バトル
異能の力と言えど同レベルの能力、又は同レベルの練度でぶつかり合いば、自然と消耗戦となる。この場合、雌雄を決する方法は二つ。最後の最後まで争い合って、それでも生き残ったヤツがいる陣営を勝者と見なす方法。そして、二つ目はタイマン。正々堂々と、強いヤツ同士の喧嘩で決着をつける方法。長髪はタイマンにおいて無類の強さを発揮するタイプで、かつ頭脳派と見る。
「フゥーッ……。これでは埒が明かないと思わないか?
「なんだぁ?もう限界かよ?ザコ
「そういう話ではない!私は!サシで
「はぁ?眼球にクソ詰めてモノ喋ってんじゃねーよ。ザコが……」と、小さく血反吐を吐き捨てる夏葉という男。
「イイゼ!お前の挑発に乗ってやるよ!!」
夏葉の言葉を皮切りにチンピラどもは一斉に戦い止め始める。大将同士の一騎打ち。それを皆待ち望んでいたようだ。
「フフッ……。そう来なくては!」
まもなく夏葉と冬木、両者相対す。勝敗は至ってシンプル。最後にその場で立っていた方が勝者!
「準備はいいか?」
「どっからでも来いや!」
「では遠慮な―く」
「く」と言った時にはもう右足で夏葉の側頭部を振り抜いていた。初手が素人みたいなハイキックとは驚きだ。なぜなら、まず高確率で当たらないわ、隙があるわで、メリットがあまりない。という事は絶対に当たる自信があったのだろう。
事実、まるでメジャーリーガーのフルスイングを彷彿とさせる右足を、まともに頭蓋に食らったなら、どんなにタフな奴でも脳は砕ける一撃。例え、ガードが間に合ったと言えど、強烈な一撃を受けた反動で怯みが生まれる。そこを連撃で埋めてやれば詰みだ。
ただ、例外があるとすれば……。
あるとすれば、あの夏葉という男が、最善の選択より最強の選択を取れる人間だった場合。つまり、あの不意打ちスレスレの俊敏な右足を、避けるでもガードでもなく、捕らえる事が出来れば、これほどのアドバンテージはない。
では、夏葉にはその選択ができたのか?
「……なんだ?初っぱなからコレ貰えんのか?なら、俺も遠慮はしねぇ!」
「オイオイ、マジかよ……」
なんと、冬木の右足を夏葉の左脇がしっかりホールドしていた!このまま押し倒しすのは確実として、馬乗りになりボコボコにするも良し、サッカーのフリーキックの如く腹めがけて蹴るも良し。まさに煮るなり焼くなり。
が、しかしそこは怪物夏葉。ただ押し倒すのではなく、
だが、俺は、タイマンしたらどっちが勝つのか考えた時、冬木が勝つと思った。さっきの右足もそうだが、どこに当てれば相手にとって最悪か冬木は分かっている。ただ、夏葉という人間があまりに規格外だったのを見切れなかったのが、そこで倒れている敗因なのだが。
まぁ、用はタダでやられる人間ではないと言いたい。
冬木が地面に接触する直前、人の急所の一つである喉めがけて左足を一発。ここに打撃を加えれば即座に呼吸困難を狙える。いや、狙うしかなかった。あの体勢で、あのタイミングで、確実に。
「オ"ェ"エエエ!」
喉を押さえながら、倒れ込む。必死に肺に空気を送り込むも、喉がそれを拒否するようにゲホゲホと咳き込む。
「どうやらここが漁夫のタイミングがかな~」
「……待って。あそこに、けいさつ」
またもリンに袖を引っ張られて、リンが指すあそこに視線をやる。すると、遠巻きにチンピラ達の喧騒を監視する二人の警官が。片や婦警おどおどした様子で「もう帰りましょう!」と諭す。片や新人警官謎に正義感が溢れるフレッシュさがある「先輩!ここは自分が~」と張り切る。あまり経験がないのか両者ともに「応援を呼ぶ」という選択肢がなかなか出て来ない。もしくは、呼べない事情があるのか。どちらにせよ、頼りないが……。
「……お、ひょっとして、なにかに使えるかもな。センキュー」
頭の片隅に二人の警官の存在を入れつつ、俺はコンビニを後にする。一抹の不安を抱きながら。
オレとキミで世界を壊したい。 津味 @loop_
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