第2話

 好きな人…かぁ。私は自分の部屋の椅子の上でため息を吐いた。

 「もういるんだよぉぉぉぉ!!」綺羅は伸びすると同時に言った。都愛には好きな人がいないって思われてるけど、ほんとはいる。隣のクラスの健人という人気者だ。好きになったきっかけは1年前、彼が文化祭で披露したいわゆる「歌ってみた」で完全に虜になってしまった。それから廊下ですれ違う度、ドキドキしてしまう。

 「勉強しよ。」綺羅は気持ちを切り替え、勉強モードに入った。これでも綺羅の成績は学年トップだ。勉強することによってその日のイヤなことを忘れようと中学2年生の時に始めた勉強だったが、今になっては日課になっている。そのおかげで学年一位をゲットできた。ちなみに健人は学年二位で、テストの度に悔しがっている。

 プルルルルル

 綺羅の携帯がなっている。おそらく都愛からだろう。 

 「もしもし。」綺羅は電話に出た。

 『綺羅ぁ!都愛だけどさ、ちょっといい?』と都愛が言う。

 「いいよ。」特に断る理由がなかったので、了承した。

 『ありがと!…あのさ、その、』都愛はやけに口ごもっていた。

 「ん?どしたの?」

 『私、好きな人がいるの』

 ドクンッと綺羅の心臓が鳴った。

 「そうなんだ。だれなの?」綺羅は少しビックリしたが、迷わず聞いた。後で後悔するとも知らずに。

 『綺羅も知ってると思うけど、1組の健人君。』と、都愛が恥ずかしそうに言った。

 「え。」綺羅は自分の耳を疑った。今、健人君って言った?ということは、そういうこと?

 「そ、そうなんだ。でもいきなりどうしたの?」綺羅はなるべく平然を装って答えた。

 『ずっとヒミツにしてるのも罪悪感っていうか、綺羅とはヒミツつくらないっていつも話してるから。なんか、苦しくて。』

 また、綺羅の心臓がドクンッと鳴った。

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