第15話 学生生活

 帰りのショートが終わり、教室を出ようとすると先生に着いて来いと言われる。会議室には既に先生方が集まっている。部屋の中は静かで心なしか、空気が張り詰める。


「昨日、松崎君にその、えっと…相棒を撮影され、クラスラインにぶち撒かれた件と松崎君が暴行被害にあった件についてですが……どう思いますか?」


「寝ている間に撮影されていたみたいなのでクラスラインに画像が上がっても誰のモノか分かりませんし、身に覚えがありません。自分だと思った人がやり返したのでは無いでしょうか?

昼休み後ですよ?自分の写真だと気付いたのは。だから無理です。」


「貴方以外だと思い付かないわ?」


「学校内の先生方とお話しをして解決するんでしょうか?」


「問題は無くなる。」


 ふざけてやがやる。事件が発生してるのに先生達だけで法律に乗っ取って解決出来る訳ない。だから再発防止にも繋がらないし、先生に相談しても無駄だと思われ事件自体に気付かないのだ。


「気付いていますか?警察沙汰になるべき事件が発生してる事に。教育委員会に報告したり、保護者説明会は行われるのですか?」


「教育委員会への報告は済ませた。保護者達は多忙な方が多いから当事者達の親を呼び出す。」


「俺たち被害者にメリットはあるんですか?何故直ぐに警察や保護者を呼ばないのですか?グダグダ話しても意味ないです。」


「問題を起こした奴は退学だ。」


「自主退学に追い込むんですよね?退学処分は廃止の筈です。」


「今の被害者は松崎だ。」


「そうですか、ですが俺達が受けた被害と松崎がボコられた事件は別物です。俺はこれにて失礼します。」


「まぁ、待て。」


 俺達の学年主任の声が俺を引き止める。先生は腕を組んだまま、重そうで意外と元気な口を開く。


「松崎をどう思う?」


 学年主任の目はグラサン越しに細められた気がした。どう思うか?いや、普通に…


「犯罪者」


「フハハハ!確かに!」


 学年主任が笑い出すと他の先生達も笑った。そっとドアを開けて、その場を後にする。


 



 まだまだ面倒くさい事が続きそうだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る