episode10 レアモンスター
最初の戦闘のときと同じように、ソールがターゲットを取ったことを確認したところで、俺達は攻撃を始めた。
「はあっ!」
「……ふっ……」
「『ウィンドシュート』」
「えいっ!」
俺達はそれぞれで適当に攻撃して、シルバーコッコのHPを削っていく。
「そろそろ半分を切るな」
HPが半分を切りそうになっていたので、ここで一旦、攻撃を止める。
「あと一発でちょうど良いかな? えいっ!」
そして、最後にHPの調整のためにクオンが矢を放った。
「コケッ⁉」
「あ……」
だが、その攻撃は弱点である頭部に当たって、クリティカル判定になってしまった。
その結果、シルバーコッコのHPが半分を切ってしまう。
「コケッ!」
HPが半分を切ったシルバーコッコはすぐに逃走を始める。
「あーーー⁉ ごめぇぇーーーん!」
「謝る暇があるなら攻撃してくれ! 『ウィンドシュート』」
あの速度だと追い付けそうにないので、こうなった以上、遠距離攻撃でどうにかするしかない。
俺はすぐに逃げた先を狙って攻撃する。
「コケッ!」
「と……跳んだーー⁉」
しかし、その攻撃はバサバサと羽ばたきながら
どうやら、現実世界の鶏と同じように
「このままだと逃げられちゃうよ!」
「……任せて」
だが、シルバーコッコが跳んで減速している隙に、リッカが攻撃の届く範囲にまで接近していた。
「……『居合斬り』」
追い付いたリッカはそのままスキルによる一撃を叩き込む。
「『シールドバッシュ』!」
それに続いて追い付いたソールもスキルによる攻撃を加える。
「コケッ⁉」
ノックバック効果のある攻撃を受けて、シルバーコッコは吹き飛んで浮き上がる。
「これで決めるよ! 『パワーショット』!」
「『ウィンドシュート』」
そして、俺とクオンで着地点を狙ってスキルによる攻撃を放った。
「コケーーーッ!」
すると、その攻撃は見事に直撃して、シルバーコッコはHPがゼロになって倒れた。
「何とか逃げられずに済んだな。……む?」
と、ちょうど戦闘が終わったところで、目の前にウィンドウが表示された。
【【風魔法】のアビリティレベルが2になりました】
どうやら、先程の戦闘で【風魔法】のアビリティのレベルが上がったらしい。
アビリティというのは、定められた条件を満たすと習得することができるもので、習得すると何かしらの効果を発揮したり、スキルを習得できたりするというものだ。
アビリティにはレベルがあり、そのアビリティに関係する行動を取るとレベルが上がって効果が上がり、所定のレベルに到達すると、新たにスキルを習得できたりする。
今回上がった【風魔法】の場合であれば、このアビリティのレベルに応じて最大MPと魔力が上昇して、一定のレベルに到達するとスキルが習得できる。
「どうした?」
「先程の戦闘で【風魔法】のレベルが上がってな」
「そうか。とりあえず、新しいスキルを確認してみたらどうだ?」
「それもそうだな」
【風魔法】のレベルが上がったことで新たにスキルを覚えたはずなので、早速それを確認してみることにした。
メニュー画面のステータスの項目からスキルの項目を選択して、先程覚えたスキルを確認してみる。
「『ウィンドショット』が増えているな」
すると、新たにスキルが追加されていることが確認できた。
「ベータテストのときと同じみたいだな」
「そうなのか」
「……って言うか、シャムは調べてないのか?」
「情報はざっくりとしか調べていないからな」
このゲームに関しての情報はある程度は調べているが、初見の手探り感も楽しみたかったので、そこまで詳しくは調べていない。
なので、調べれば分かることでも何かと知らないことは多い。
「そうか」
「ところで、何故リッカは防具を外しているんだ?」
それはそうと、リッカは防具を全て外して、スパッツに肌着だけというインナーだけの状態になっていた。
ひとまず、防具を外している理由を聞いてみることにする。
「……その方が速い」
「つまり、シルバーコッコに追い付くために防具を外したのか」
「……うん」
防具を外せばその分だけ重量が減って、行動速度が上がるからな。
どうやら、逃げるシルバーコッコに追い付くために防具を外したらしい。
「とりあえず、防具を着け直したらどうだ?」
もう防具を外しておく必要は無いからな。さっさと装備させ直すことにする。
「……このままで良い」
だが、リッカは何故かそれを拒否した。
「何故だ?」
「……動きやすい」
どうやら、防具を外した状態の方が動きやすいので、このままの状態でいたいらしい。
「そんなに変わるのか?」
「……うん」
「……まあ最初のエリアだし、大丈夫か」
ここの敵はそんなに強くないので、すぐにやられることはないだろうし、タンク役のソールもいるからな。
反対して不貞腐れても面倒なので、ここはその状態でいることを許可することにした。
「とりあえず、ドロップ品を見てみない?」
「それもそうだな」
ドロップ品も気になるところなので、ひとまず、ドロップ品を確認してみることにした。
確認すると、ドロップ品は【シルバーコッコの羽】三個、【シルバーコッコの嘴】一個、【シルバーコッコの鶏冠】一個、【シルバーコッコの鶏肉】一個だった。
「何と言うか、普通のコッコと変わらないな」
ドロップ品はシルバーコッコの物になっただけで、コッコの物と変わりはなかった。
「まあ普通のコッコとは違って嘴と鶏冠も確定ドロップするけどな」
「そうなのか?」
「ああ。報告を見た感じだとそうっぽいぞ」
シルバーコッコの素材で何を作ることができるのかは知らないが、出現率が低確率な上にドロップが確率だと素材集めがかなり面倒なので、それはありがたいことだな。
「他のレアモンスターもそうなのか?」
「いや、モンスターによっては確率ドロップの物もあるぞ」
「……そうか」
残念ながら、全てのレアモンスターがそういうわけではないらしい。
「とりあえず、レアモンスターは見付け次第、倒しに行った方が良いんだね」
「いや、そうとも限らないぞ」
「そうなの?」
そう返されたクオンは首を傾げながら聞き返す。
普通に考えれば倒しに行った方が良いに決まっているが、どうやら、そうとは限らない理由があるようだ。
「シルバーコッコの場合はそんなに強くないから問題ないが、モンスターによっては全然強さが違う場合もあるからな。例えば、ストーンゴーレムのレアモンスターになるエンシェントゴーレム――プロトタイプはかなり強くて、そのエリアの適正レベルだとまず倒せないな」
「そうなんだ」
どうやら、モンスターによっては強さが違う場合があるらしく、倒すことが難しい場合もあるようだ。
「さて、もうシルバーコッコは片付いたし、そろそろ行こうぜ」
「そうだな」
そして、無事にレアモンスターであるシルバーコッコの討伐が終わったところで、次の街を目指して再び歩き始めた。
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