もう、伝えられない
岡本 祐二(おかもと ゆうじ)
第1話
あの日ちゃんと伝えてれば、後悔なんかしなかったのに。私は玄関の前でガクッと崩れ落ちた。目の前がチカチカする。·····あれ?
「ねぇ、都愛!都愛ってば!」
私はゆっくり目を開ける。そこには幼なじみで同じ高校に通っている綺羅がいた。綺羅とは13年の付き合いで中学2年の夏、絶対同じ高校に行こうと決めていたのだ。
「綺羅、どうしたの?」
「どうしたのって都愛あたしの話聞いてた?」綺羅は不満そうな顔で言った。
「話?何言ってるの綺羅。それに私は家の玄関にいたはずなのに。」私は呟いた。そうだ、私は家の玄関にいたんだ…。
「都愛、それマジで言ってる?」綺羅が私の顔をのぞきこむ。
綺羅どうしちゃったの?どうして私は学校にいるの?…様々な疑問が頭に浮かんだ。正直どういう状況なのか全く理解できない。
「きっと疲れてるんだよ、心配しないで。」私はそう言っておいた。
「そっか…。」綺羅は納得してなさそうだった。
「それより今日何日だっけ?」私はできるだけさりげなく聞いてみた。
「12月22日だよぉ。もうすぐ冬休みだねぇ。」綺羅は安心したそうで、いつも通りのほんわかした口調に戻った。
「もうクリスマスかぁ…。綺羅は予定あるの?」私は言った。
「いや、高校に入ってから2年たったけど、全然捕まえられないんだ…。」綺羅はひどく落ち込んでるようだ。
「都愛は?なにか予定ある?」
「私もないんだ…。そろそろ見つけないとヤバいね。」
「そうだよ。来年はほとんど遊べないんだから。」
「綺羅は好きな人とかいないの?」私は気になったので聞いた。
「うーん。」と綺羅は少し考えてから、「いないなぁ。」と答えた。
好きな人…かぁ。
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