力の時代②
「じゃあ、唐揚げのために命取られかけたのか?あぶねー」
「……ごめん、なさい」
コンビニの控室に置いていた椅子を調理場まで持ち寄って、俺とリンは仲良く唐揚げをつついていた。同じ釜の飯とやらの効果か、リンと俺との仲は少し和らいだ。距離は縮まらないが、これくらいが丁度良いのかもしれない。
「しっかし、唐揚げ何個食ったよ……。もう飽きちまったぜ」
「……わたしも」
「水が欲しい」
「……わたしも」
「米も食いてえ!」
「……わたしも」
沈黙。というよりは、無言の圧を感じる。だよなー。だって、手伝わせてくれって言ったの俺だしよ。「行け」というなら、そりゃ地の果てまで行きますよ。
「そんじゃ、お使い行ってくる」
「……わたしも」
「なんでさ!?」
「……ん?」と可愛く小首を傾げるリン。
「いや、可愛いけど。リンには俺に対して『何でも言う事を聞いて叶える』債券みたいなもんがあって、俺には『リンの言う事を聞いてそれを叶える』債務がある。そういう
「……うん、知ってる」
「だから、お前のために米と水が見つかるまで、東奔西走しなくちゃだ。分かってたなら、大人しく待ってな」と席を立った時、待ってくれと言わんばかりに、服の袖を掴んできた。
「……心配、してる」
「大丈夫だって、独り占めしねーよ。絶対」
「……それは心配じゃない」
そのままリンに袖を引っ張られるがまま、店の入り口付近まで来て、「見て」と外を指差す。
「なんだこれ」
指先にある光景は、チンピラの抗争に間違いないのだが、その画はまるでハリウッド映画のような人件費ゴリ押しの大量のチンピラ達と、西部劇の演出のような乾いた風が両陣営の間で凪いでいた。鉄パイプを担いだオールバックが「やんのかァ?ア"?」煽れば。「シメるぞボケが」とモヒカンが応戦。
互いを睨み合う一触即発の場面。
「とりあえず、かがんで……こっち来て」と、雑誌コーナーの棚に隠れるリン。「オーケー」と返事して、ササッと隠れる。
「ダルッ。どーすんべよ」
「とりあえず……。ここで、せいかん」
「了解」
『静観』ね。リンは子供だが、どこか子供ぽくない。賢いと捉えるか冷静と見るべきか。或いは観察や判断力に長けた能力者故なのかもしれない。観察系で言うと、例えば未来視の能力とか鷹の目。判断力なら第六感の拡張や直感とかか。だが、未来視や直感なら、さっきのような事にはならないはず。
……となると「それは心配じゃない」か。今の所、嘘を見抜く能力とかが一番怪しい訳だが。それでも20%位。出来れば、目の前の抗争に何かしらアクシデントが起きて、能力の一端が分かればってカンジだ。
「そろそろ、おっ始める頃合いか……」
色々とリンについて考える間に、事態はヒートアップ。オールバックが胸ぐらを掴んだのがきっかけで、異能力による前代未聞の抗争が火蓋を切る!
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