episode7 ギルドの作成

 向かいの店で【調合セット】と【鍛治セット】を購入した後は、そのままギルド管理協会に向かった。


「何と言うか……役所みたいだな」


 建物内に入ると、そこには受付が横一列に並んでいて、役所のような印象を受ける場所だった。


「とりあえず、【ギルド証】を買うか」

「……うん」


 ひとまず、目的である【ギルド証】を買うために受付に向かうことにした。


「【ギルド証】はあるか?」


 受付に着いたところで、職員に【ギルド証】を売っているかどうかを確認する。


「はい、ありますよ。十万ゼルになります」

「一つ頼む」


 そして、代金である十万ゼルを渡して、【ギルド証】を受け取った。


「このままギルドを作成しますか?」

「ああ」

「ギルドに関しての説明を聞きますか?」

「ああ、頼む」


 聞かなくてもおおよその仕組みは分かるが、知らないこともあるかもしれないので、一応、話は聞いておくことにした。


「ギルドとはプレイヤー同士で形成されるグループのことで、人数は最大で三十人となります」


 ギルドの最大人数は三十人のようだが、他のメンバーを入れるつもりはないので、俺達には関係のない話だな。


「ギルドを作成すると、ギルドメンバー全員で共有して使うことができるギルド専用の拠点を利用することが可能になります。また、ギルドメンバーのみがやり取り可能な、ギルドチャットも利用可能になります」


 後者は初耳だったが、前者に関してはソールから聞いていたので知っている。


「ギルドメンバーの役職にはリーダーとサブリーダーの二つがあり、リーダーは一人、サブリーダーは最大で三人になります」

「最大で三人ということは、設定しなくても良いのか?」

「はい。サブリーダーはリーダーと違って必須ではありませんので、設定していなくても問題ありません」


 リーダーは当然必須だが、どうやら、サブリーダーはそうではないらしい。


「それで、リーダーとサブリーダーの違いは何なんだ?」

「リーダーとサブリーダーでは権限が違い、リーダーにはあってサブリーダーにはない権限があります」

「詳しく説明してくれるか?」

「分かりました。サブリーダーでもできることは、加入申請の承認及び拒否、メンバーの追放、メンバーの勧誘、ギルド専用拠点のレイアウトの変更、メンバーの募集形態の変更になります」


 意外とサブリーダーでもできることは多いな。


「そして、リーダーでなければできないことはギルドの解散、リーダーの交代、サブリーダーの任命及び解任になります。サブリーダーに付与する権限に関しては個別に設定可能です」

「なるほどな」


 つまり、一部の権限のみを付与することもできるということか。


「リーダー及びサブリーダーは追放することができませんので、サブリーダーを追放したい場合は一度解任してから追放してください」

「分かった」

「最後に募集形態になりますが、募集形態は誰でも、条件付き、勧誘のみ、募集しないの四つから選択することができます。詳細をお聞きになりますか?」

「ああ、頼む」


 メンバーを募集するつもりはないので、俺達にはあまり関係のない話かもしれないが、一応、聞いておくことにする。


「誰でもは制限なしに誰でも申請をすることが可能で、条件付きは申請条件を設定して募集することができます。条件を満たしていないプレイヤーは申請することができません」

「そうか」


 メンバーを募集するつもりはないし、設定できる条件の内容までは聞かなくて良いか。


「勧誘のみはメンバー募集掲示板に掲載されないので申請することはできず、ギルドからの勧誘によってのみギルドに加入可能です。募集しないはメンバーの募集を一切行わず、メンバー募集掲示板にも掲載されません」

「そうか。分かった」


 一応、聞いてみたが、おおよそ想像通りの内容だったな。


「これでギルドに関しての説明は以上になります。改めてお聞きしますが、ギルドを作成しますか?」

「ああ、頼む」

「ギルド名はどうなさいますか?」

「ふむ、ギルド名か……」


 そう言えば、そのことは全く考えていなかったな。


「……? どうした、リッカ?」


 ここでリッカが小声で何かを伝えて来る。


「……『永夜の初雪』とかどう?」


 何の話かと思って聞いてみると、リッカはギルド名を提案してきた。


「構わないぞ。では、ギルド名は『永夜の初雪』で頼む」


 こちらとしては特にギルド名に拘りはないからな。

 ここは彼女の要望を受け入れることにする。


「分かりました。リーダーはシャムさんでよろしいですか?」

「ああ」

「それでは、【ギルド証】を一ついただきます」

「分かった」


 そして、先程購入した【ギルド証】を渡すと、職員の女性はそれに何かを書き込み始めた。


「これで正式にギルドが作成されました。募集形態はどうなさいますか?」

「勧誘のみで頼む」

「分かりました。募集形態の変更はこのギルド管理協会でのみ可能ですので、変更したい場合はお手数ですがリーダーかその権限を持ったサブリーダーの方が直接お越しください」

「分かった。……早速リッカをメンバーに加えるか」


 ギルドの作成は無事に完了したので、早速リッカをメンバーに加えることにした。

 メニュー画面のフレンドの項目からリッカを選択すると、ギルドに勧誘するという選択肢があったので、それを選択して勧誘する。


「……承認した」

「サブリーダーは……どう設定するんだ?」


 そのままリッカをサブリーダーに設定しようと思ったのだが、そのやり方を聞いていないので、どうすれば良いのかが分からなかった。


「サブリーダーの設定はギルド拠点内で行えるギルド管理の項目から設定することができます」


 だが、このことは話を聞いていた先程の職員が説明してくれた。


「そうだったのか。悪いな、色々と説明してもらって」

「いえ、それが仕事ですので」

「そうか。……む?」


 と、そんな話をしていたところで、フレンドからメッセージが送られてきた。

 確認すると、それはソールからのものだった。


「……どうしたの?」

「ソールからメッセージが届いてな。どうやら、撮影が終わったらしい」


 内容を確認すると、クオンの動画用の撮影が終わったので、合流しようという内容だった。


「……じゃあ行く?」

「そうだな。ここでの用も済んだし、さっさと行くか」


 そして、用事を済ませた俺達は二人と合流しに集合場所である南門に向かった。

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