


 そして、ステータスボードにSPを振り終わったところで、移動を再開したのだった。



  ◇  ◇  ◇



 それから出会ったモンスターを倒しながらしばらく歩いていると、ようやく次の街の近くにまで辿り着いた。


「やっと近くまで来たね」

「そうだな」


 マップを確認すると、現在地はこのエリアの最南端付近だった。

 間もなく最南端の位置にまで辿り着くので、次の街はもうすぐのはずだ。


「それにしても、ここまでマップが広いなんてね……。まさか狭いって聞いてたのに一時間も掛かるなんて思ってなかったよ」


 クオンの言うようにマップが思っていたよりも遥かに広く、始都セントラルを出発して既に一時間近くが経過していた。


「そうだな。確かに、これなら地図に十万出すのも分かるな」


 モンスターを倒しながらとは言え、最短に近いルートでも最北端から最南端まで移動するのに一時間も掛かっていた。


 事前に聞いていた話だと、確認されている限りでは一番狭いエリアとのことだったので、もっと早く着くかと思っていたがそんなことはなかった。

 測ったわけではないので正確には分からないが、このエリアの南北方向の長さは三キロメートル近くはあったように思える。


 このエリアの地図は次の街で十万ゼルで売っているらしいが、これだけ広いと歩いてマップを埋めるのはかなり手間なので、それだけのお金を出して地図を買うのも理解できる。


「さて、後は名ばかりのボスであるエクスシードスネークを倒せば次の街だな」

「そう言えば、ボスがいるんだったな」


 ここまでは特に問題なく辿り着けたが、この先にはボスモンスターが待ち構えている。

 ここで負けるとあっという間に始都セントラルまで逆戻りなので、まだ油断ならない。


「ボスはどんな感じなんだ?」


 ひとまず、どんな感じの敵なのかをソールに聞いてみる。


「HPが多いだけの雑魚敵って感じだな。尻尾で叩くか噛み付くかしかして来ないし、特に注意すべき点もないぞ」

「……そんなに弱いのか?」

「言ったろ? ソロで初期装備でも簡単に倒せるぐらいだって」


 まあ確かにそう言ってはいたが、そこまで弱いのか……。


「ほら、ボスのお出ましだぞ」

「……あれか?」


 そう言われて前方を見てみると、そこには五メートル近い体長の蛇がいた。

 どうやら、あれがボスであるエクスシードスネークのようだ。


「それじゃあ俺が攻撃を引き受けてるから適当に攻撃しててくれ」

「分かった」


 そして、ソールが真っ先に敵に接近すると、そのままエクスシードスネークの攻撃を引き受けた。


「キシャァーー!」


 エクスシードスネークは尻尾でペチペチとソールを攻撃しているが、彼はタンク役とだけあって防御を固めているからなのか、HPはあまり減っていない。


「……『居合斬り』」

「『パワーショット』!」

「『ウィンドショット』」


 そして、ソールが攻撃を引き受けている間に、俺達はスキルによる攻撃を叩き込んでいく。


「思っていたよりもHPが減るのが早いな」


 エクスシードスネークが思っていたよりも弱く、攻撃を当てる度に目に見えてHPが減っていっていた。

 そして、スキルによる攻撃を合計で十五発ほど叩き込んだところで、エクスシードスネークはHPが尽きて倒れた。


「あれ? もう終わり?」

「どうやら、そのようだぞ」


 ソールの言っていた通りにボスはかなり弱く、これならソロで初期装備でも簡単に倒せるというのも納得だった。


「まあ最初のボスだからな。チュートリアルの一環だと思えばこんなものじゃないか?」

「それもそうか……む?」


 と、そんな話をしていたところで、システムからのメッセージが表示された。



【称号【ボス討伐、始めました】を獲得しました】



 メッセージは称号獲得のお知らせだった。

 称号というのは一定の条件を満たすと獲得できる物で、獲得した称号はプロフィールに設定することができる。

 基本的にはコレクション要素の強い要素だが、獲得すると称号に応じた効果が恒久的に付与される物も存在している。


 ちなみに、道中で敵の討伐数が百体になったときに【狩り初心者】の称号を獲得しているので、初めての称号というわけではない。


「とりあえず、ドロップ品を見てみようぜ」

「そうだな」


 確認すると、ドロップ品は【エクスシードスネークの牙】一個、【エクスシードスネークの鱗】四個、【エクスシードスネークの皮】一個だった。


「……どうかしたのか、クオン?」


 ここでクオンの様子を見てみると、彼女は何故か少し不満そうにしていた。

 ひとまず、その理由を聞いてみる。


「いやー……撮れ高がなさ過ぎたからさー……。動画どうしようかなって」


 どうやら、動画のことを気にしていたようだ。

 まあ確かにボス戦は特に何も起きることなくあっさりと終わったからな。動画にしても見所はなさそうだ。


「とりあえず、街に入ろうぜ」

「それもそうだね」


 そして、ボス戦を終えたところで、そのまま次の街に向かったのだった。

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