第16話 流行

 



 4月15日木曜日


 朝から松崎がイケメンスマイルを撒き散らして、個の強さを発揮している。優しくてイケメンで成績も良く、多少の強引さはあったとしても今も尚、根強いファンがいるみたいだ。話術も巧みで女子を騙す事に長けているしピアノも弾ける。完璧に近い男だ。電子ピアノで軽快かつダイナミックな音を奏でる。その周りには人だかりが出来ていた。クラスの男達が勝手に歌いだして失恋ソングに変身させる。器用だ。休み時間には資格の勉強をしていた。1人だからこそ時間に余裕ができ、出来る事の幅が広がる事を松崎のおかげで再認識する。




 高校生2年生は将来、どの様な職に就くかを考え始める時期だ。進学するか就職するのか…いったい何をしたいのか……今のうちに進路を定めていないと学校に送られて来る求人票をみて絶望することになる。事務職や工場の求人が殆どだからだ。お金の面での救いは建設業の求人だ。社員や作業員は経験をある程度積むと、独立して会社を建てるなり個人事業主になるなりするからだ。それなりに給料が貰えても労力にまったく合って無いのも理由の一つ。だが、安定を求めるなら建設業以外のサラリーマンが良さそう…公務員の方がクビになりにくいか……



今の世の中、正社員が生きづらくなってる気がするし世界中に広がりつつある致死性の高いウイルスのおかげで複数の国や都市が封鎖され始めていた。ニュースを見たのだろう、朝からピアノの音色と共にウイルスの話題で持ちきりだ。保健の授業で習った濃厚接触とニュースで流れている濃厚接触は内容が違っていた。目に見えないのも怖いけどゾンビ系の様に見て判るのも怖い。このウイルスは動物を媒体にして長い期間、生きてきたのに、何故人間が感染したのか?今まで感染者が出なかったのが不思議だ。




 担任が明日から一週間、休校になった事を告げた。この処置が更なる悲劇を生む事になるとは誰も思わなかった。日本にも感染者が出始めたのは、一隻の大型客船が始まりだとされている。


「ねぇ、聞いた?明日から休みだって!」


「必要の無い外出はするなよ?緊急を要する場合はマスク着用だ。」


 美優が休みになった事を喜んでいる。会社が休みになった社会人達もこの機会に子供達を連れて遊びに行くのだろうか?


「もう既にこの県にも感染者が出てる可能性が高いから休校にしたんじゃ無いか?」


「そうかも…潜伏期間も有るし…」


 美優は暗い表情をした。部活のグルに休校中の注意事項と部活停止を伝える。









 あれから一週間が経過したが感染者が増えるばかりで休校期間が延びた。総理も知事もこの事態を重く受け止めている事はテレビを見てればわかる。市民を安心させようとした人が国民全体から批判された事例が外国で起きていた。インフルの脅威は測り知れない。
















 

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